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プロローグ
「クリスティーナ、君にとって恋とは?」
叔父の問いにきょとんとした表情をした婚約者は少し考えるように俯いた。
全員にされた質問。
最後に問われた婚約者の答えをみんなが待っている。
「私にとって、恋とは、」
薄い紅が引かれた、ふっくらした唇がゆっくりと言葉を紡ぐ。
「恋とは、病です。勘違いから始まって思い込みという過程を経て真実になってしまう病です。」
これまで見た婚約者の微笑みの中で一番柔らかく美しく見えたそれは、底の見えない愛しさと憎悪にも似た感情に震えながらノアを鋭く見つめていた。