表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第四章:魔導学院で色々やるようです
76/221

自称天才少女のお話。

回想シーンが長くなってしまうのが悩み

 「無視しないで下さいよ! 今だってよく状況分かってないんですからね!?」


 「一応説明したじゃん、『飛ばすからしっかり掴まってて』って」


 「だとしてももうちょっと詳しく言ってくれてもいいんじゃないんですかねぇ!?」


 最もなことを言うその少女を軽くあしらって賢介の方へと行ってしまう絵美里、怒る少女をキュリアが必死に抑えようとするが少女の怒りは収まらず猫のように威嚇している。


 「キュリア、僕たちにも何があったのか教えてくれないかい?」


 「あぁうん。どこから説明すればいいのかな」


 えっとね、そう言ってキュリアは響たちにここに来るまでの経緯を話し始めた。



△▼△▼△▼△



 遡ること数時間前、キュリアと絵美里は周辺の探索と小川で水を汲んでいた。水は綺麗だったので眠気覚ましに顔を洗っていると奥の方からもう一人のグループメンバーがお手製の木の籠に木の実を入れて戻ってきた。


 「木の実とか色々拾ってきましたよー」


 「おー、お疲れ」


 「私としては、もうちょっと魔法を使いたい気がするんですけどね」


 よいしょと木の実の入った籠を置いて額の汗を拭う妖族の少女、少女は袖をまくって自分も顔に水をパシャパシャとかけて顔を洗うと目を瞑って子犬のように首を振って水を飛ばす。


 ひとまずこの後の方針を考えてから移動しようかとキュリアは考えていると何やら不穏な風が肌を撫でた、するとバサバサと鳥たちが木々から逃げゴブリン種などが飛び出してきた。


 ゴブリン種が飛び出してきたことで若干警戒するキュリアだったがゴブリン種はキュリアたち三人を無視して群れで逃げてしまった。その状況に三人は嫌な予感がして顔つきが真面目になる。


 「なーんかやばくない? これは流石にうちでも分かるし」


 「そうですね……ま! 私の魔法があれば心配いらないですけどね」


 「二人とも、構えて」


 キュリアが短く言うと森の奥から狼のような鳴き声が聞こえてくる、それは次第に近づき、キュリアたちの目の前に姿を現す。


 「マーナガルム種!? 普段は滅多に見ないはずなのに……どうして」


 「考えるのは後っしょ。正直やばいんじゃない?」


 「確かに、ここはとりあえず……」


 そこでマーナガルム種が大きな咆哮を上げる。


 「全員全力で回避行動!」


 キュリアの合図通りに二人はマーナガルム種とは戦わず一定の距離を取って回避行動をとることに専念した。幸いにもマーナガルム種は群れではなく単独で行動していたため他のことに気を取られることはなかったがそれでもマーナガルム種が素早いのには変わりない。


 絵美里はこの時気が付いていた。恐らくこのまま回避行動や防御行動だけをとっていても先に自分たちがバテるのは必然だということに。


 ならば、と絵美里はあえてマーナガルム種に突撃していった。


 「ちょっと! 死にたいんですか!?」


 「いいから見てなっての!」


 絵美里は他の二人に気を取られているマーナガルム種に距離を詰め、上級魔法「レストレイトカース」で発動させた鎖をマーナガルム種の首に巻き付けて拘束する。


 するとどういうことか、最初こそ鎖を巻き付けられたことで抵抗して暴れまわったマーナガルム種だったがすぐに大人しくなりその場に伏してしまったのである。


 突然の出来事に何が起こったのか分からずキュリアたちは呆気に取られてしまう、絵美里はそれを察したのかざっくりと能力のことを隠しつつどうやったのかを明かした。


 「うちの魔法は特別製って感じに覚えててくれればそれでいいよ」


 「そう言われて納得できる方が凄いですよ!?」


 「よーしよしよし」


 「無視しないでください!」


 まるでペットの犬を撫でるようにマーナガルム種の毛並みをもっふもふと触る絵美里に鋭いツッコミを入れる妖族の少女。「あ!」と絵美里はマーナガルム種を立ち上がらせてその上に乗る。


 その後キュリアを半ば強引に乗せると「よし」と言った。


 「え? あの、本当に何してるんですか?」


 「折角だしこいつを有効活用しようかなーって。あ、これに掴まって」


 というと絵美里は妖族の少女にジャラリとレストレイト・カースで作った鎖の内の一本を妖族の少女に手渡す、少女は訳も分からぬままそれに掴まる。


 「じゃあ飛ばすからしっかり掴まっててね。出発!」


 「いや、え、だからどういうこと……っていうか出発って……うぉぁぁぁあっ!?」


 出発の言葉を聞いたマーナガルム種は急加速して勢いよく走りだす。必死にマーナガルム種に繋がるキュリア、それとは別に鎖に死ぬ気で掴まり振り落とされないように悲鳴を上げ風の抵抗を受けながら必死に堪える。



△▼△▼△▼△



 そうして走り屋の如く風を感じているところで偶然響たちを見つけ今に至るというわけだ。


 キュリアがここまでの経緯を話し終えてもなお妖族の少女の怒りは完全には収まっていなかった。

 全員が少女に同情した、そりゃそうだ、自分がそんな状況に置き換えられたらと思うとたまったもんじゃない。


 「で、結局その子の名前はなんて言うんだい?」


 そこでさっきまで怒りに満ちていた妖族の少女が目の色を変えて叫んだ。


 「いいことを聞いてくれました! いやはや、あなたは中々見る目がありますね。お名前は何というんですか?」


 「アリア・ノーデンスだ。君は?」


 アリアが尋ねると少女はびしっとポーズを決めて大きな声で堂々と答えた。


 「私はラフィーリア。ラフィーリア・シャルロッテ。魔導学院期待の新入生であり妖族きっての天才魔法使いラフィーとは私のことです! 私が、私こそが! いつかは妖族の勇者として魔王を討伐し、全種族で一番の魔法使いになる天才少女なのですよ!!」


 この自己紹介の中で二回も天才って言ったぞこの子。


 自分で自分のことをこうも評価できるとは、羨ましいとすら思える。そんな感じで響はラフィーリアを「そういう子なんだな……」とどこか悟ったように考えているとアリアは小さく「へぇ……」と面白いものを見るような目でラフィーリアを見る。これはやばい。


 「天才か、なるほど。ならもしよければ僕と手合わせしてくれないかい? 天才少女の力、見てみたいな」


 「いいですよ? 負けても落ち込むことはありませんからね。なにせ私は天才ですから」


 フフンとこれでもかというくらいに胸を張って絶対に勝てる気でいるラフィーリア。


 その後、アリアとラフィーリアの軽い手合わせが行われたのだが、全員が予想していた通り結果はアリアの完勝。ラフィーリアはアリアに触れることすらできなかった。


 実際ラフィーリアの実力は自分で天才とか言うだけあって別に弱いわけではなかった、相手を間違えただけで。


 この後、勝てそうだろうと思って選んだ琴葉に勝負を吹っ掛けたところ、最初こそ琴葉の性格から優位に立っていたラフィーリアだが琴葉が蓄積ダメージをそのままラフィーリアに跳ね返したところでラフィーリアが気絶、その場に空を仰ぐようにして仰向けの状態で倒れた。


 何とも言えない空気が漂うその空間には、ただ冷たい風が木々の間から吹き抜けただけだった。

新キャラ登場

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ