表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
序章:現実世界に異変が起こったようです
6/221

銃と重力のお話。

適合能力×魔法=チート

※魔法学校と魔導学院の通学年数を変更しました、話の進行には支障ありませんのでご安心ください。

 「じゃあお母さんたちは居間にいるから、何かあったらおいでね~」



 飲み物とお菓子を置いてガチャリとドアが閉まり、部屋に三人が再会した形になった。



 「んじゃぁまあ、まず再会を祝して乾杯!」

 「「乾杯!!」」



 グラスがぶつかって、カチャンと音が鳴る。

 二歳児たちが揃いも揃ってグラスもって乾杯するというのは中々にシュールな光景だ。



 「まさかこんな感じで会うとは思わなかったぞ、お前ら」

 「私もだよ。にしても、本当に二人ともちっちゃくなってるから笑っちゃうよね!」



 梓がお菓子をつまみながら、ケラケラと笑ってそう言う。

 


 「そりゃこっちもだぞ? っていうか、響ん家道場だったんだな、しかも有名らしいじゃねえか。母さんが言ってたぜ」



 こちらも同じく、お菓子を食べながら感想を口にする。どうやら二人とも、性格は変わっていないみたいで響は安心した。

 もしこれで「どちら様でしょうか?」という感じの正確になっていたらどうしようかと思っていた。



 「二人とも変わってないみたいだな。そういや、お前たちの名前って、今どうなってるんだ? 俺はヒビキ・アルバレストってなってるけど」



 まさか自分だけ変わっているなんてことはないはずだ。

 もしかしたらミドルネームとか入ってるかもしれない。



 「私はアズサ・テロル・ゼッケンヴァイスってなってるよ。長いから覚えづらくって」



 本当に入ってんじゃねえかミドルネーム。

 ちょっとフラグ回収早すぎやしませんかね、俺別にフラグ建築家とかじゃなかったと思うんだけど、と響はジュースを飲みながら思う。



 「俺は影山聖也改め、セイヤ・フォルテインだ」



 よかった同じだ、同じ感じの名前だ、と響は安堵した。



 「なんで遊佐は一個多いんだよ、名前」



 カレンといいこいつといい、なぜ俺の周りの人たちはことごとく俺の考えを読んだかのように発言するのか響は不思議でたまらなかったが自分で聞く手間が省けたのでまぁ善しとする。



 「よくぞ聞いてくれた影山君! 何を隠そう実は私の家はいわゆる貴族っていう家系らしくて、名前が一個多いのですよ。分かったかな一般庶民よ!」



 フフーンと、鼻息を荒くして自慢する幼馴染。よし、後で魔法の的にでもしてやろうか。にしても貴族の娘か……。こいつの代で、貴族から平民になるんだろうなぁ……。



 「響。今なんか失礼なこと考えなかったかな?ん?」

 「イエナンデモアリマセン」


 実際失礼なことしか考えてなかったんだけどなと響は飲み物をすすって、平常心を保つ。

 これも予想していたことだがやはり貴族というものはこの世界にはあるらしい、影山は響と同じ名前の感じから察するに恐らく身分的なものは一緒だろう。

 



 「あ、そうだ! お前らさ。能力とかどうなってる? 俺結構いい具合になってるぜ!」



 影山がいい具合に話を逸らしてくれた。

 そういや忘れていた、使う機会がなかったからうっかりしてた。



 「私は包丁とか短い剣くらいならパパッと作れるよ。手から刀出せるし。ほら」



 と言って、梓は手からにゅっと刀の刀身を作り出した。というか生えた。

 本人は痛みとか違和感は特に感じないらしく、平然としていた。



 「俺は色々作れるぞ。ナイフとか色々。あとこの前、トンファーも作ったし」



 これでも響は魔法の練習の合間にちょいちょい試していた。

 本格的な武器はまだ試したことはないけど、恐らくはもうそろそろ作れるだろう。



 「いいなあお前ら、俺なんて結構シンプルで、凄いのかどうか分からないし」

 「具体的にはどうなんだよ。もったいぶってないで」

 「壁キックとか?」



 十分じゃねえかと響は口に出したがよくよく考えてみれば壁キックできる二歳児とか物凄く異様で怖いんだろうなと発言してから思った。

 その後、互いの近況報告とか、魔法がどうのしきたりがどうだの他愛もない話をしたりなんだかんだしているともう午後五時だった。梓と影山のお母さんたちが部屋に来て、お邪魔しましたと一言言って帰っていった。

 エミルも久しぶりにお喋り出来て楽しかったのか、ちょっと機嫌が良かった。




△▼△▼△▼△



 あれから、毎日訓練をして、魔法も中級魔法まで使えるようになってきた三歳の頃。

 そろそろ頃合いかと思って、本格的な武器を試すことにした。



 今まではアザミのスキルがあったとはいえども、運動も何もしていない未熟な子供だった。

 現在もまだ三歳で、未熟な子供なのには変わりないのだが訓練や魔法の練習で少しは体力も力もついてきているはずである、むしろそうでなくては困るというもの。



 軽量の武器なら作れることはすでに分かっている。

 だがこれから先、戦闘とかになると心許ない。もっと威力があるものを作れないと駄目なのだ。



 というわけで響は重量があって威力があり尚且つ分かりやすく強い武器、すなわち銃を作って撃ってみようかと思い立った。

 三歳の子供が銃を撃つというのは本来なら考えられないが、中身的にはもう転生した時から三年経っているからもう二十歳になってしまった響。

 漠然とした自身とちょっとした期待感を密かに胸にしまいながら響は父親のクラリアの元へ一度立ち寄った。



 「庭に行ってきます。父様」

 「行ってもいいけど、怪我だけはするなよ?」

 「もちろんです父様」



 そう告げて、響は道着のまま道場の玄関にある下駄を履いて庭へ出た。



 「んじゃあやりますかね」



 響は特別、銃に対する知識が多いとかそういうわけではない。だがFPSとか動画とかで有名なものや名前だけ聞いたことがある物、それからガンアクション漫画などに登場するものくらいならある程度は知っている。

 それに男の子は銃とか剣とかそういう武器関係に少なからず興味を持つ生き物なのだ、いわゆるロマンというやつだ。



 軽く息を吐いて、何を作るか決める。マグナムとかの反動が大きいものは流石に作れても撃てないだろうから除外する。撃った反動で肩が外れたら親からなんて言われるか分からない。

 


 そうだ、と響は確かデリンジャーという小型の銃があったのを思い出した。

 正式にはレミントン・デリンジャーだったか、服の袖とかに忍ばせられる小さいハンドガン。

 あれならば普通に撃てるだろうし、撃ってみた結果で他の銃も撃てそうか否かを判断しようと響は考えた。



 今までと同じように、銃が手元にあるようなイメージする。

 能力事態に響は慣れていたため、結構すんなり作れた。

 作成した、もとい記憶から複製されたデリンジャーは響の記憶通りの形をしており、ありがたいことに全弾装填済みの状態だった。



 的代わりに庭に生えていた数本の木の中で幹が太く狙いやすそうなのを選び、銃を両手で真っすぐに構えて、足を少し開いた。

 そして木の幹の真ん中に狙いを定めて引き金を引いた。


 パンッと乾いた小さい音を出して、木の幹に穴が開いた。

 どうやら人生初の射撃は成功したようだ。

 反動も全くないためこれなら他の銃も試せるだろうと響は確信した、もしかしたらこれがただ単にそんな反動がないものなのかもしれないが、今は素直にこの成功を喜ぶべきだ。



 次はベレッタを作った、やはり全弾装填されている状態で複製されていた。

 先ほどより少し離れて引き金を引く。さっきよりも大きな音を響かせて、幹の端を掠めていった。

 アザミから貰ったスキルのおかげで身体能力が強化されているため反動もあまり無く連射も少しくらいなら出来た、中々上出来ではないだろうかと響は喜んだ。



 「削除」



 響は銃を消して、木に開いた穴を見つめた。これでとりあえずの戦力は確保できただろう。

 今度はバトル漫画のように、右手を下から勢いよく振り上げながら銃を作って撃つ。作る速度もどうやら早くなっているみたいで、スムーズに発射までの動作を済ませることができた。


 色々とパターンを試したが、銃がジャムることもなく、実験は大成功に終わった。腕も疲れてないし耳もおかしくはなってない。



 「ヒビキー。そろそろ昼にするぞー」



 道場の方から父が呼ぶ声が聞こえる。銃を削除して早足で家の中へ戻る。



 「なんかさっき破裂音みたいの聞こえたんだけどお前なんかやってた?」

 「あ、えと………き、木の近くで素振りやっていたので当たったんじゃないかと思います!」

 「そうだったのか。なんだ偉いじゃないか」



△▼△▼△▼△



 それからは、訓練して魔法と能力の勉強の繰り返しの日々だった。たまにあいつらと会って、愚痴を聞いたり愚痴を言ったりして。

 そんな毎日が続くこと早三年。六歳になった響は、もうすぐ魔法学校に入学するという時期に差し掛かった。この世界の学校は、基礎を学ぶ「魔法学校」と、その先のより上位の魔法を学ぶ「魔導学院」とで分かれている。

 魔法学校の方は誰でも入学できるが魔導学院の方は、魔法学校で成績が優秀だったものと、貴族などのお偉いさんたちの子供しか入れないらしい。貴族たちは自分たちの見栄のために入学させることが多いとかで、梓は入学が確定している。


 ちなみに魔法学校の方は六歳から入学して十年間通い、魔導学院は六年通う。小学校と中学校がそれぞれ倍になった感じだ。カレンは現在十七歳で魔導学院主席卒業候補の一人だという。

 思えば訓練で響は一度もカレンに剣を当てることが出来なかった。

 そしてすでにこの頃には影山と梓の二人とも能力をある程度使いこなせているが魔法はまだ中級までしか使えないらしく、響はもうすでに上級の一部までは使えていたので、両親が揃いも揃って「流石うちの子だ!」って言いながら親バカ炸裂していた。



△▼△▼△▼△



 入学当日の朝、いつもより少し早く起きて能力の確認をした。

 昨日の夜に疑問に思ってそのまま寝てしまったとある実験を試そうと思い至ったからだ。

 響はおもむろにベレッタを作って床に放り投げ、床に着く寸前で手に力を入れてみる。



 するとビタッと銃が宙に浮いてその場で動きを止めた。

 本で読んだ空間魔法の応用が記述されていた箇所に、物体の重力・浮力・引力・斥力を操るというものがあったのを響は昨晩思い出していた。

 それをバランスよく操ると予想通り、物体を宙に浮かせることに成功した。浮かせた状態から手元に引き寄せて、腕の周りをぐるぐるさせたりも出来た。

 この魔法自体はただの応用現象だったので固有の名前は無い。



 なのでとりあえず、重力を発見した偉人とその際に重力を発見した原因となった果実になぞらえて「ニュートンの林檎」と名付けた。魔法っぽい名前ではないが、響は個人的に気に入っている。



 魔法学校に入学したら全員と再会できるだろうか。

 人族だけじゃなくて他の種族の奴も来るとカレンから響は聞いていた。

 そういえばカレンは学院を卒業したら騎士団に入るとかって言ってた。そういう職業もやっぱりこの世界ではあるんだな……というか、響たちはそれよりも重要な役割になってたか、すっかり忘れてた。

 まあこれからどうなるかか。魔物すら見たことない上に訓練以外では戦闘も経験してない。それらひっくるめて今日からの学校生活にかかってるわけだ。

 そう考えると何故かやる気が出てきた。



 今の能力の出来と覚えた魔法がどれだけ通用するのかも響にとっては楽しみで仕方がない。

 俺は案外こういう戦闘が好きなのかもしれないなとしみじみ思う響だった。

次回から魔法学校編になります。

例によって表現が安定しなかったり堅苦しいところが多々あります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ