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一話

 俺が案内された部屋は、物置として使われていたような埃だらけの部屋。


「悪いな。なんの力も持たないお前に客室を使わせるわけにはいかないんだ」


 ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべていう兵士。

 俺を中に押し込むと、彼はドアを乱暴に閉めて行った。


「・・・ステータスごときでこの扱いか」


 ステータス至上主義なんだろうな。

 勇者として呼ばれたのだからステータスも高くないといけないってか?


「クソだな」


 とにかく掃除をしよう。

 しばらくして、掃除が一段落着いたところで部屋の扉がノックされた。


「はーい」


 返事をするが反応はない。

 確認するために扉を開けると、そこにはパンとスープが置いてあった。


「硬いパンにほんの少し具の入ったスープか」


 なんかこういう状況の話読んだことあるな。

 部屋に戻り、掃除の終わったベットに腰掛けて食べ始める。

 こうも扱いがひどいと逆に笑えて来るな。


 この日はパンを食べたあとすぐに寝た。




 翌日、あの嫌味な兵士にたたき起こされ、訓練場へと向かった。

 他の奴らは俺と違って元気いっぱいのようだ。

 おそらくいい部屋でいい食事をもらっていたのだろうな。


「今日から君たちには訓練を行ってもらう。各々のステータスを参考にした戦闘スタイルを覚えてもらう。では、名前を呼ばれた者からグループを作っていく」


 偉そうな兵士がグループ分けをしていくが、その中に俺は含まれていなかった。


「あの、俺は」

「君は・・・ああ、リンドウ君か。君は自由にしていてくれて構わない」

「へ?」


 予想外の言葉に間抜けな声が出た。


「能力が低すぎて戦闘相手が見繕えなかったのだ。ではな」

「いや、え?」


 そう言い残して彼は神城のところへ向かった。

 今の会話を聞いていたのか、クラスメイト達は小さく笑っていた。


 俺は仕方なく、用意された木剣を手にして素振りをすることにした。

 相手がいないのだからしょうがない。


「訓練終了だ。武器を片付けたら一時間の休憩だ。その間に飯を食ってこい」


 午前の訓練が終わり、木剣を片していると、他の生徒たちも片づけに来た。いな、放り投げてきた。片付けろと言わんばかりに。

 日向が手伝うと言ってくれたが、他の女子生徒に連れていかれてしまった。

 最後に来たのは倉持と神城。

 二人とも厳しい訓練だったのか、とても疲れているように見える。


「手伝うよ。竜胆君」

「よせよ光希。俺たちがへとへとになりながら訓練してた時こいつはなんもしてねぇんだ。片付け位させてやろうぜ」

「え、でも・・・」

「行くぞ」


 偉そうに二人分の木剣を投げてくきた倉持。

 こちらを心配そうに振り返る神城は倉持に連れていかれた。


「はあ」


 ここまで露骨だと清々しいくらいだ。

 俺は木剣を片付け部屋へと戻った。

 用意されていた硬いパンとスープを食べて、横になる。


「外行きてぇなぁ」


 一つだけある窓から見える空を見ながらつぶやく。

 まだ一日目だが、こんな扱いされるくらいなら外に追い出されたほうがましだ。


「先が思いやられるな」






 こちらに来て二週間が経った。

 扱いは変わらず。むしろ酷さを増していた。


「おら、逃げろ無能!」

「ははははは!」


 今までどおりの扱いに加え、暇があれば魔法の練習として俺を使い始めた。

 最初は止めてくれていた神城や日向も今では見て見ぬふりだ。

 薄情だよな。


「くはっ・・・!?」


 硬いパンとスープしか食べていない俺はどんどん体力が落ちていき、ひどい扱いによる精神疲労もかなり溜めっていたためか、足を縺れさせてしまい魔法が直撃。

 幸い風魔法だったため命に別状はなさそうだ。


「んだよ。一撃じゃねーか」

「そう言ってやるなよ堅太。DEXもDEFもDランクだから耐久力なんて紙同然だろう?」

「それもそうか。はは! 今日はこれくらいにしといてやる」

「はははははは!」


 彼らは笑いながらボロボロの俺を置いて去っていった。

 なぜ、こうなることがわかっていて訓練場に来ているのか。それはあの嫌味な兵士が飽きずに俺を起こしに来るからだ。・・・クソ。


「くっ!?」


 ボロボロの身体を引きずりながら訓練場を出ようとしたとき、身体に衝撃が走った。


「おっと悪いね竜胆。魔法がそっちに行っちゃったわ」


 ニヤニヤと笑みを浮かべながらそう言うのはオタク連中の中心人物の小田倉兵次。


「おい何してんだよ小田倉ぁ」


 そんな小田倉に笑いながら話しかけているのは代々木。


「・・・いい大人が子供に交じっていじめとはな」

「ああ!? なんか言ったか無能!?」

「うぐッ!?」


 俺のつぶやきが聞こえたのか代々木が俺に近寄ってきて腹を蹴った。

 こいつ・・・。


「いや先生やりすぎやりすぎ。死んじゃいますって」


 鬱憤を晴らすかのように蹴りまくる代々木を小田倉が止めた。


「へ! 大人に嘗めた口をきくからそうなるんだ。力あるものを敬うことを覚えろ無能が!」


 最後に一発蹴りを入れて訓練場から出ていく代々木。

 それについていくように小田倉たちも出て行った。

 全身に走る痛みに耐えながら立ち上がろうとしたところでこちらを見ている日向と目があった。


 助けてくれ。


 そう言おうとしたが声が出なかった。

 彼女は確か回復魔法を使えるようになったはずだ。


「っ」


 彼女は俺の口が動いたことに気づき近づこうとしたが、目をそらして同じグループの女子たちと訓練場から出て行ってしまった。

 さすがに助けてくれる。そう思ったが、淡い期待だったようだ。

 昔から困っていたら助けてくれた彼女も変わってしまった。

 その現状に俺の心は折れそうになる。


「う・・・ぐっ・・・」


 さらにボロボロになった身体を無理やり起こして訓練場を後にした。

 部屋に戻った俺はベッドに倒れこむ。

 今日は食事する気にもなれない。

 眠ってしまおう。

 俺は気絶するように意識を落とした。


 それから何週間が経っただろうか。

 俺はまだ、生きていた。

 身体はボロボロ、クラスメイトからの罵声に暴力、精神もボロボロになっていた。

 今、俺が本当に生きているのかすら自覚できないほどに。

 いつも通りの訓練後の倉持たちのお遊びに付き合い、木剣を片付け、身体を引きずって部屋に帰る。

 それが今の俺の日常と化していた。

 起きたくなくても起こされ、やりたくもない訓練に参加させられ、暴力を振るわれ、満足することができない食事。むしろ生きているのが不思議なくらいだ。


 そんなある日だった。

 いつも通り嫌味な兵士に起こされたと思ったら、訓練場ではなく謁見の間へと連れていかれた。

 そこには他のクラスメイト達もおり、謁見の間の中央には魔法陣が敷かれていた。


「今日呼んだのは他でもない。日頃頑張っている君たちにアグノット様が褒美を与えると仰ってくれた」


 その言葉にクラスメイト達は喜びの声を上げる。


「各々にあった武器がアグノット様より与えられる。だが、一つ条件付きだ」


 次に紡がれた言葉に場が鎮まる。


「一人生贄を捧げるのが条件だ」


 条件を言われ、ほとんどのクラスメイト達が俺を見る。


「どうする? 仲間を一人捧げ強くなるか?」


 その言葉に彼らは顔を見合わせるなか、一人の生徒――倉持が笑い声をあげた。


「ははは! だったら竜胆を生贄してくれよ! あいつは仲間なんかじゃねぇ! 俺たち勇者のお荷物の無能野郎だ!」


 そう言い放った。

 とことんクソ野郎だな。

 その言葉に対し、他のクラスメイト達は首を横に振らず縦に振った。

 つまりイエスだ。


「ダメだよ堅太。彼もクラスメイトだ! 友人を生贄なんかに出来ない!」


 異を唱えてくれたのは神城だけだった。


「よく考えろ光希。神様が俺たちに期待して武器をくれんだぞ?」

「そうだぜ! 神様がくれるってことはそれじゃなきゃ魔王は倒せない可能性もある。なあ? 王様」


 倉持に便乗した男子生徒――彼は確か三奈木沢だ。は国王に問う。


「ああ。伝承では神より与えられた武器を持つ勇者でしか魔王は倒せないと伝えられている」

「だってよ? 竜胆も世界のために犠牲に慣れてうれしいだろう?」


 国王の返答に満足そうな笑顔を浮かべる倉持は、答えられないとわかっていて俺に問うてきた。


「でも・・・」


 それでも助けてくれようとする神城。


「ああ! うぜぇな! 多数決で決める! 竜胆を生贄にすることに賛同のやつ手を上げろ!」


 そんな神城にいら立ちを覚えた倉持はクラスメイト達に向けて言った。

 彼らはおずおずと手を上げ始める。

 その数は過半数を超えた。


「決まりだ! 王様。竜胆を生贄にします」

「わかった。兵士よ。彼を魔法陣の内側へ」

「「はっ!」」


 兵士に引きずられる形で俺は魔法陣内へと連れていかれる。


「これより生贄の儀を行う! 魔法陣起動!」


 国王の言葉にスタンバイしていた魔法使いたちが魔法陣の方に向けて手を翳し始めた。

 すると魔法陣が光始め、光の壁が魔法陣を覆う。

 こちらを見るクラスメイト達に明確な殺意が湧いた。


「―――る」


 殺意のおかげか今まで開けなかった口から声が漏れた。


「あ?」


 その小さなつぶやきに一番近くにいた倉持が怪訝な顔をしながら聞き返してきた。


「――殺してやる。殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる・・・ッ!! お前ら全員殺しやるからなッ!!」

「ははははっ!! 何を言うかと思えば殺してやる・・・ねぇ。生贄にされて死ぬお前には無理な願いだな」


 愉快そうに笑う倉持。

 彼の笑いにつられて他のクラスメイト達も笑い声をあげた。


「クラスメイトの死を前にして笑うのかお前ら! とことん腐ってやがるな。待ってろよ? 化けてでもお前らを殺しに行くからなッ!?」


 その言葉を最後に俺は光に飲まれた。

 最後に見たのは静かに涙を流す日向だった。












―――泣くくらいなら助けてくれてもよかったんじゃないか?








醜い登場人物を書くのって難しいですね。

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― 新着の感想 ―
[一言] これさよくある他の作品と違って転移して即追放って訳じゃないから逃げ出したり何とかする時間も普通にあったよね? 皆にイジメられて誰か助けて誰か助けてとずっと生贄にされるまで居続けてあげくの果て…
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