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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第四章:魔導学院で色々やるようです
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オーバーキルのお話。

今回より魔導学院編開幕です!

 今日の魔導学院はなんだか落ち着きがない。

 単に今日が新入生が入学してくるから、という理由であれば多少気にはするものの落ち着きがなくなるほどではない。学院に通う生徒たちは皆十六歳以上で日本で言えば高校生に当たる年齢だ、それくらいの年齢になると新入生が来たくらいでざわつくものではあまりない。


 だが魔導学院には今ある噂が流れていた、今回入学してくる生徒たちはスキル持ちが少なくとも十人以上いるらしいと。


 通常、スキルというものは先天性のものでありスキルを持って生まれてくる子供は稀である。事実アリアがスキルを持った状態で生まれたと分かった時は、親族総出で盛大に祝ったという。スキル持ちと言うのはそれくらい貴重なものなのだ。


 それを踏まえた上で今回入学してくる奴らはスキル持ちが十人以上いるというのだから驚かない方がおかしい。もしかすると先輩である自分たちが能力次第では負けるかもしれないのだ、そのためひとたびうわさが流れた瞬間、凄い勢いで学院の生徒たちに伝わった。勿論レイやヴィラやフランにもしっかりと伝わっていたことは言うまでもない。


 それを聞いた時のレイの反応は、


 「いよいよか……いっちょ先輩として気を引き締めないとな」


 と言った感じの如何にも先輩感溢れる正当な感想。


 その相方、ヴィラはと言うと、


 「別にどうってことはないわ」


 とあくまでも冷静に、それでいて確かな闘志を燃やしていた。


 そして大本命である生徒会長フランはと言うと、


 「いやー、面白くなってきたよね。なんせスキル持ち十人だよ十人! しかもヒビキ君緋級魔法使えるしさ、てかもうほとんど使えたりするのかな? アズサちゃんにもまだリベンジしてないからねー、今度は完膚なきまでに叩き潰す! っていったらちょっと聞こえは悪いけどあれ結構悔しかったんだからね!? それとコトハちゃんがあれからどうなったのかも気になるし久しぶりにアリアにもあって抱きしめたいし……まだまだあるよ! えっとねー……………」


 といった風に恋する乙女のようにつらつらと喋り始めて止まらなくなったので割愛。とにかく響たちが入学してくることに対して興味津々だということは分かった。



△▼△▼△▼△



 そして今日、魔導学院の入学式が始まった。

 新入生を歓迎して生徒会長のフランの挨拶から新入生代表としてアクレット魔法学校卒業生のカリスマ性を持つ少女、キュリアの挨拶といった流れだった。

 卒業しても相変わらずキュリアのカリスマ性は失われておらず、彼女を初めて見る魔導学院の生徒たちですら口を半開きにして心酔しているような生徒たちもいた。


 その後二人の挨拶が終わると魔導学院学院長オーハート・ノクスが威厳を持った演説で響たち新入生を釘付けにした。流石は貴族達にも名が知れた知識人、堂々としたその演説は無意識下に響たちを鼓舞させ、魔導学院で学ぶ意欲を高めていった。


 とまあ、入学式は午前中でしかも早く終わり、響たち新入生の授業は午後からなのでかなり時間が開いている。そのためその時間は昼食を取るなり学院内を散策したりなりと自由時間になったので響は梓たちと散策がてら早めの昼食を取ることにした。


 するとテラスのような場所を見つけたのでそこで昼食を取ることにした。メンバーはいつものメンバーで響・梓・影山・マリア・セリアの五人、アリアはキュリアとどっか行ってる。


 そんなテラスにいくつかあるテーブル席に丁度良く席が五つあったのでそこに腰かけて昼食を取っていると数人のヤンキー的な自己中男子生徒たちが来た。


 「うぇーい! よろよろ! え、君可愛くない? 俺らと食わね?」


 「んじゃ俺こっちー」


 「俺この子で」


 こちらの都合も考えずに女子メンバー、つまり梓・マリア・セリアの三人を強引に自分たちのところへ来させようとするが、生憎とうちの女子メンバーはそんなにやわじゃない。


 三人は男子たちの手を払うと低い声で「触んないでくれる」と威嚇。男子たちは自分たちの思い通りにしなかった女子たちに苛立ち声を荒げるもセリアが「申し訳ありませんが、砂利と喧嘩しているほど暇じゃありませんので」と言ったことで男子たちは超絶低い沸点に達する。


 「んっだよ、つまんねえな! このブス共!」


 「あぁ?」


 だがそこで男子たちは致命的なミスを犯してしまった、そう、普段はあまり怒らない響の沸点を一気に上げてしまったことである。


 ガタッと勢いよく椅子を引いてゆっくり上体を起こす響、いきなりのことで男子たちの視線がそちらへと向いた。


 「取り消せ」


 「あん? なんか言ったか?」


 「取り消せと言ったんだよ、ど阿呆」


 「んだとてめぇこらぁ!」


 火に油、男子たちのうちの一人が響に近づくが途中でピタリと体が動かなくなる。お察しの通り響が「ニュートンの林檎」で動きを止めたのだが今回はそれだけではない。


 自分の恋人をブス呼ばわりされたのだ、黙っていられるはずがない。


 男子生徒はもごもごと何か喋ろうと口を動かそうとするが当然ピクリとも動かない、そこへ響が近寄り腹部に一回デコピンを打ち込む。そして顔を上げて男子生徒と目を合わせこう言った。


 「失せろ」




 その言葉が響の口から出たその直後、男子生徒は彼方へと吹き飛んでいった。




 とてつもない勢いで体を学院の壁に打ち付けられたその生徒は「ゴフッ……」と口から血を吐きだしそのままズルズルと床に落ち顔面から地面に落ちる。


 残っていた二人にゆぅっくりと体を向けた響は一度ニコッと笑うとすぐさま二人の体の自由も奪った、ただこの二人には慈悲をかけ口だけは動かせるようにしておいた。


 「何か言い残すことは?」


 「頼む! 謝るから! 土下座でも何でもするから!」


 「なんでも?」


 「そうだ! 何でもだ!」


 「そうか………じゃあ」


 そう言って響は先ほどと同様に二人の腹部にデコピンを一回ずつ食らわせる。その瞬間、男子二人の顔は戦慄の顔へと変わった。そして吐き捨てるように響は言った。


 「二度と面見せんな」


 刹那、二人の口から「ヒッ……」という声が聞こえたかと思うと先ほどの男子と同じ末路を辿った。


 梓たちでさえ声が出ず、ただただポカーンとする中、響は一人だけやり切った表情をしていた。

新環境で響がやらかさない訳がない。

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