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二十五話

三人称視点と言うことで短めです

 リンドウたちが結界を通り抜けたころ、時を同じくしてアイテリオール教国首都アイリアルにある大聖堂には警報が鳴り響いていた。

 教皇の書斎に一人の騎士が駆け込んできた。


「失礼いたします! 猊下、魔に属する何者かの侵入を検知しました」

「……ええ。警報ならここまで届いていますよ。検知された場所は?」

「はっ! ウィルフィールド王国側の検問所にて検知! 聖域結界による消滅は確認できず、おそらくは――」

「――入られましたね。ウィルフィールド側の地域に騎士を派遣及び魔のモノの捜索にあたってください。勇者様方は私の部屋へ」

「はっ!」


 騎士は教皇に敬礼し部屋を出ていく。

 手にしていた羽ペンを置き、立ち上がった教皇は窓際へと近寄る。


「……聖域結界内への侵入ですか。魔王の配下……? いえ、魔族は近寄らないでしょうし……。まさか――」


 口元に手をやり考え込んでいた教皇。

 その思考は部屋の扉がノックされたことにより遮られる。


「どうぞ」


 ノックに対して教皇は返事をする。

 教皇の返事の後、少しして扉が開かれた。

 部屋へと入ってきたのは先ほどの騎士一人と、その後ろをついて来た四人の日本人。


「勇者様方をお連れしました」

「ありがとうございます」

「はっ! では、私は失礼いたします」


 騎士は敬礼し部屋を後にした。

 残されたのは四人の日本人――勇者と教皇のみ。


「そちらにおかけください」


 微笑みを浮かべ、勇者たちを備え付けてあるソファーへと促す。


「失礼します」


 勇者たちは緊張しつつもソファーへと腰かけた。

 教皇もその対面に座る。

 そのタイミングと同時に再び扉がノックされ、教皇の返事の後女性騎士が一礼してワゴンを押しながら入ってきた。

 ワゴンに乗せられているのはティーカップとティーポット。

 女性騎士はカップにお茶を注ぎ、五人の前へと置いていく。

 置き終わった女性騎士は一礼して部屋を出て行った。

 女性騎士が出て行ったあと、教皇はティーカップを手にして一口飲みカップを置く。


「……勇者様方にお越しいただいたのは先ほどの警報の件についてです」

「さっき鳴っていたものですか?」

「うるさかったよねー」

「な。あの警報が鳴った瞬間訓練付けてくれてた騎士さん達一気に雰囲気変わってビビったぜ」

「こら! 教皇様の前だよ! すみません!」


 教皇の言葉を聞いて各々喋り出す勇者たち。

 最後に謝る勇者に微笑みを浮かべた教皇は話を続ける。


「謝らなくても大丈夫ですよ。話を続けますね?」

「はい!」

「……以前このアイテリオール教国には結界が張られていることを説明しましたね? 先ほどの警報はその結界の効果です」

「……効果、ですか?」


 教皇の説明にリーダーであろう勇者が聞き返す。


「ええ。結界――正式名称は聖域結界と言うのですが、その効果は魔のモノを領域への立ち入りを禁じ、入ろうとした魔のモノを消滅させます」


 聖域結界。

 魔に属するモノの侵入を防ぐために初代教皇が作り出した結界魔法である。

 効果は入ろうとした魔のモノを消滅させる単純な物だが、その効果は絶大であり、元々は領域内にも魔物が存在していたが、聖域結界が張られたあとその全ての魔物が消滅したほどである。

 魔に属するとなると魔法使いなども該当するのだが、その辺りの区別の定義は初代教皇しか知らない。


「では、警報は?」

「……入ろうとした魔のモノが消滅しなかった場合に領域の主へと伝えるものです」

「え、では――」

「ええ。消滅しなかった――聖域ないに入られてしまった。と言うことです」


 教皇の言葉に勇者たちは驚愕し、言葉も出ない。


「アイテリオールの聖域に侵入出来るほどの何か。少なくとも魔王の配下……それも幹部相当の力がある者が今領域内にいます。狙いはおそらく――」

「――僕たち……ですかね」

「ええ、おそらくですけどね」


 勇者たちは狙いが自分たちかもしれないと聞き、顔を引き締めた。


「なら、被害が出る前に僕たちが――」

「いえ、それには及びません。現在、騎士たちに捜索させております。見つけ次第浄化するように伝えておりますので、勇者様方はもしもの時の為に訓練を続けていただきます」

「……わかりました」

「状況が状況ですので、訓練が少々厳しくなるでしょうが、頑張って下さいね」

「「「「はい!」」」」


 その後しばらく談笑を続けた五人。

 訓練の時間となり、勇者たちは教皇の部屋を後にした。

 一人となった教皇は、勇者たちと入れ替わりで入ってきた女性騎士の持ってきたティーポッドからお茶を注ぎ、口にカップを持って一口口にする。


「魔王の配下なら、いいのですけどね」

「……猊下?」

「いえ、こちらの話です。いつもながらあなたの淹れる紅茶は美味しいですね」

「き、恐縮です!」


 褒められた女性騎士は、いきなりのことに背筋を伸ばしてしまった。

 そんな彼女に微笑みを浮かべたあと、手に持ったカップに入っている紅茶に視線を移す。


(――悪魔……。いえ、彼らは主に殲滅されたはず……)


 カチャリとカップを置き、窓の外へと視線を向ける教皇。


「……嫌な、予感がしますね」





 

あけましておめでとうございました。

今年もゆるりと更新しますのでよろしくお願いします。

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