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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第五章:王都が襲われたようです
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勧誘のお話。

仲間になりたそうに(以下略

 翌朝、目が覚めると元の大きさに背丈が戻っていた。


 

 ガチャ……



 「おはよ~ヒビキ~。あら~? 縮んじゃったのね、残念」


 「おはようございます、母様」


 いつもと変わらぬのほほん顔で朝一発目からそんなことを言うエミル。


 成長した状態で帰った時もクラリアとカレンは口をあんぐりさせて驚いていたのにエミルだけは「あらあら~、おっきくなったわね~」と言っていつもと変わらない様子だったのを覚えている。

 ああいうところを見ると母親という生き物の強さを感じる。


 「朝ごはん出来てるから、早く顔洗って歯磨きしてきなさい~」


 そう言ってエミルは響の部屋のドアをガチャリと閉めてパタパタと食卓に戻っていった。

 響は言われた通り顔を洗って歯を磨き、魔導学院の制服に袖を通した。そのまま食卓に行くとすでにクラリアとカレンが朝食を取っていた。


 「お! おはようヒビキ」


 「おはようヒビキ」


 「おはようございます父様、カレンさん」


 朝の挨拶を交わして響も食卓に着き朝食を食べる。

 その後梓と影山たちが迎えに来るまでしばしダラダラして二人が来たら一緒に登校する、途中でマリアとセリアも合流して五人での登校となる。


 魔導学院に着くとすでに到着していたアリアにリナリアやミスズ、賢介たちやキュリアと話したりしながら学院で訓練や授業を受ける。


 そして午前の授業が終わると昼休みになり各々昼食を取って午後の授業に備える。響たちはいつも集団で食事をしており、昼休みの間も話題が尽きることはない。たまにフランやレイやヴィラがやってくることもある。


 そして午後の授業を受け、放課後になると響とアリアとマリアとセリアは生徒会室に向かい他のメンバーは自由になる。



 これがいつもの魔導学院での日常なのだが今日ばかりは少し違った。


 どこが違ったのかと言われれば放課後に響たちの他にいつもはいない梓や影山に賢介たちと言ったメンバーが呼ばれたことだろうか。


 「みんなよく来たね。適当に座って」


 生徒会室にはすでに会長のフランと役員のレイとヴィラ、そして本来この場にはいない人物である勇者グリムがいた。


 即ちここに居るメンバーは先の王都戦で主軸となって戦ってメンバーである。

 そのことから導かれるのは一体何か、響たちは予想できなかった。


 「全員揃ったみたいだな。なら早速本題に入ろう」


 相も変わらず鎧姿のグリムが一歩前に出ると生徒会室の雰囲気が張り詰めた空気になった。

 

 「まず初めに結論だけ言おう。君たちのうちから数人を私たち勇者パーティーの一員として加えようと思っている」


 その瞬間、全員の心がざわついた。

 勇者パーティーの一人に加わる、つまりそれは響たちの当初の目的である魔王討伐にぐっと近づくということである。

 だが今グリムは「この中から数人」と言った、それが意味することはたとえ響たちがアザミによって連れてこられた転生者たちであろうと全員は連れて行けない可能性があるということだ。


 「数人、と言うのは具体的にはどれくらいの人数なので?」


 フランが沈黙を破って話を切り出すと、グリムはそれに頷き答えた。

 曰く、連れて行くメンバーはもうすでに決まっているとのことらしかった。ではなぜこうして全員を招集したのかと言うと、他のメンバーは王国騎士団の前線部隊に入隊してもらった後に勇者パーティーの一員になってもらうということらしい。


 「正直のところ戦力になるようであればこのまま全員を連れて行きたいところではあるのだがそうもいかないのだ。やはり過半数がまだ齢十三の子供たちを一斉に引き連れていくというのは国王に反対されてしまってな。今すぐには大勢連れて行けないんだ」


 「本当なら今すぐにでも全員を連れて行きたいのだが……」と残念そうにするグリム。

 だが国王の言っていることは最もである、いくら勇者パーティーの一員になれるほどの戦力を持っていたとしても響たち転生組はまだまだ未熟な子供。アリアやレイやヴィラやフラン、そして例外ではあるがリナリアは皆結婚できる年齢を超えているため子供というわけではないのだろうがそれでもまだ若い。


 「前線部隊に配属されるのは二年くらいを予定している。少なくとも全員が結婚できるような年齢になるまでは騎士団で戦ってもらうつもりだ」


 「なるほど。その場合私はどうなる、私たち女神に年齢という概念はないぞ」


 と、リナリアが疑問を投げかけるがすでに彼女は勇者パーティーの一員に加わることが決定しているらしい。勿論本人の意思はあるがリナリアを確保できたなら大きな戦力にはなるだろう。


 「まぁ今日はそのことを伝えに来ただけだ。詳しい報告は後日改めてすることにしよう、突然来て悪かったな」


 そう言ってグリムは生徒会室から去っていった。


 生徒会室には何とも言えない微妙な空気が漂っており、しばし沈黙が続いたがあまり長くはなかった。その理由は、というか理由と言うほどのものでもないのだがある種の慣れとでも言っておこうか。

 正直なところ響たちはこれくらいの予想外ならすぐに頭を切り替えることが出来るようになっているため、話題は誰が選ばれるかどうかという話題へと移行した。

 そしてそこからただの雑談に至るというもはや日常風景に移りかわりそのまま下校という流れに切り替わり久しぶりに大人数での下校となった。



 その帰り道。


 「ねぇ響。もし選ばれたらどうする?」


 「どうするって……そりゃ頑張るしかないだろ。元々の目的だしな」


 「でもなんかちょっと怖くない? 今までより強い魔物とかと戦うんでしょ?」


 「怖いのか? らしくねえな」


 響は梓を揶揄うように普段と変わらぬ感じで言うが心なしか梓の表情が暗い、どうやら本当に不安なようだ。


 「怖いよ、いつ死ぬか分からないんだって考えたら――――」


 「心配すんな。お前が死にそうになったら死ぬ気で守ってやる」


 梓の言葉を遮るように響がそう言うと数秒梓が沈黙した後、「ふふっ」と梓が笑った。


 「それじゃ響が死んじゃうじゃん」


 「あぁ……そうなるか。そうなったらまた転生でもしてもらうかな」


 「なにそれ」


 「あらあら、相変わらず仲が宜しいのですのね」


 マリアの発言により周囲から散々にいじられる響と梓だが、もうすでに慣れっこである。



 そのまま帰宅した響は部屋に戻るなりベッドにダイブ。

 体は疲れと共にベッドに沈み込んでいき響は短くため息を吐く、見慣れた部屋の天井を眺めながら響はこれからどうなるのかを考えた。




 まだ結論の出ていない、アリアのことも含めて。




 だが今日のところは何も考えないでいいか、瞬間的に響はそう思った。


 響は久しぶりに魔導書を取り出しながらベッドでゴロゴロし、夕食を済ませて風呂に入り歯を磨いてまた魔導書を読んで寝た。




 ただしその夜、夢の中にまで何故か椿が現れたことにより翌朝寝不足になったのは秘密である。

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