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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第四章:魔導学院で色々やるようです
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心構えのお話。

そろそろ色々やっていこうかと

 「響っ! 大丈夫!?」


 地面にへたり込んでいる響に梓が声をかけてくれた、響は大丈夫だということを伝えるため声のした方を見る。


 すると、この空間にいる全員が戦いの手を止めてこちらを見ていることに響は気が付く。

 いや、正確には吹き飛ばされた赤髪の女性アキレアとそれを蹴り飛ばしたリナリアへと向けられた視線だった。


 ただ視線を送っているだけならまだしも、響のクラスメイトの中には数人ほど畏怖の念で見ている者たちだっている。それがアキレアに送られたものなのかリナリアに送られたものなのか、はたまたアキレアの攻撃を少しとはいえ凌いだ響に対してなのか、それは本人たちにしか分からない。

 

 だがはっきりと分かるのは、アキレアとリナリア、その二人の戦いには種族問わず学院生たちはおろか、すぐ近くにいる響でさえ近づくことは出来ないということだ。


 「リナリアぁ……お前最近見ないと思ったらこんなとこにいたんだ? 珍しいじゃないか、お前が人族に興味を持つなんて」


 「なに。ちょっとした気まぐれだ」


 「かっははははははは! いいねぇ気まぐれで、いいじゃないか。ならお互い本気でやり合えるってもんだな!」


 そう言ってアキレアは地を一蹴りして一瞬にしてリナリアの眼前に現れ拳を振りぬく、リナリアはそれを瞬きすることなく片手で容易に受け止める。

 無論、響にアキレアの拳が見切れるはずもなく何が起こったのか一瞬理解できなかったくらいだ。


 「ヒビキ、悪いが向こうへ行っていてくれ」


 リナリアはそう言うと響の返事を聞くことなく転移魔法で梓のところへ響を転移させた。







 そこからは、リナリアとアキレア、二人の女神による文字通り次元の違う戦いが始まった。

 二人が地を蹴れば地面は凹みひび割れ、拳は大砲のようにけたたましく、蹴りは槍の鋭さの如き。魔法の質も響たちとはもはや別の世界のもの。

 仮に響たちの魔法のレベルがドット絵程度のものだとすると、リナリアたちの魔法はバーチャルリアリティー即ち仮想現実を再現できるほど。それくらいに別次元での話だった。



 両学院の生徒たちは闘争心を忘れ、ただただ二人の戦いを傍観するしか出来なかった。


 「…………はは……笑えねぇ……」


 一瞬とはいえアキレアと拳を交えた響にとっては先ほどの一連の流れがお遊びに思えた、実際アキレアにとってはお遊び同然だったのだろうが、それでも響にとっては今まで感じたことのない確かな死の危機を感じていたのだ。


 「響……」


 その隣にいる梓は乾いた笑いをする響の手が震えていることに気が付き、何を思っているのかを察する。そして少しだけ手を握る。

 それに響も気が付いたのか少しだけ気が楽になった。


 その間にもリナリアとアキレアの戦いは苛烈を極めていた。

 理由はパワータイプのアキレアが近接戦だけでなく魔法を使い始めたことによるものでもはや二人の立っている場所は荒れ地のようになっていた。


 最終的にリナリアが転移魔法でアキレアを攪乱し、転移したそばから拘束魔法で次々とアキレアを縛り動けなくさせたところで二人の戦いは終結した。


 「だぁっっこの……本気で縛りやがって」


 「こうでもしないと簡単に引きちぎられるからね。これでもまだ心許ないくらいだ」


 そう言いつつリナリアはダメ押しなのか「ハイマ・グローム」を六本突き刺して制服の乱れを直した。といった具合にリナリアとアキレア、二人の女神による直接戦闘は無事幕を下ろした。きっと二人ともあれが本気というわけではないのだろうがひとまず戦闘が収まってくれたことに全員が胸を撫で下ろす。



△▼△▼△▼△



 「えー……まずは暴れ過ぎたことを謝罪する、申し訳ない」


 「だから言ったじゃないですか……」


 今度はきちんと集まった獣族の魔導学院の生徒たちの先頭に立って響たち人族の魔導学院生たちに首を垂れる赤髪の女神アキレア。

 その後アキレアによって今回の合宿の内容が説明された。


 曰く、妖王大陸ではサバイバル生活をして自分たちの実力やその場での対処能力を訓練したため獣王大陸つまりこの学院では戦闘に対する心構えなど精神面を鍛えるといった趣旨で行われるという。

 また獣族は近接戦に優れた種族であるため戦闘関連のスキルも鍛えられる。


 「じゃあまず貴殿ら人族魔導学院生たちには等間隔に並んで座ってもらう、座禅して集中力を高めてから実戦だ」


 



 それから響たちは言われた通り等間隔に並んで目を瞑り約五分間の精神統一を行った、座禅の体勢で行われたそれは静かな空間の雰囲気と相まって妙な安らぎを与えてくれた。

 五分間はあっという間で気が付けば終わっていた、終えた後の響たち魔導学院生たちの気持ちはどこか清々しく体が軽くなった気がした。思えば真面目に座禅を組んだことなど今までなかったからこのような気持ちになったのか、はたまた純粋にリラックスできたのか、恐らく両方だろう。


 「なるほど、いい集中力だ。少々散漫している者もいたが多めに見よう。さてそれでは早速―――」


 その時再びアキレアの纏う雰囲気がガラッと変わった。


 「――――実戦訓練と行こうかぁ!! まずは準備運動だ! 野郎ども!」


 「おおおおおおおおおぉぉぉ!!」


 「いや女子もいるんですけどね!?」


 そんなソルのツッコミも空しく男子生徒は勿論のこと女子生徒もアキレアの熱にほだされて戦闘モードに入っている。


 無論、準備運動が準備運動になるはずもなく授業でやるレベルの戦闘訓練と同等もしくはそれ以上のものだった。それが終わった時点で疲れていた響たちに慈悲はかけまいとアキレア率いる獣族魔導学院生たちは息つく暇もなく本番の実戦訓練へと切り替えさらに追い打ちをかけた。


 訓練をしている中で響はこう思った。


 「心構えなしにがっつり実戦やるんじゃねえか!」と。


 その後響たち人族の魔導学院生たち全員がヘトヘトになっていたのは言うまでもない。

リナリア「何をそんなに疲れているんだ」

ミスズ「死ぬ………」

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