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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第四章:魔導学院で色々やるようです
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荒稼ぎのお話。

まだ日常パート

 翌日のことだった。

 色々と厄介ごとを起こしてしまった響とその巻き添えに近い被害者である梓たちは初日から授業に出ることなくその日を終えるというまさかの事態になってしまった。


 新環境一日目にして同学年のみならず先輩たちからも注目されてしまった響たちはせめて今日の二日目からは波風が立たないようにしようと決め学院にやってきたのだが。


 ドアを開けて教室に入るとどうだろうか、すでに教室にいたクラスメイトたちが全員立って大きな声で響たちに「おはようございます!」と挨拶をしてきた。

 別に挨拶されること自体は何らおかしなことではない、問題なのはまるで軍隊で教官が現れたのかと思わせられるくらいの緊張感で挨拶されたことだ。


 「お……おはよう、ございます……」


 当然こんなこと逆にどうやったら想定できるというのだろうか、クラスメイトたちのその気迫に押され言葉が詰まりながら響は挨拶を返した。すると響たちの前へ三人の男子たちが現れる、そう、昨日梓たちにナンパを仕掛けた上に不用意な発言で響の逆鱗に触れ、仲良く医務室送りにされたあの三人である。


 「おはようございます! 先日は無礼な行為を働き、誠に申し訳ございませんでした!」


 「「申し訳ございませんでした!」」


 「えーっと……どういう状況なのか説明してくれるとありがたいんだが……」


 その後なんやかんやありつつも明らかになった真相がこれらのことだ。


 まず、先日の出来事は瞬く間にクラスメイトたちだけではとどまらず在校生の先輩たちの耳にも入り、「新入生のやつで一人物凄く強いやつがいる」という噂が流れた。


 その噂が流れてすぐに、「もしかしたらそいつはスキル持ちの一人なのではないか?」という推測が立てられ気になった生徒の一人が、きっと何か知っているだろうと思いフランの元へと行き響のことについて聞いた。


 するとフランは包み隠さずその生徒に伝えた、


 「確かに彼はスキル持ちだけど、あれスキルじゃなくて彼の魔法だよ」


 なんて言ったものだからそれはもう凄い勢いで広まり、学院中のニュースになった。そして翌日の朝、何も知らない響たちが教室に入ってくると、すでにクラスメイトたちはその噂を聞いた後だったのであのような行動をとったというわけだ。



△▼△▼△▼△



 「ごめんごめん、あの時私もテンション上がっててさ。つい……ね?」


 「おかげで疲れましたよ……」


 「いやぁ、後輩がここまで有名人になるとは。僕としては嬉しい限りだけどね」


 「先輩も何か言ったらしいじゃないですか、『ヒビキ君は未知の武器を作り出して操るんだ』とかなんかとか!」


 「記憶にないね」


 その日の放課後、魔導学院生徒会室に響は呼び出されていた。

 要件はお察しの通り響を生徒会に入れること、ちなみにアリアは初日にすでにフランのところへ直接赴きその場で即採用された。


 魔導学院の生徒会には特に人数規定などは設けられてはいないが加入条件があり、どれか一つを満たしている必要がある。一つは教師が勧誘して入るパターン、二つ目は生徒会役員にスカウトされるパターン、そして一番厳しい三つ目は生徒会役員を魔法ありの模擬戦で倒すこと。今回響はスカウト制なので比較的簡単に入れたと言える。


 早速響の加入手続きをしているとドアがノックされガチャリと開いた。


 「失礼しまーす……あら、ヒビキにアリアじゃない」


 入ってきたのは学院でも冒険者でもお世話になっているヴィラだった。


 「あ、ヴィラ。お疲れー」


 「お疲れ様です会長、アリアは昨日加入してましたから今日はヒビキを?」


 「察しが早くて助かるよ、どう? 結構な戦力になるとは思うよ?」


 「まぁ確かに、戦力としては申し分ないかと思います」


 「はいじゃあ決まり! ヒビキ君、ここにサインして」


 「分かりました」


 促されるまま響はフランが差し出した書類にサインをした、あとはフランがこれを教師の誰かに渡して受理されれば正式に響は生徒会のメンバーとなるわけだ。


 「あそうだ、ヴィラ。彼氏君は?」


 「彼氏君、とは」


 「レイ」


 「あいつとはそんなんじゃありませんから!」


 違うのか、てっきりアリアも響もそうだと思っていた。


 「そんな怒んないでよ。で、レイは今どこにいるか分かる?」


 「多分もう来るとは思いますが」


 ガチャッ


 「お疲れ様でーす」


 「噂をすれば」


 「え、何かあったんですか?」


 そこへタイミングよくレイがやって来たことによりフランは高々と「任務に行こう!」と宣言した。まぁ本音を言えばなんとなく察しは付いていたのだが。



△▼△▼△▼△



 「おい……あいつら本当に学生か? プロじゃないのか?」


 「分かんねえ、でも強いのは確かだろ……」


 「しかも餓鬼がいるってのがまた……」


 いつもお世話になっている冒険者ギルドは静かな騒がしさで溢れていた。


 その原因は響たちが任務を相当数こなしたからなのだがその量が問題だった。


 その量、およそ五十。時間にして僅か一時間で任務一回辺りにつき約一分弱。それも響たちがやったのは全て上級魔物が相手の難易度が高い討伐任務ばかりだった。

 普通の冒険者なら一時間で上級魔物相手の討伐任務をこなせるのはよほど多くても十個くらいなもの、単純計算でその五倍なのだから騒然とするのは頷ける。


 ただ響たちの功績はそれだけにとどまらず、真に評価されるべきは受けた任務の遂行速度。馬車などを使えばそもそもこんな短時間では出来ない、ならばどうするか、答えは単純で移動時間を極限まで減らせばいいという頭の悪い結論。


 そう、転移魔法の存在である。


 今回の任務は全て移動に魔力量が桁違いである響の転移魔法を使い、無理やり引っ張ってきた凪沙の適合能力「暗宙模索ハートレスソナー」で瞬時に索敵、そこを他のメンバーが遠距離用の魔法で不意打ちの一斉攻撃、そうして仕留めたのを確認するとまた響の転移魔法でギルドに戻り次の任務を片端から受注する。


 これが思いのほか効率よく、その速度たるや裏技レベリングとしてまとめサイトに載った挙句、サーバーがそれ目的の人で溢れかえるレベルの効率の良さ。


 単独で行動している討伐目標なら魔法でズドン、マーナガルム種のように群れでいる討伐目標なら範囲攻撃の魔法や響のグレネードなりでドカン、っとあっという間に一網打尽。


 任務数が二十を超えたあたりから全員完全に討伐ハイのテンションになり、その姿たるや単純作業を繰り返す職人の領域に突入した。


 結果、今回僅か一時間で稼いだ任務成功報酬金額はボーナスも含めて希金貨十五枚、金貨三十枚。日本円換算で百八十万円、一人当たり六十万円の計算、一階の任務辺り一万円弱ということになった。





 その翌日、魔導学院にはギルドから大量の討伐任務が依頼されたというのはまた別のお話。

 そしてその度に響が魔力を大量に消耗し、凪沙が能力を酷使したのは言うまでもない。

子供が持っていいい金額じゃないですね

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