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二十四話

 壊滅したエンデを後にして一度ルンドブルムに戻った。

 門を変えて入って宿を取った後、道具屋で近隣国の地図を買う。

 ギルドでゆっくり食事をしながら地図を確認。

 隣国は山向こうのジャーニアス帝国。王国の西、アイテリオール教国。

 まずはこの二国に行くとしよう。

 王国を出てどれくらいの時間が経ったのかはわからないが、このどちらかの国に何人かいるだろう。


「げ、教国行くのか?」


 どちらを先に行こうか迷っていると、戻って来たベルゼが椅子に座りながら不機嫌そうに問いかけてきた。


「光属性の強化とかで勇者が行ってそうだからな。行くことにはなるな」

「おすすめしないぜ? オレら悪魔やそれに連なる奴らにとってあの国のすべてが毒でしかない」

「へぇ。でも、最後には神下ろしするんだろ? 先に信徒どもを蹴散らしてもいいじゃないか?」

「ほぉ? なるほどなぁ。ま、そもそも入れるかすら怪しいところだがな」

「どういうことだ?」

「どうせ行くんだろ? なら行きゃあわかる。お、この酒うめぇな」


 ぐびぐびと俺の頼んだ酒を飲むベルゼから視線を外して地図に移す。

 行けばわかるね。

 言い方が気になるし、最初は教国の方に行くとしよう。

 地図を片付けて飯をたいらげる。

 金を置いてギルドを出たあとレンドブルムへ向けて街を出た。

 アイテリオール教国に行くならば、レンドブルム方面から向かう。

 地図を見た限り、アイテリオール教国の首都とレンドブルムは、馬車で移動して約二十日。

 寝ずに飛べば十日くらいか?

 途中いくつかの街を経由するのを考えれば二週間前後。


「なあベルゼ。お前の言い方からするに楽に入れないのはわかるが、それは教国の首都か? それとも領土にもか?」


 飛びながら、黒い絨毯状にした闇の上で寝転がっているベルゼへと聞く。


「どちらにもってのが正解かね。領土に入るのにも、首都に入るにも。だ」

「そうかい」


 入る手間を考えるならば二週間以上になるな。

 王国と教国の国境近くにある王国領最西端の街に立ち寄るとしよう。

 さて、しばらくは空の旅を満喫だな。


「飯」

「今はこれしかねぇぞ」

「足だ!」


 おやつでとっておいた誰かしらの足を投げ渡しておく。



   ***



 二、三日飛び続けて目的の街へと辿り着いた。

 国境付近と言うこともあり、人の往来が多い。

 そして少しばかりの嫌悪感。

 なんだろう。国境に近づけば近づくほど変に落ち着かない。内に宿る悪魔の力が拒否反応を起こしているようなそんな感じ。


「あー、あー、あー。気分悪いぜ」


 隣を歩くベルゼも不機嫌顔で後頭部を掻いている。

 彼もまた俺と同じように嫌悪感を感じているのだろう。


「食いに行くか?」

「……ああ。しばらく食えなくなりそうだからな。ここで食いだめしておくさ」


 不機嫌な顔はそのまま、手をひらひらと揺らして去って行った。

 俺はいつも通りギルドで聞き耳を立てるとしよう。

 さっそくギルドへ向かい食事を開始。

 今日のご飯は魚の塩焼きだ。シンプルだからこそ美味い。

 さて、聞き耳を立ているが、特に面白い情報はない。ほとんどの話題がエンデの壊滅とそこにいた勇者が消息不明なこと。それからエンデを襲った魔族や魔物が音もなく消え去っていること。どうやら、エンデのギルドが外壁を越えられた時点で隣町へと応援要請していたらしく、遅れて到着した冒険者や兵士たちからの情報らしい。

 ギルド、国からの見解は勇者が魔族に捉えられたということになっている。

 今回は余さず全部食ったから死んだ証拠すら残っていない。おやつで攻め込んできていた魔物も一掃しているため、だいぶ不審がられているようだ。

 王国側は魔族側の動きを経過しつつ、勇者の死、消息不明ともに調査をし始めるようで、ギルドの方へも手伝いの要請が来ているらしい。噂程度だが、すでに高ランク冒険者パーティーのうち、数パーティーが動かされているみたいだ。


「さて、と。なあ兄さん達。ちょいと聞きたいことがあるんだが……」


 席を立ち、隣の席で飲んでいる冒険者たちに声をかける。


「ああ?」


 知り合いでもない俺に話しかけられ不機嫌そうな声で睨んでくる。


「あはは。そんな凄まないでくれよ。すんません! エール三つ!」

「けっ! んで? 何が聞きたいんだ?」


 酒を頼むとつまらなさそうに受け答えしてくれた。

 と同時に酒も届いた。


「聞きたいことは一つだけ。アイテリオール教国へ入るのに気を付けるべきこととかあるか?」

「面白いことを聞くもんだな。気を付けるべきなのは神を冒涜しないことだ」

「一番はそれだよな。やっぱり」

「奴ら信徒は神への冒涜するような発言をするだけでタコ殴りにされた奴もいたな」

「うわ、マジか」


 狂信者って奴かな?


「ほぼ全員過激派だと思って行動した方がいいぜ?」

「なるほど。ありがとう。これで追加でも頼んでくれ」

「ひゅー! わかってるねぇ!」


 そこまでの情報ではなかったが、神とは真逆の位置にいる俺らの存在が中で知られたら狙われそうだな。いっそ国ごと食らうのもありか? 状況次第ではその手で行こう。

 ベルゼ的にはアイテリオール教国の人間を食う気はなさそうだから、国ごととなると俺だけで食うことになりそうだ。腹はち切れるんじゃないか?

 まあ、その時はその時だ。

 俺も少しだけでも腹に入れておくとしよう。



 翌日。

 取っていた宿をあとにして街を出た。

 王国ともしばらくおさらばだ。

 街を出て道なりに進んでいき、国境の検問所にたどり着いた。

 近づこうとしたが、ちょっとした違和感を感じて立ち止まる。


「なんだあれ?」


 国境に沿うように見えない壁のような物があるのを感じる。

 肉眼では見えていないが、確かにそこにある。そして、その壁から感じるのは言いようのない気持ち悪さ。

 あの壁を通ったらどうなるかわからない。死にはしないだろうが、嫌なものを感じるのは確かだ。


「……入れるかどうかすらわからないって言ったのはあれがあるからだ。アイテリオール教国はその国の領土全てが聖域になってる。オレらみたいな魔は弾かれるか、入ったら教皇に知らせが行く」

「なるほど」

「どうすんだ?」

「とりあえず行ってみてから考える」

「……」


 嫌そうな顔をするベルゼから視線を外して検問所に向かった。

 検問所では国に入る理由や、身分証明の確認が行われ、特に問題なければ国へと入ることが出来る。

 検問を抜けて見えない壁を通り抜ける。

 通り抜けるとき悪寒が身体中を駆け抜け、胃液が上ってきた。


「っ……」


 どうにか吐くのを耐えて、何もなかったかのように装って検問所から離れる。

 近場の木陰に入り込み、木の裏で耐えた胃液を吐き出した。

 体調がすこぶる悪いが、全て吐き出したところで漸く落ち着いてきた。

 ついて来ていないベルゼを探すと、国境の壁の前に立っており恐る恐る壁に触れようとしていた。

 悪魔でも怖がるものがあるのだな。

 あれだけ神を殺してやるとか言ってたのに。


 ベルゼが壁に触れた。

 次の瞬間壁がバチバチと電気のようなものを発し、光がほとばしる。

 そんな異変に検問所にいた兵士たちが警戒し始める。

 光が収まったころにはすでにベルゼはそこにおらず、壁も依然としてそこに存在していた。

 兵士たちは周辺を見回り始める。


「……うげぇ――」


 そんな嘔吐する音が傍で聞こえ、音の方向を見るとベルゼが膝をついて吐いていた。

 通れたのか。


「だいぶきつそうだな」

「……きついなんてもんじゃねぇ。地獄だわこんなん」


 口元を拭いながら立ち上がるベルゼ。


「でもよく通れたな」

「……ああ? オレは最強の悪魔だぞ? 通るくらいは出来るに決まってんだろ。体調はすこぶる悪ぃがな」


 そう言った後また吐き出した。

 落ち着くまでは少しかかりそうだ。

 木を背に座り込み、ベルゼの嘔吐の音をBGM代わりにしてリンゴを食う。


ベルゼもたまには吐きます。

お読みいただきありがとうございます。

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