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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第三章:魔法学校を卒業するようです
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狼狩りのお話。

二度目の上級魔物戦

 閃光でまだ怯んでいるマーナガルム種目がけて響とフランの魔法が炸裂する、先ほどまで獣族の冒険者の二人を貪っていたため三体とも同じところに固まっていたので狙いを定めるのは容易だった。


 着弾と同時に土埃が辺り一面を包みマーナガルム種の姿が見えなくなった、響とフランは自身に防御魔法をかけて様子を伺った。しばらくすると土埃が晴れてマーナガルム種の姿があらわになる、見ると三体いたうちの一体の胴体にパイルオープニングの巨大な杭が突き刺さり、もう一体はセレーネプロクスが当たって首が切られて即死していた。唯一無事だった一体はあの一瞬で十数mほど遠ざかって響たちの方を睨んでいた。


 「ナイスだヒビキ君、よく当てた」


 「でもまだ息があります」


 響はそう言いながらパイルオープニングをもう一度展開して身動きが取れない一体に新たに一本突き刺した、地に伏しているマーナガルム種の一体が悲痛な叫び声を上げる、響はそこへもう一本飛ばしそれが頭部に突き刺さり頭部が炸裂した。


 「結構無慈悲だね」


 隣のフランが意外そうな目で響を見る、もう少し殺すことに躊躇いを持つ方だと思われていたようでまさか簡単に頭を粉々にするとは思っていなかったようだ。


 「なんか慣れてきまして。そりゃ最初の頃はキツかったですよ」


 「その年で慣れるのはちょっと早いと思うけど、私もそうだったから人のこと言えないなー。まぁいっか、あと一体! さっさと終わらせよ」


 「分かりました」


 そして響とフランが生き残ったもう一体に向かって走り出す、アリアたちは褐色肌の女性冒険者を救い出していた。これで心置きなく戦える、そう思った響だが何か嫌な予感を感じ取った、こういう時の響の嫌な予感は結構当たるのだ。


 その予感が的中したのか生き残ったマーナガルムが「ウオオオオオオオオオオオォォォォォ………」と遠吠えをし、その直後至る所から同じような鳴き声が次々と聞こえてきた、それを聞いたフランが足を止め「まずい……」と呟く。


 「ヒビキ君! あの残った一体を頼んでいい?」


 「分かりました、でも何が……」


 「説明はあとで! アリア! そっちは任せたよ!」


 「了解です!」


 響はその場をフランに任せ生き残ったマーナガルムの処理に向かう、マーナガルムも響を迎え撃つように咆哮を上げる。マーナガルムは一足地を蹴ると急激に加速して一気に響との距離を詰め目の前に現れる、響は急ブレーキをかけて防御魔法を発動させる。


 「シュルツ・パトロン!」


 緋級単体防御魔法「シュルツ・パトロン」、寸でのところで響の目の前に横数mに広がる一枚の障壁が展開されマーナガルムの攻撃を防ぐ。マーナガルムは即座に体を翻して再度突進するも障壁に阻まれ響に届くことはない、何度やってもその突進は響の目の前でガンガンとぶつかる音がするだけで一向に何も起こらない、響はその隙に「兵器神速ノア・ウェポン」でごっついガトリング砲を四基作りそれを「ニュートンの林檎」で浮かべてひし形に空中で並べ銃口をマーナガルムに向ける。


 四基のモーターの駆動音を聞いた時、野生の勘が働いたのかマーナガルムがバックステップを取り距離を取ったが残念なことにそこはもう射程圏内に入っている。

 一基につき六本、四基で二十四本付いた銃身が回りそこから一瞬にして大量の弾丸がマーナガルム目がけて発射される。


 ゴアアアァァァァァ!!


 無数の弾丸がマーナガルムの全身を撃ち抜き上級魔物であるマーナガルムを絶命させた。

 キュゥゥゥゥ……と音を鳴らしながらガトリング砲が止まり、停止したガトリング砲を響は背中の辺りに翼のように左右二基ずつ浮かせていつでも攻撃できるようにしておいた。


 一方フランは見たことない黒い鎧を両手両足に身に纏って黒い武骨な刀を一振り手にしていた。響がその圧倒的な存在感に飲み込まれそうになり思わず声を漏らした。


 「フランさん……?」


 「凄かったじゃないか! あんなの私初めて見たよ! カッコいいね、それはあれなの? あの動きを止める魔法でやってるの?」


 ただその存在感を掻き消すかのように初めて見る現代兵器に目を輝かせて響にずいっと迫るフラン、「ええまあそうですけど……」と響がちょっと後ろにのけ反りながら返事をしているとどこからかマーナガルム種の鳴き声が聞こえてきた。それが聞こえた時フランの顔つきが狩人のそれになった。


 「さてと、じゃあお仕事だね」


 フランは体勢を元に戻し黒い刀を担ぐように持ち直して左を向くとそこには十数体のマーナガルム種が群れでこちらを見ていた、その目つきはまさに殺された仇を見る目だった。


 そしてフランは体勢を低くして走り出す。その速度は影山が能力を使った時と匹敵するかそれ以上かの速度でボコボコの岩場を走り抜けた。


 それに呼応するかのようにマーナガルム種も群れでフランに走り出す、俊足と俊足がお互いに獲物を見据えながら対峙する、フランは手にした刀を一閃すると刀の刀身に触れた個体は勿論のことその一振りで発せられた衝撃波で横の個体や後ろの個体まで真っ二つに切り裂かれた。


 「すご……」


 あまりの凄さに響は思わず見惚れてしまった、戦闘中でしかも上級魔物相手に単独行動している仲間を目の当たりにして心配ではなく感嘆の念が込み上げてきてしまったのだ、響だけではなくその後ろにいるアリアたちもそのフランの戦っている姿に釘付けになる。


 フランはそんなことは露知らず次々に巨大な体を持ち俊敏に移動することに長けたマーナガルム種を剣筋に反応させる間もなく切り裂いていく、群れに単騎で突入したにもかかわらず一度も攻撃に当たることもなくものの数分足らずで全滅させてしまった。フランの衣服についた血は彼女のものでなく全てマーナガルム種を切り殺した時のものだった。


 「そっちは大丈夫かーい?」


 数十m離れたところから大声で響たちの方に安否確認を手を振りながら問いかける。響が大声で「大丈夫でーす」と返事をすると先ほどの速度で戻ってきた。


 「なんですか、その魔法」


 「ああこれ? どう? かっこいいでしょ」


 「かっこいいですけど……」


 「フランさん、いつの間に覚えてたんですか? それ、壊級魔法でしょう?」


 マリアたちを引き連れたアリアが呆れ半分でフランにそう言ったのを聞いてフランとアリア以外の面子が息を飲む。


 「壊級魔法って、あの壊級魔法ですの!?」


 みんなの気持ちを代弁するようにマリアが驚愕の声を叫びフランに問いかけるとフランはにこっと笑いながら「そうだよ」と平然に答えた。フランの言うところによると壊級魔法はこの手にしている黒い刀だけだが両手両足についている鎧は緋級魔法らしいのだが、この鎧を作る魔法はアリアが言うには緋級魔法の中でも上位に入る難しさだと言った。


 さらっとこういうことをやってのけるあたり、【神童】の二つ名は伊達じゃないと褐色肌の女性を除く全員が改めて認識した。


 「今は別に私のことはいいでしょアリア、それよりも」


 フランは褐色肌の女性冒険者の方を向き安否を尋ねる、その冒険者はハッとしたように目を丸くさせて声を詰まらせながら言葉を返す。


 「は、はい。助けていただきありがとうございました」


 深々と頭を下げるその女性はその後自己紹介をした。


 「私は獣族で冒険者をやっていますソル・リーハウンナと言います。階級はシルバー」


 ソルと名乗ったその女性は再びお礼の言葉を言いながら頭を下げた。その目には生きていられた安堵感と仲間を失った喪失感からうっすらと涙が浮かんでいた。

他種族とのまともなコンタクト

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