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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第三章:魔法学校を卒業するようです
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卒業式のお話。

結構あっさりとした感じになりました


 春うらら、気温も暖かくなり人々の性格も陽気になり始めた今日この頃。日本で三月の下旬に当たるこの日、ラピストリア魔法学校は緊張感に包まれていた。


 この日、響たちはラピストリア魔法学校を卒業する。


 『卒業生が入場します、拍手でお迎え下さい』


 学校長ウィルレイヤードの言葉で在校生が大きな拍手で会場を埋め尽くす、体育館のドアが開き響たちの在籍するAクラスから順に入場していく。クラスメイトが思い思いの考えを巡らせ感慨深くこの雰囲気に浸りながら列になって歩いていく中、響たちは全く別なことを考えていた。


 まず響は「(次何の魔法覚えようかな……とりあえず緋級魔法はクリアして……)」と脳筋キャラのようなことを。

 梓は「(うへへ……卒業式の日まで響の隣とれるとは、私はついてますなぁ!)」と完璧な惚気。

 影山・賢介・絵美里・リナリアの四人は揃って「(だりぃ……)」の一言。

 マリアは誇らしげに鼻を鳴らして歩きセリアはもはや何も考えていない、凪沙と智香の真面目組はきちんとこれからの流れを頭の中で確認しミスズはもはや何も考えていない。


 そして生徒会長アリアに至っては「(みんなでパーッとやりたいな……そうだ、ヒビキ君の家に突撃すればいいか)」などと大変失礼なことを考えていた。


 そんなことなど思ってもいない学校長ウィルレイヤードは淡々と卒業式を進めていき、定番の卒業証書授与から祝電祝分などの大半の生徒がつまらないと感じるエリアを通過し、学校長ウィルレイヤードの挨拶になった。この卒業式で嬉しいことは、日本とは違って校歌の類やPTAからの挨拶などがないことだ。


 卒業式自体はつつがなく終わり、卒業生退場から最後のホームルームなどをやり終えるとしばらく待機になった。卒業するということで友達と一緒に涙を流し合う女子生徒や特有のバカ騒ぎで楽しそうにする男子生徒など様々いた、無論響たちも賢介たちとはクラスが違うためいないがクラスで話していた。


 「なんかあっという間でしたねー」


 「響君たちはそうだろうさ、五年も短いんだから。僕たちは十年だよ十年、長いったらありゃしないさ」


 「そういや先輩は魔導学院に行くんですか?」


 「勿論、ヒビキ君たちもだろ?」


 「ええ、これでも一応、魔王討伐を目標としていますから」


 ケラケラとそんなことを話しながら指示を待っていると、ガラガラと教室の戸が開きウィルレイヤードが入ってきた、その顔は何処か誇らしげで清々しく同時に少しだけ寂しさをも秘めていた。


 「みなさん、廊下に出て並んでください。最後のパレードです」


 その指示で続々と十回生たちが廊下に並びAクラスから校門に向かって歩き出した、廊下では下級生たちが拍手をしながら十回生たちの卒業を祝い思い思いに感謝の気持ちを述べていた生徒たちもいた。


 そして勿論、共に肩を並べて勉学や訓練を競い合った五回生のクラスメイト達もいた。


 「ヒビキー! おめでとー!」


 「セイヤ君ー! また会おうねー!


 「ああマリア様……どうか達者で……」


 「ヒビキこの野郎、アズサちゃんのこと幸せにしなかったら祟るからな!」


 「セリアさんにお世話してもらいたかった」


 などとみんな内容はアレなものもあるが心から響たちの卒業を祝ってくれていた、そんな在校生たちの凱旋門を進み行き十回生たちは校門を出て校庭へとでる。そこには十回生の保護者たちがいたのだが中には見たことのある冒険者の人たちもちらほらといた、その中には魔導学院の生徒の姿も。


 「お、来た来た。お疲れ」


 「レイさん、ヴィラさん。お久しぶりです、来てくれたんですか? ていうか学院の方は?」


 「サボったわ」


 「サラッと言いましたね!?」


 「別にいいのよ普段ちゃんとしてるから。それに、私たちよりほんとは来ちゃいけない人も来てるし」


 ほら、とヴィラが見る方向に目をやるとそこにはフランの姿があった。フランはすでに十数人の生徒たちに囲まれておりまるで有名人のような扱いを受けていた、いや、有名人には変わりないか。


 フランの周りの生徒たちは一種の宗教の信者たちのように崇め奉る者や、ごくごく純粋にファンのように見受けられる者などがいた。フランは響に気づくと生徒たちに「ごめんね」と言いながら響の方へと近づいてきた。


 「ふう、やっと抜けられた。卒業おめでとう、ヒビキ君」


 「ありがとうございます。ヴィラさんにも聞きましたけどいいんですか? 学校サボってきて」


 「いいのいいの、なんかあったら黙らせるだけだから」


 ケラケラとフランはそう笑って見せるが響やヴィラからしてみればクスリとも笑えない、ブラックというかなんというか、実際にそれが出来るだろうから怖い。ジョーク半分で言ったのかも知れないがリアリティがあり過ぎてジョークとも捉えられなくなっていた。


 「あ、そうだ。アズサちゃんはどこにいるのかな?」


 「アズサならその辺にいると思いますけど……」


 「ん、ありがと」


 そう言うとフランは響が指さした方向へ一目散に小走りで行ってしまった。なんとなく嫌な予感がしたがまさかそんなことはないだろうとヴィラと最近のことについて軽く話していると、梓がいるであろう方向から「キャー!」という声が聞こえ、ヴィラと二人してそちらを見るとフランと梓が刀の刃を交わらせてお互いを睨み付けていた。


 本来なら二人もそちらへ行って止めに行くべきなのだろうが、二人はそうしなかった。響とヴィラの意見は、「どうせあの二人なら死にはしないだろう」という何も根拠のないものだったが、恐らく下手に止めに行くよりは黙って見ていた方がいいと思う。もしかすると死にかねない。


 「ははははは! いい反応速度だ! 腕を上げたねアズサちゃん!」


 「そりゃもうゴールド冒険者ですから、それに、まだ響に勝ててませんから!」


 「………今思ったんだけどさ、止めなかったら他の生徒たちに被害いきそうじゃない?」


 「そうですね、止めますか」


 結局響がお決まりの「ニュートンの林檎」で強制的に動きを封じた、それでも二人の力は凄まじく少しでも気を緩めると解かれてしまいそうだった。


 興奮状態の梓をどうにかしてなだめどうにかその場を収めることに成功した。

 


 「すぐそうやっておっぱじめないでください。どこの戦闘民族ですか二人は」


 「反省してます」


 「申し訳ない」


 響は梓とフランの前に立ち説教を始める、二人は人目を気にすることなくその場に座りしょんぼりしながら響の説教を聞いていた。

 きっとその光景は異様だっただろう、なんせ数十分前に卒業したばかりの生徒が魔導学院の生徒会長と同級生を叱っているのだ、傍から見ればさぞ理解に苦しむことだろう。


 レイも何かあったのかと思いこちらへとやって来たが響が二人に説教しているのを見て小さく「あぁ……」と何か諦めた感じの目をしていた、一応ヴィラに確認を取ってみるがヴィラも「みりゃ分かるでしょ、そういうことよ」と察しろと言わんばかりの答えをレイに返し、それを聞いたレイもそれ以上余計なことは詮索しなかった。きっと何かを察したのだろう。


 その後、マリアの家、もとい豪邸でフランたちも交えたちょっとした祝賀会を開き、またしてもフィラデリアさんの手回しで泊まることになり大所帯でのお泊り会となった。


 その際に眠くなって馬鹿みたいに可愛くなったマリアを見れたこと、そして響の隣で心底幸せそうな顔をして磁石のように響に密着して眠る梓を見れたことが最近の中で一番の癒しだと響は梓の温もりが感じる布団の中でしみじみ感じていた。

次回からはキャラクター紹介を挟みながら魔導学院編にしようと思っています

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