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二十三話

 さて、魔族側の結構日時となった。

 エンデ側も魔物が集められている情報は得ているらしく、防壁門の外には冒険者や兵士たちが集まっていた。

 冒険者たちの表情は皆どこか不安げな表情だ。

 まあ、仕方がない。高ランク冒険者には手を出さなかったが、中堅冒険者で魔力総量が多い者たちは俺とベルゼが食い荒らしたのだ。

 冒険者たちの戦力はかなり削られてしまっている。

 それも魔族の仕業とされており、内側からの攻撃も視野に入れているのか、対応できるように冒険者と兵士の二割位が街中の警戒となっている。

 つまり、予想よりも外での戦力が減ってしまっているわけだ。それをわかっているからこその不安。

 元凶である俺は櫓の屋根の上に座って傍観だ。


「クハハ! 始まるぞリンドウ」

「ああ。やっぱ数が数だから地鳴りが凄いな」

「あれだけの数が一斉に動き出したらそりゃあなぁ」


 森の中から轟く地響き。

 その大きさに防衛側の緊張感が増す。


「来たぞおおおおおッ!!」


 斥候を行っていた冒険者が森から来て叫ぶ。

 斥候の冒険者が森から飛び出してから少しして、森からゴブリンを先頭に魔物たちが飛び出してきた。


「弓術士隊! 魔法部隊! 放てええええええッ!!」


 指揮者の号令により、一斉に放たれる弓と魔法。

 中堅は削ったが、まだ高ランク達が残っていたため高火力魔法によって前線のゴブリンたちが葬られていく。


「次ッ! 投石隊放てえええええッ!!」


 続いて投石隊が投石機に乗せた樽を放つ。

 樽は魔物たちの所に落下すると壊れ、中から液体をまき散らした。


「火矢ッ!!」


 放たれる火矢が液体の散った場所に刺さり一気に炎上する。

 樽に入っていたのは油か。

 だが、甘い。魔物たちは火に巻き込まれた奴らを乗り越えて突撃をやめない。

 エンデ側もそれはわかっていたのか。

 詠唱を終わらせた魔法使い達が次弾を放った。

 これにより、前線にいたゴブリンとオークたちの半数は減らされた。


「高ランクにも手を出しておくべきだったか」

「いや、どうだろうな。魔法使いどもは高火力魔法を使ったからしばらくは使いもんにならんだろう。ここからは近接職たちが出張るから混戦になっちまうからな。ポーションで魔力を回復させたところで混戦状態の中に援護なんか出来ないだろうよ」


 出来るならそいつは相当な腕があるな。


「お。オーガとサイクロプスが来たな」


 図体のデカい二種は侵攻の邪魔になっているゴブリンやオークどもを弾き飛ばしながら混戦の中に駆け込んでいく。

 さすがに下位ランクでは手に負えない魔物なため、その二種は高ランクと連携のとれた兵士が相手をするようだ。

 そして勇者たち。

 さすがは勇者と言うべきだろうか?

 襲い来る魔物をほぼ一撃で葬っていく。それがオーガやサイクロプスだろうと変わらない。

 面白いのは魔法職、支援職である静川と鮎川も一緒に行動しているところだ。

 まあ、彼らはパーティーとして完成しているからあの四人での行動を許されているのだろう。

 鮎川は前衛の二人にバフかけをして、赤島がヘイト管理、釣られた魔物の処理を三浜がやり、静川は二人のカバーをしている。

 連携のとり方が上手いな。


「うーん。ちょっと押され気味?」

「ああ。やっぱり高ランクを削らなかったのはミスだな」

「あー」


 ベヒモスが出てきてもどうせ勇者に狩られるだろうしなぁ。


「ちょっと手を加えるか」


 親指と中指を合わせ、鳴らす。

 すると、エンデ側の人間たちを貫くように出現した無数の土の槍やトゲ。


「あはは! 戦況が一変したな」

「ククク。ひでぇことしやがる。悪魔かよ」

「悪魔に悪魔って言われるとはなぁ」

「誉め言葉だぜ」


 絶妙にうれしくない誉め言葉だ。

 さて、戦況がひっくり返り、混乱しているエンデ側へ更に絶望が姿を現す。


「Guooooooooooooooッ!!」


 もちろんベヒモスたちである。

 障害を弾き飛ばしながら突き進んできたベヒモスに対して勇者と高ランク冒険者たちが動き出す。

 狙いが大きいため、魔法部隊も援護射撃を始める。

 だが、ベヒモスの数は目視できるだけでも五体。

 高ランク冒険者と勇者で対処できているのは三体なため、残りの二体は止めることは出来ず、防壁へと体当たりをされてしまう。


「おっと」


 衝撃で防壁の上にある櫓に強い揺れが来た。

 お、勇者が一体目のベヒモスを殺したみたいだ。防壁を削るベヒモスの方へと駆けてきた。


「クハハ! おい、見ろよリンドウ! 共食いしてるぜ?」

「おお! 本当だ!」


 完全に観客と化してる俺らの視線は戦場の後方。

 無数に倒れてる魔物を食い荒らす他の魔物たち。倒されたベヒモスにも群がっている。

 共食いした魔物たちは雄叫びを上げると内包魔力量が跳ね上がったのを感じた。


「強化されたのか」

「魔物は食った魔石の分だけ強化されるからな。ベヒモスの方見てみろよ。サイクロプスとオーガが抜き出した魔石に齧りついてるぜ?」

「あはは! すっげぇな! なんか別の魔物に進化したんじゃないかあれ?」

「ありゃロードになったな」

「もう対処できないだろこれ」

「ベヒモスが対処しきる前にあんなのが生まれたらな絶望物だな」


 今やっと防壁にいるベヒモスの二匹目が倒されたところだ。ここから五、六匹いるロード達を対処できるかな?

 すでにベヒモスたちが壊していた防壁からかなり離れた場所を崩しにかかっているロード達。

 急いでそちらに向かう勇者と高ランク冒険者たち。

 間に合った。間に合ったが、五、六匹いるロード達の攻撃により防壁が崩されてしまった。

 勇者や高ランク冒険者たちは二匹のロードに足止めされる。

 その間に空いた防壁からロードを筆頭に街へと魔物がなだれ込でいった。

 街の中から破壊音が響き、悲鳴もあがり始める。


「お、まだベヒモスいたのか」


 森の方から追いベヒモス。

 二匹のベヒモスが防壁を崩し始めるもエンデ側は手が回らず、あっさりと防壁は崩された。


「お? 魔族たちも街に入ったな」


 街に入った魔物もかなりの数だろう。

 街の人たちは蹂躙され始めてるし、外のは片付けてしまっていいな。


「ベルゼ。小腹空いてないか?」

「オレが空いてないわけないだろ?」

「あはは。ならちょっと食いに行こうぜ」

「おう!」


 俺たちは櫓から飛び降りておやつを食べることにした。

 腕を不定形にして膨張させて、まだ大量にいる魔物たちを飲み込んでいく。

 体積変動のおかげでまとめ食いも出来るようになって便利だわ。

 冒険者や兵士もまとめて食っていく。

 食い終わるころには目撃者はいなくなるだろう。

 ベルゼのほうを見ると身体から黒い靄をだし、その黒い靄を操って魔物や人間を食い殺している。

 靄が生物に覆いかぶさったと思ったら食いちぎられたように鮮血を噴き出していた。

 あの靄は俺の使うスライムのような物のようだ。


「おいベルゼ! もっと綺麗に食えねぇのかよ?」

「ああ? テメェは綺麗に食いすぎなんだよ」


 食い終わったころ、俺の食い場は血すら残っておらず、ベルゼの食い場は血の池が出来ていた。

 いくら何でも食い方汚すぎないか?


「まあいいや。次は中だな」

「デカいの食わせろ」

「やるよ」


 俺が頷いたのを確認したベルゼは「クハハ!」と笑いを残して消えていった。


「さて」


 俺は魔族たちが向かった勇者の方に行こう。

 歩きながら街中で暴れる魔物どもを食いながら歩いていく。

 戦闘音に近づいてきた。

 音の方向へ向かうと勇者パーティーと魔族が戦っていた。

 魔族側はガタイの良い男のみが戦っており、子供っぽい魔族と女の魔族は退屈そうにその光景を見ている。


「なんかダラダラ戦ってるの見てると退屈なんだけど。おいで」

「あら、もう呼んじゃうのね」

「もうしばらく遊びたかったが仕方がない」


 子供の魔族が魔力を練り上げ始めると男の魔族は赤島と三浜を弾いて後退する。


「させないよ!!」


 静川は、子供の魔族が魔力を練り上げたのを見てすぐに魔法を放つ。

 放たれた魔法は炎を纏った石礫。


「あら、その言葉はこちらのものよ?」


 女の魔族は闇の魔法を使って石礫を相殺する。


「さあ、来い来い! 僕の眷属よ!」


 その間にも練り上げられていた魔力は上空へと流れ、空に巨大な魔法陣が形成された。

 形成された魔法陣から鱗で覆われた腕が突き出てくる。

 腕は魔法陣の縁に手をかけると力を入れて身体を引き出してきた。

 腕の次に出てきたのは頭。

 召喚されたのはドラゴンのようだ。

 ドラゴンは全身を引き出すとその巨大な身体よりも大きい翼を広げ滞空すると、吠えたけた。

 その咆哮は空気を震わせ、周りの建物を振動で崩壊させる。


「ドラゴン!?」

「この状況でか!?」

「召喚されたんだ! このままだと街が滅茶苦茶になっちゃうよ!」

「そんなことより逃げるのよ!」


 赤島たちは騒ぎ立てると、逃げようとする。


「アハハ! 逃がすわけないじゃないの!」


 逃げ道を塞ぐように鞭で地面を叩く女魔族。


「ちっ! やるしかないかッ」


 道を塞いだ女魔族の後ろにドラゴンが降りてくる。

 この前見たレッドドラゴンなんかよりも巨大で威圧感が凄い。

 体色は黒。光沢のある鱗は燃える建物の炎により揺らめいて見える。


「さあ、勇者を殺しちゃって!」


 子供の魔族の言葉に対して答えるよう一鳴きすると、口内に黒い炎を溜め込み始めた。

 ブレス。

 静川が慌てて魔法を放つもドラゴンには傷一つつかない。

 チャージが終わったドラゴンはブレスを放った。

 さすがにこのまま勇者を殺させるわけにはいかないため、吐かれた黒炎の球を膨張させたスライムで飲み込む。


「なにッ!?」


 誰の言葉だろうか?

 まあいい。

 ドラゴンの影に入り込み、肘から下をスライム化して下から包み込む。

 噴き出すようにして影から出たスライムはあっという間にドラゴン全体を覆うと溶かすように吸収を始める。

 味はわからないが、身体の内にドラゴンの力が流れ込んでくるのを感じた。

 ドラゴンを消化し終わり、影が消えてしまい地上に浮き出る俺を見て驚く七人。


「り、リンドウ……?」


 赤島が戸惑いながらも俺の名を呼ぶ。


「よぉ赤島。元気して――」


 俺が赤島たちに挨拶しようとしたら俺に向けて炎の塊が迫ってきた。

 腕に魔力を纏わせて炎を上方に弾く。


「お前……お前ぇ……ッ!! 僕の眷属をよくもッ!! よ――」

「うるさい」


 足裏からスライムを放出して自分の影を経由し、子供魔族の影から襲わせる。

 消化する力を強めにしたため、絡みついた足は瞬時に溶かされる。


「ぎいいいいッ!? 僕の足ぃぃぃぃぃッ!!」

「だからうるせぇ」


 体積変動で一気に膨張させて子供魔族を飲み込む。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ”………」


 溶かされる痛みに叫び声を上げるも、それはすぐに聞こえなくなる。


「さて、次は――」

「うおおおおッ!!」


 次の魔族を殺そうとしたが、向こうから突っ込んできてくれた。

 男の魔族は大斧を振り下ろしてくる。

 腕を硬質化してその一撃を防ぎ、地属性魔法で土槍を魔族の腹に食らわせる。

 だが、魔法は腹を貫くことが出来なかった。


「私の身体強化の前では物理攻撃は無駄だ」

「そうかい」


 硬質化した腕を瞬時にスライム化して斧を食う。


「ぬッ!?」


 支えになっていた斧が溶けたことにより魔族はバランスを崩す。

 次にするのは左の手を狼に変えて首筋に噛みつく。


「あがッ!?」


 硬化した歯ならばいくら強化した身体とは言え歯が通る。

 肉を食いちぎり咀嚼。魔力が濃くて美味い。

 食いちぎられた所を左腕でおさえて後退した。それに続くように前に出て狼にした左手で頭を咥え込んで噛み切る。

 骨ごとかみ砕くため、口の中でゴリゴリと音が響く。

 倒れた魔族を一瞥した後、女魔族に視線を向ける。


「ひっ!?」


 視線を向けられると、怯えたような声を漏らし一歩後ずさっった。

 一歩近づくと彼女は背から翼を出し、飛んで逃げようとする。


「逃がさんて」


 地属性魔法を使い、槍を射出して翼を射抜く。


「きゃあッ!?」


 翼を損傷してバランスを崩した女魔族は墜落してきた。

 瞬時に墜落場所まで移動して右腕を上に向ける。

 腕をさっき食ったドラゴンに変えて口を開け、女魔族を口内に捉えて咀嚼。

 ガリガリゴリゴリと音を響かせて咀嚼して飲み込む。

 やはり、普通の魔物や冒険者なんかを食うよりも魔力が濃い。魔族は種族的に保有魔力量が多いのかもしれないな。

 今度魔族領にでも外食しに行ってもいいかもしれない。


「さぁて」


 手を元に戻して振り返る。


「改めて、久しぶりだな。元気してたか?」

「竜胆……竜胆なのか?」

「ああ。竜胆だぜ? まあ何はともあれ、無事でよかったぜ」


 俺の言葉に安堵したような表情をする赤島たち。


「なに安堵してんだよ?」

「え?」

「お前らを殺すのは俺だ。他の奴に殺らせるわけないだろ」


 そう言うと彼らは一瞬呆けた後、こちらを睨んで構える。


「あ、あたしは逃げるからねッ!!」


 ただ一人、鮎川は俺が魔族を殺すほどの力があることを恐れて逃げて行った。


「薄情な女だな。ベルゼ。捕まえといてもらえるか?」


 呟くように言うと、ベルゼが俺の横に現れる。


「食ってもいいか?」

「駄目だ。聞くことがある」

「……あいよ」


 滅茶苦茶不服そうな顔をして彼は消える。


「な、なんだよ今の!?」

「顔がハエだったよね!?」


 三浜と静川がベルゼを見て驚いている。

 姿を隠していなかったのか。


「……なんで俺らを殺そうとするんだ? 竜胆」


 そんな中、困惑した表情をしながら赤島が問いかけてくる。


「あの時言っただろう。殺してやるって」


 勇者に会うたびこうも同じ問いをされるとうんざりしてくるな。


「はあ? 生きてたんだからいいじゃねぇかよッ!!」

「そうだよ!」


 俺の気持ちも知らずに喚く三浜と静川。


「勝手なことを言うねぇ。だが、そうだな。生きててよかったよ。お前らを殺すチャンスができたんだからな」


 強化されすぎているステータスで静川に近づき首を掴む。


「ぐぅっ! 離せよ!」

「静川。お前で十三人目だ」

「あぎッ!? ぎいぃぃぃッ!」


 首を締めあげて握りつぶす。

 肉が潰れる感触が手のひらから伝わってきた。

 生暖かい血液が顔に飛び、腕を伝って肘から垂れていく。


「テンメぇええええッ!!」


 静川を横に放り捨てて、斬りかかってくる三浜を硬化した左腕で受け止めて右足で横っ腹を蹴る。


「うぐッ!?」


 もろに蹴りを受けて吹き飛んだ赤島はがれきへとぶつかる。


「っつぅ……」

「三浜上っ!!」

「あ? うわあああああああッ」


 ぶつかった衝撃でボロボロになってい建物が崩れ三浜はそれの下敷きになってしまった。

 瓦礫を退けるのがめんどくさそうだ。


「なんでだよ。なんでそんな簡単に友達を殺せるんだ!」

「お前らがやったことと変わらないだろうがよ。俺が生贄にされそうになった時お前は止めてくれたか? 俺の記憶では笑ってた気がするが?」

「それは……」

「反論できないか。そりゃそうだよなぁ? 実際に笑っていた。止めてくれたのは神城だけ。泣いてくれたのは日向だけだ。他人の死を軽んじ、笑っていたお前らに文句言われる筋合いはねぇ」


 俺の言葉に狼狽え、構えを解いた赤島。

 何とも言えない表情をしている彼へと近づく。


「死ね」


 動かない赤島から心臓を抉ろうとしたが、その手を剣で斬り落とされてしまう。


「……確かに。俺らに文句を言う筋合いはない。が、ここで死ぬわけにはいかないんだ」


 俯いていた顔を上げ、こちらを睨んでくる赤島。


「そうかい」

「腕を斬ったのは許してくれ。だが、どうか見逃して――」


 赤島は最後まで言葉を紡ぐことが出来なかった。

 目を見開いて驚き、自分の身体を見下ろす。

 彼の胸から突き出す一本の土のトゲ。


「見逃すわけないだろうが。おとなしく死んどけ」


 見開かれた目からは精気が抜け、力を失いだらりと首が垂れ下がった。


「あーあーあー。心臓まで潰しちまってどうすんだよ」

「おかえり」

「おう。ほら捕まえてきたぞ」

「きゃっ!」


 ベルゼは掴んでいた鮎川を俺の前へと放り投げてきた。


「こ、殺さないで! あたしが出来ることなら何だってするから! 見逃してくれるならヤラせてあげてもいいよ?」


 必死な顔で言い、誘惑するように胸元を見せて来る鮎川。

 スタイルがいい鮎川の谷間が服から見えた。


「なんだってするか。ならちょうどいい。他の勇者の居場所を教えろ」

「え、えと、王国領内にいる子たちは――」


 彼女は今王国にいる勇者の名前を上げてくれた。

 名前を聞いた限り、全員殺した名前だ。


「他は?」

「た、多分別の国にいると思う。あ、あたしが知ってるのはこれくらい」

「そうか。教えてくれてありがとう」

「じゃ、じゃあ……!」

「だが、それとこれとは別だ」


 右腕を剣に変えて彼女に近寄る。


「や、やめ……!? ヤラせてあげるからぁ! お願い! あなたのためなら何でも――」

「ああ。お前はいい身体をしてるよ。でも性欲よりも殺意の方が優先なんだよ」


 首が落ちてしまい返事はない。

 まあ、最近は殺意と同じくらい食欲も優先されてきてるがな。


「にしても別の国か。帝国にでも行ってみるか」


 隣だし。


「おいリンドウ! いつまでも突っ立てないで食おうぜ!」

「……おう」


 とちあえず食ってから考えよう。

 鮎川の心臓を抉り出して口に放る。

 ああ。支援系の魔法が得意だから光属性かと思ったら水と風だったか。

 咀嚼しながら歩き、瓦礫の下敷きになってしまった三浜を掘り出して鮎川の死体がある方に放り投げる。同じように赤島と静川も放って山にした後、ベルゼと共に食事を始める。

 少し前に三人食ったが、いつ食っても勇者は美味い。



お読みいただきありがとうございます。

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