他の男を好きな女の身体なんて興味ねぇよ
ジャンル別の日間ランキング1位をいただきました。
ありがとうございます。
「着いたぞ梨花…藍那も…」
「……うん……」
「ここが久斗さんのマンションですか?」
「そう6階の部屋だけど…、エレベーターは死んでるだろうからガマンして階段で上がろうか?」
階段を上がる途中、2体のゾンビと遭遇したが難なく処理できた。
カギで扉を開ける……、換気がされていない分少し臭いな…。俺は窓を開けながらクリーンを連発した。
「あ〜久しぶり〜」
藍那が来慣れた部屋に上がり、ソファへ座り脚を伸ばす。
「お邪魔しまーす」
梨花はキョロキョロと辺りを見ながら、立ったまま落ち着かなそうだ。
「梨花もソファへ座ってくれ」
「ありがとうございます」
誰かと違い、遠慮というものが感じられるよ。
俺の家は親父とおふくろの3人暮らしだったが、親父の海外転勤でおふくろもそれに付いて行ったため、今は3LDKのマンションに1人で暮らしだ。
親父達が海外で良かったよ。日本にいたら助けられる自信はなかったし…。
やっぱり電気・ガス・電話・水道は全て死んでいた…。
梨花達の話によると、ミサイルが撃ち込まれた日に停電となったらしく、水道もその日のうちに出なくなったらしい。
高校には大量の非常食が備蓄されていたから、何とかなったらしいが…。学校の外へ探索に行った勇敢な奴らは、誰1人戻って来なかったみたいだ。
「今は14時、分かってると思うが17時には日が暮れる。少し早いが夕食にするか? それとも風呂にする?」
「お風呂ですか?」
「風呂と言っても、水風呂か俺の清潔にする魔法しかないけど……」
俺は水を魔法で生成できることと、生活魔法クリーンについて説明する。
とりあえず身体周りが気持ち悪いので、お風呂からということになった。
脱衣所と浴室にクリーンを掛け、浴槽へ生活魔法で水を貯める。魔力は勇者程ではないが充分ある。
5分ほどで浴槽に水が貯まった。
ラノベでは、火の生活魔法でお風呂を沸かすなんてコトが描写されているが、あいにく俺の魔法はライター程度の炎しか出せないため不可能だ。
ただ、魔法で抽出される水は俺の体温なので36度、ぬるいし気持ち悪いかも知れないけど、清潔だから我慢してもらうしかないよな。
「じゃあ、準備ができたら声をかけてくれ」
梨花と藍那は2人して脱衣所へ入った。
フーッ……。何か緊張するのだけど…。
「久斗さん……、その準備…できました」
「おう……」
ソファに座っていた俺は、脱衣室の扉へ手をかける。
ガラガラ……。
「なっ…、り…りん……」
手で胸とアンダーを隠し、頬を赤く染めた梨花がそこにいた。
豊かな胸の迫力で肉感的にみえるけど、ウェストはほっそりしている。
手ぶらとは……。
「あっ……、久斗さん…、ちょっとだけ後ろ向いてくれます?」
「あー、すまん……」
慌てて後ろを向く。
「だ…大丈夫ですぅ……、もう…こちら見てもイイですよ……」
「おう……」
「あのぅ……、もしかして……見えちゃいました?」
なっ……、グラビア写真より強烈な身体を……、手で隠しいる姿がたまらなく色っぽい。
Gカップのトップはかろうじて隠れているものの、フニョリと形を変えたバストが目の前に……。
「梨花……、その後ろを向いてもらえるか?」
「…でも……お尻が見えちゃいますし……」
「あーごめんごめん……。そういうことなら……、クリーン!」
「あんんん……」
生活魔法の輝きが、彼女の身体を包み込んだ。
「わぁ…! すごいです。お風呂あがりみたいな爽快感!」
「おっ、おう……」
「あのぅ……、何か着替えるものって……」
「すまん……」
俺は慌てて着替えを取りに行った。
「さすがに……、久斗さんのトランクスは……」
俺は慌ててYシャツとトランクスを手渡してしまったのだが……。
梨花はYシャツを上に着て、アンダーはショーツの代わりに、俺のスイムブリーフを身に着けている。
紐で結べるから大丈夫らしいよ。何か複雑な気分だけどな…。
「似合いますか?」
梨花がクルリッと俺の前で回転してみせた。
「おっ…、お前なぁ……」
自分の心臓がバクバクと早鐘を打つのが分かる。
そして梨花が、ハッキリとした身体を密着させてきた。
「ヒ・サ・トさんになら……」
官能的な声と言うべきか、男の本能がピリピリと刺激される。その微笑みの妖艶さ……。
梨花……、エロ過ぎだろ……。
俺は思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。
「ねぇ久斗? 久斗?」
あー、藍那が呼んでる。
「悪いな梨花…」
「フフフッ。またこ・ん・ど…ですかね?」
何だよドキドキが止まらないよ…。
俺は梨花の横を通り抜け脱衣所へ。
「何だ藍那?」
浴室ドア越しに藍那へ呼びかける。
「何だじゃな〜い! さっきから呼んでるでしょ〜?」
「悪い、それで?」
「ぬるくて、風邪引いちゃうから……、その魔法の……」
「あ〜はいよ」
俺はドアノブをガチャリと捻り浴室へ入ろうとするが……。
「バカ〜! 急に入ってくんな!」
お前が魔法かけろと言ったのだろうが……。
「どうしろって言うんだよ?」
「もう…こっちが聞きたい! どうすればイイのよ〜?」
「桶とかで隠せばイイだろ?」
何言ってるんだ俺は……。
「ハッ〜、フザケないでッ。乙女が桶で隠せるワケないでしょ!」
スマンなぁ……、しかし……。
「ちょっと待って久斗……、これなら大丈夫かな? ヨイショッと…」
「イイか?」
「イイわよ早く魔法かけて!」
「じゃあ入るぞ〜」
ガチャリッ。
なっコイツ、身体を洗うナイロンタオルだけで隠しやがった……。
「見るな!」
「見てねぇ……」
「ねぇ〜早くかけてよ〜……」
うっせーな。
「クリーン!」
「あんんっ……」
「悪いが……、他の男を好きな女の身体なんて興味ねぇよ」
「……」
ガチャッ!
ホント、ぎゃあぴ〜とウッセーわ。
トントントン。
梨花の料理する音だ。
裸Yシャツにおふくろが使わなかったピンクのエプロン…。さすがに目の毒だからと、テニスの短パンは履いてもらった。
ヤバイな…。梨花と2人だったら、夕食どころじゃあなかったよ。
親父がキャンプ好きだったから、キャンプ用のガスバーナーコンロがあったのが助かった。今、使用しているのを除いて、ガスカートリッジも予備が2本ある。
ただ米びつにあったお米は、あいにく虫が湧いていて全滅だ。
家に残っていた乾麺のうどんに、異世界で買ったままアイテムBOXへ入れておいた長ネギとニンジン、それにワイルドボアの肉で肉うどんを作ってもらっている。
麺つゆを出しておいたのだけど…、梨花はカツオ節にみりん、醤油にお砂糖もあるので大丈夫ですよ〜だって……。
グラビアアイドルで料理もできるってどういうことだよ……。
藍那はというと、俺のテニスTシャツに、短パンを身に着けタオルで顔隠してまま、おとなしくソファの端に座っている。
料理において戦力外だからな。静かでイイわ。
「久斗…、ねぇ久斗……」
はぁ…。今度は何だよ藍那……。
???
「藍那お前…、ちゃんと頭拭いたのか? ビショビショに濡れてるだろ?」
「えっ…、あっ!」
「タオルかせっ。拭いてやるから……」
藍那へ近づきタオルをとりあげ、髪の毛を拭いてやる。
「あっ…ありがとう」
「風邪引いたらどうするんだよ? お前は髪長いんだからちゃんと拭かないとだめだろ?」
くそぅ。ブラウンの髪から女の香りがしてくる……。
「ごめんなさい……」
藍那は顔を赤くし、恥ずかしそうにうつむいた。
「新しい着替え持ってくるから、向こうの部屋で着替えてこい?」
「うん、分かった……ありがと久斗……」
藍那の大きな瞳はキラキラと輝き、なんとも言えぬ笑みが漏れた。
まったく……、俺のことを好きでもないくせにそんな笑顔見せるな……、こっちが照れくさいわ……。
「は〜い久斗さん、藍那さんも。御うどんができ上がりましたよ〜」
トレイにうどんの器をのせた梨花がやってきた。
「あれ? 藍那さんは?」
「向こうで着替えてるよ」
「上手にできているか不安ですけど?」
ピンクのエプロンが眩しいな……、新妻か?
Yシャツの胸元が開いているため、深い胸の谷間がよく見える。間近で見るボリュームに目が吸い寄せられた。
まずいな…。
『浜崎先輩、緒方梨花さんに夢中になるのは危険ですよ』
以前言われたマネージャーの助言が頭の中に響いてきた。