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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第三章:魔法学校を卒業するようです
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お誘いのお話。

響がリナリアに相談した日のお話、梓と響が王都のイベントに行く前の裏話的な。

※リナリア視点の話です。

 「それで、相談とは一体」


 「あ、うん、その……ね」


 私は今、友人であるアズサから相談事を持ちかけられている。全く、なんでみんな真っ先に相談するのは私なのだろうか、彼女ならヒビキが相談相手になってくれると思うのだが。……まあそんなことはどうでもいいとして。さっきから一向に話を切り出さないな、何かあったのだろうか。


 「相談事を言ってくれないと、そもそもの相談に乗れないのだが」


 「あぁうん、なんか恥ずかしくって」


 恥ずかしい……となれば女性的な悩みか。なるほど、ヒビキに相談できないのも頷ける。しょうがない、これでも女神の一柱だ、やってやろうじゃないか。


 「別に恥ずかしがることはないだろ、人間誰しも悩みを持つもの……それがどんなものでも私は親身になって相談に乗ってあげようじゃないか。これでも女神だからね」


 「リナリアちゃん……」


 「それで? その相談事とは一体何なんだ?」


 「………その、響のことなんだけど」


 これは驚いた、まさかあの少年のことだとは。ミスズが何か吹き込んだのか……? いや、あいつは正面から堂々といくタイプだ、そんな搦め手を取るやつじゃない。すると彼女自身が最近思っていることか……。


 「なんだ、惚れたのか?」


 「うぇえ!? いや、その惚れたっていうか改めて認識したというかそのーなんといいますか……」


 ビンゴだった。先ほどから顔を赤くしていたからもしやと思ったがまさか的中していたとは。自分の力も馬鹿に出来ないものだな。


 「恋愛相談ね、私はあまりそういう経験はないが、アドバイスくらいならどうにか頑張ってみよう」


 「ありがと、リナリアちゃん」


 「まず教えてほしいんだが、なんだ、どういう経緯で今の悩みを抱えたのか聞かせてくれるか」


 「元々、日本にいた頃からちょっと気になってはいたんだけど、幼馴染だし、なんかあったら気まずいしとか思ってたらこんなことになっちゃって」


 「それで?」


 「最近任務とか戦闘系のところに行くこと多くなってきたじゃない? その時響、自分のことでも手一杯なのに心配してくれるし、私のこと気にかけてくれているのかなーって」


 「ふむふむ、んで?」


 「昔から響っていっつも私のこと心配してくれたり気を使ったりしてくれて優しくて、そういう時の響見てるとなんかこう、胸が締め付けられるっていうか、苦しくなる時があって。自分でもいつこうなったのかよく分からないんだけど……」


 「あー、つまり今の自分の状況がよく分からないけど、ヒビキに対して恋愛感情的な何かを感じてるからどうしたらいいのかってことか?」


 「んまぁ、そういうこと、かな?」


 しまった、完全に管轄外だ。あんまり経験ないとか言ったけど全く経験無いを見え張っただけだ。ふーむどうしたものか、とりあえずはアドバイスかな。


 「だったら確かめてみればいい」


 「確かめるって?」


 「今度の週末に、王都の方でイベントがあるらしいんだ。地球で言うとこのくりすます?というやつに当たるらしい、アザミから少しだけ聞いた」


 「クリスマス……か……」


 「アザミの話によれば、仲睦まじい男女がキャッキャウフフする日だと聞いた」


 「間違ってないけど語弊がある気が……」


 「最近ヒビキも疲れているようだし、ここで彼の疲れた心を癒して楽しくお喋りでもしていい雰囲気になったらヒビキも君のことを意識するんじゃないかな」


 どうだろう、ちょっと無理があったか?

 ええい、もうどうにでもなれ。


 「折角だし行って来ればいいんじゃないか? きっと君からの誘いなら喜ぶだろう」


 「でも、何もなかったら……」


 「ええいまどろっこしい! 言わなきゃ何も始まらんだろうが!」


 「り、リナリアちゃん!? キャラが違うよ……!?」


 「とにかく! 今週末君はヒビキと一緒に王都のイベントに行ってこい! そこで自分の気持ちを伝えてこい! 女神の権限で拒否は許さないぞ!」


 うじうじ悩むよりも、直接言った方がいいに決まっている。長年の幼馴染なら今更どうにもなるまい!


 「分かった! 私、行ってくる!」


 「いい返事だ。待ち合わせ場所はグラスベル公園、地図は渡すからそこに行け」


 「なんでそこなの?」


 「デートスポットとやらだからだ」


 「デ、デートスポット……」


 「安心しろ、きっと奴はその公園の存在すら知らんだろ。君の方から言えば素直に……」


 ん……? この感じ……ヒビキか!?女神の直感で分かる、間違いない、ヒビキがこちらに来ている。早いとこ終わらせねば。


 「どうしたの? 急に黙って」


 「ヒビキがこっちへ来ている」


 「なんで分かるの」


 「女神の勘だ。とりあえず、恐らくヒビキはここに来るだろうから、相談事ならそれとなく引き受けてそれとなくこの話題に触れておく、それとアズサはこれを持っていてくれ」


 「これは?」


 「通信石だ、あとでこれに通信をかけるから音が鳴ったら壁とかに一回こつんとやれば繋がるはずだ。私がうまく彼を誘導しておくから、ヒビキに週末のことで誘われたらグラスベル公園を待ち合わせ場所に指定するんだ、いいね?」


 「わ、分かった」


 「よし、じゃあ行け」


 「ありがとう! リナリアちゃん」


 タッタッタ…………


 ふぅ……行ったか。少々強引だったがなんとかはなっただろ。さて、後はこっちだな。


 「やぁヒビキ、疲れているようだね」


 「……リナリアか」


 「まあこっちきて座りなよ」


 それから十数分後――――。


 「そか。じゃあまた明日な」


 タッタッタ―――。


 ……行ったか、さてと、報告だな。


 コンコン……


 「やぁ、私だ。予定通り上手くいったよ」


 『ちゃんと誘ってくれるかな?』

 

 「ああ大丈夫だ、彼ならきっとそうする。自信を持て、彼を一番知っているのは君だろ、そして君のことを一番知っているのも彼だ」


 『うん、そうだよね。誘われなかったら私から行けばいいもんね! 響とリナリアちゃんを信じるよ!』


 「そうだ、信じて待っていろ、これでも女神だ」


 『ありがと、じゃあまた明日!」


 「ああ、じゃあな」


 あぁー……疲れた、恋愛相談がこんなにも疲れるとは思わなかった。だがまぁ、上手くいってくれるといいな、これだけ苦労したんだから上手くいってくれなきゃ困る。


 ……情でも移ったのかな、私は。

 ったく、これでアズサが泣いて帰ってきたら許さんぞヒビキ。

 本当に疲れた、さっさと帰って休むか。


 「リナリア―!」


 「ミスズか、今帰りか?」


 「そうだよー」


 「ちょうどいい、私も帰るところだ。一緒に帰ろう」


 「もっちろん!」


 だがまぁ、たまにはこういう日も悪くない、か。

リナリア「女神に恋愛相談ってどうよ」

作者「別にいいだろ、話進みやすいし」

リナリア「私はご都合主義キャラだとでも思われているのか?」

作者「最近そうなりつつある」

リナリア「…………そうか」

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