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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第四章:魔導学院で色々やるようです
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晩餐会のお話。

かくしてサバイバル生活は大団円

 ラフィーリアが無謀な挑戦の結果敗れて数分後、目を覚ましたラフィーリアは「ちょっと調子が悪かっただけですから!」と啖呵を切っておきながら負けたのが恥ずかしかったのか顔を真っ赤にして叫んだ。


 「もう……今日は厄日です……」


 がっくりとうなだれながら自らの現状を嘆いている中、いつの間にか女子組は絵美里が手懐けたマーナガルム種の毛並みをこれでもかと堪能していた。


 「ドンマイ、ラフィーリアさん」


 「あなたも強そうですね……人族も馬鹿に出来ないみたいですね、本当。あ、私のことはラフィーでいいですよ……えっと……」


 「ヒビキ・アルバレストです。その……別にそんなに気を落とさなくても……」


 「負け自体は素直に認めます、けどあの人、どうやって上級魔物なんて手懐けたんですかね」


 「……多分だけど、鎖に細工したんだろうな。能力で」


 大方、「我淀引水デコレーション」で鎖に自分にとって都合のいい性質、つまりは拘束した対象を手懐けられるという性質を付与したのだろう。

 自分が得になるようであれば問題ないはずだと思うが、まさか上級魔物相手にも通用するとは思わなかった。


 「え、なんですか能力って」


 キョトンとした表情のラフィーリアの顔を見て響は「あ、やべ」と心の中で思う。どうやって誤魔化そうかと思ったがラフィーリアの行動は早く、絵美里の元へと走ってしまう。


 これは怒られる、そう思った響だったが二人の会話を遠目から見る分には特に何も起こらずそのままラフィーリアが戻ってきた。


 「あいつ、なんて言ったの?」


 「適合能力って言ってました。あの人のスキルってことなんですかね、魔法に性質を付与するとか凄いじゃないですよね」


 その報告にホッと胸を撫で下ろす響だったが次の発言に撫で下ろしていた胸が止まりそうになる。


 「全員スキル持ちなんですね、どうりで強いわけです。納得しました」


 「あぁそこまで聞いたんだ」


 まぁ、全員スキル持ちくらいはいずれ分かるから明かしても大丈夫か。


 結局、散り散りだったラピストリアメンバーが集まったのでそこにラフィーリアを加えた総勢十五人という大所帯で残りの日程を過ごすこととなった。

 そのおかげで魔物は脅威にならず周辺探索なども尋常じゃないスピードで進みただのキャンプのようになってしまい、そのまま最終日までを迎えることになった。



△▼△▼△▼△



 そして最終日、学院生一同は妖族の魔導学院に集合していた。

 全員集合してからというもの驚くほど何もハプニングは起きずに過ごすことが出来た、他のメンバーを見ると怪我をしていたり顔がやつれていたりしていたところを見ると自分たちがおかしいんじゃないかと思えてくる。


 『えー皆さん、最終日ということでお疲れ様でした。今日はこの学院で過ごしてもらいます、他の学生たちは帰らせましたので好きに使ってください。なおその場合、学校の備品などを壊さないように注意してください。夕食などは各自食料調達まで各自ですること、その際に野菜と調味料、そして食器や調理室自体はこちらで用意してあるので必要であれば申し出てください。他にも何か質問があれば近くにいる先生たちに聞いてください、以上です』


 妖族の魔導学院長の挨拶が終わり文字通りの自由時間になった。


 生徒たちは歓喜の声を次々と上げ種族問わず一緒に過ごしたことで友情が芽生えたのかハグする者たちもいた。


 今日の予定は夜になったら自分たちで食料を採取してきて空き教室に簡易的な寝床を用意されているのでそこで寝るといったもので、他の時間はお喋りしたり魔法や白兵戦の自主訓練をしたりと個人の自由となっている。


 ちなみになぜ寝床が体育館や戦闘訓練室のような広い場所ではないのかというと、誰かが騒いでトラブルが起きた際に他の人が寝れなくなったりと迷惑になることを考慮してのこと。


 「ヒビキ君、今のうちに食料を狩ってこよう。凍らせれば何とかなるだろ」


 「そうですね。あまり疲れてないうちに行きましょうか」


 「あ、じゃあ僕も行くよ。何かあったら危ないから」


 食糧確保のため響とアリアと凪沙は一旦食糧確保のため再び森に戻ることにした、その間に梓たちには学院内の構造の把握をお願いしておいた、何かあってもいいように。


 しばらくして響たちが戻ってきた。食料は転移魔法での裏技を使ってあえて転移先を設定しないで空間の隙間に保存している。 


 それから狩りを終え、雑談をしている間に時間は経ちあっという間に夜になった。

 ラフィーリアもすっかり打ち解けたようで響たちが戻ってきた際には、「早かったですね。ま! 私ならもっと早く帰ってこられましたけどね!」とすっかり元気を取り戻していたようだ。


 と、その時その元気が裏目に出たのかラフィーリアのお腹から可愛らしい音が聞こえた、見る見るうちにラフィーリアの顔が赤くなりお腹を押さえて響を睨む。


 「……ちょうどいいですし飯にしますか、俺が作ります」


 「ほぉ……ヒビキ君が作るとは意外だね。どれ、僕も少し手伝うよ」


 「おっ! 響の料理久しぶり!」


 「確かに意外ですわね、楽しみですわ、ヒビキの料理」


 「美味しさは私が保証しよう。これまで何回も食べてますから!」


 なんか知らぬ間に料理のハードルが徐々に上がってきて内心焦る響。だがここはもうやるしかない。


 材料は魔物の肉、拾った木の実、香草らしきいわゆる食べられる雑草、学院側で用意された野菜類。その他には塩などの調味料に無料の水道水や森の湧水。


 ここから導き出される最適解の料理。ステーキという案も響の中では出たのだがあまり料理をしたという気にはなれない。ならば……と響はある一つの料理を思いつき、作り方をアリアに教えながら早速料理を開始する。





 それから数十分後、ラフィーリアだけではなく全員の腹の虫がなっていた空き教室に転移魔法で響とアリアが戻ってきた。

 響とアリアは大きな葉を皿代わりにしてそこに空間の隙間に保存させておいた完成した料理を転移させて乗せると、部屋中に香ばしい匂いが充満し始めた。


 今回響が作った料理、それは。


 「ハンバーグ? これ」


 そう、ハンバーグである。

 思えばネメシスに来てから一度も見たことがなかったためもしやと思ったら案の定、そんな料理は知らないとアリアに言われた。転生組やミスズは当然知っているもののネメシス組のマリア・セリア・アリア・キュリア・リナリア・ラフィーリアはこれがどんな味のする料理なのか分からなかった。


 「これは……肉料理、ですの?」


 「そんなとこ、食ってみてくれ」


 「では……いただきます」


 調理室から持ってきたフォークをマリアに渡し、マリアはそれを受け取って一口パクリとハンバーグを食べる。その瞬間、マリアの顔つきが変わった。


 「うぅ~ん! 美味しいですわねこれ! とても美味ですわ」


 マリアの言葉に他のネメシス組が一斉に食べ始めると、マリアと同様にほっぺたを抑えて恍惚の表情で味わう、どうやら口にあったらしい。


 「おお、これは中々。美味いじゃないか」


 「ええ本当。とても魔物からとれた肉とは思えないわね」


 「臭みもありませんしね。今後お屋敷で作ってみましょうか」


 「普段はあまりお肉は食べないんですが……いけますね」


 魔物の肉を包丁、もとい短刀で細かく切って塩をつなぎの代わりにして作った即席ハンバーグは意外にも好評で転生組の口にもあったようだ。本当なら小麦粉にパン粉や、卵と言ったものを繋ぎに使った馴染みのある日本的なものを作りたかったのだが材料がないから仕方がない、それでも今回はそれなりのものが作れたと響は自負した。



 かくして妖王大陸での夜は更け、最近の疲れが一気に出たのか、響たちは泥のように眠り朝を待った。

次回より獣王大陸へと参ります。

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