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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第三章:魔法学校を卒業するようです
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マーナガルム種のお話。

テイストはスレイプニル種の時と同じ感じです

 「今までの私の経験から、色々と教えておくことがあります」


 フランは岩場に隠れて声を潜めて響たち四人に自身の経験からくるマーナガルム種と戦う時の対策を講じた。響たちは小さい声でも聞き取れるように顔を寄せ合いフランのその対策を聞くことにした。


 まず、マーナガルム種は見た目通り狼型の魔物だ。常に群れで行動し今回のような三体というのは少なく普通なら五体以上、多い場合では十体から二十体以上の群れで行動するため、マーナガルム種の討伐は基本少なくても五人以上で行うのが暗黙の了解となっている。

 マーナガルム種は全身の発達した筋肉のおかげでかなり俊敏に動くことが可能になり嗅覚や聴覚も優れ、常に群れで行動していることから集団戦闘にも長けており、もし単独で群れに遭遇したら手練れの冒険者でも数分凌げるかどうかといったところだという。


 そのためマーナガルム種と戦う時は必ず一体ずつ相手にしてなるべく集団で行動させないようにして戦うのがセオリーである。

 以上のことを響たちはフランからレクチャーされ、次にこの五人の中でさらに人数を分担して各個撃破を狙うことにした。上級魔物初挑戦のマリアとセリアはフランが守りながらさらにアリアのゴーレムを二体ずつ二人につけて陽動を行い、響とアリアが主力部隊として叩くという流れになったのだが。


 「フランさん、一つ提案していいですか?」


 「ええ、それは良いけど」


 「ヒビキ君のスキルを考慮したら、別の戦い方も出来るかと」


 「ヒビキ君スキル持ちなの!?」


 ただでさえ距離が近いのに驚いて余計に響との顔の距離が近くなって鼻先が触れようとしていた、響は若干引き気味に「は、はい……」と答え頷くとすぐさまフランは「どんな!?」と言って子供のように興味を示した、年齢だけで言えばもうとっくに成人している年齢でだ。


 「フランさん、落ち着いて、あなた誰よりも先輩でしょ」


 「先輩って言ってもアリアより二つ上なだけでしょ?」


 「フランさんって、魔導学院二回生なんですか……?」


 「うんそうだよ、言ってなかったっけ?」


 前言撤回、成人してませんでした。ということはアリアが十六歳でその二つ上だから……今で十八歳!?

 質問したマリアも口をあんぐりとさせて驚きセリアと響も信じられないような表情をしていた、てっきり最高学年かそれより一つ学年がしたくらいだと思い込んでいたがまさかまだ二回生だったとは。


 「んで? ヒビキ君のスキルってどんなのなのかな」


 ああそう言えばそうだった、フランのことが意外過ぎてすっかり忘れていた。


 「俺のスキルは『記憶にある武器の複製』です」


 「複製?」


 「はい、一から作るんじゃなくて、すでに実在している者をコピーするっていうものです」


 「強いね」


 フランの顔つきが真面目になり口元に手を合てて少し考える、そしてフランは響にスキルのことをもう少し詳しく教えるように頼み響はそれに答えた。銃についての説明もざっくりと音速を超えた弾丸を撃ちだす武器と言ったり爆発物を作れるなどと言うと「なるほど」と言って再び作戦を響たちに伝えた。


 「作戦変更だ。アリア、マリアちゃんとセリアちゃんのことは任せた。ヒビキ君、私と一緒に奴らを叩くぞ、速攻で片づける」


 「了解」


 「これは、真面目にやらないと駄目だね」


 「大丈夫です、お嬢様は私が守ります」


 「そう簡単には死んでたまりますか、セリアも気を付けるのですよ」


 メンバー分けが決まったところで次に作戦、これは単純に響とフランが主要部隊としてマーナガルム種を各個撃破、アリアたちはそれをスムーズにするためのバックアップ部隊ということにした。


 「ヒビキ君、爆発物で不意打ちとかしかけられないかな」


 「出来ます」


 そう言って響は手の平に手榴弾を一つ作りだした、正確には記憶からの複製だが。この手榴弾で背にしている岩の後ろにいるマーナガルム種に向けて投擲しようと一度ちらっと向こうを見る。幸いにもまだ気づいてはいないようだ、いや、もしかしたら気づかれた上で相手にされていない可能性もあるがそのような懸念は今のところ置いておくことにする。


 全員と目配せをして後ろに手榴弾を投げようとしたその時。


 「獲物発見! おら行くぞお前ら!」


 遠くから軽装でやって来た獣耳が生えた褐色肌の男が大声で走ってやって来た、その声に気付いたのか響たちと同様、マーナガルム種もそちらを見た。


 「ちょっと待てって、お前早すぎ!」


 まるで海に来たチャラチャラした若者のような風貌の獣耳の男がもう一人やって来て、その後ろから褐色肌の気の強そうな女性が走ってやって来た。


 「あんたら! 一回頭冷やしなさい! マーナガルム種に三人で勝てるわけないでしょ、しかもその装備で! 私たちまだシルバーに上がったばっかりだってのに」


 「お前なぁ俺らは獣族だぜ? 力に長けた種族の俺らがあんな犬っころ相手に負けるかよ」


 「そーそー、どうせ上級魔物っつっても大したことねえだろうよ。この前じゃ、スレイプニル種を餓鬼が倒したって話だってあるんだ、なら俺らでも行けるさ」


 褐色肌の女性とは対照的に超が付くほど楽観的に上級魔物を舐めている様子の獣族の男性二人。響はこの感じ、前にもあったなと何となく思いながらその獣族の冒険者のパーティーの方を見ていると後ろから振動と低い唸り声が聞こえた。

 恐る恐る岩場から顔を出すと、三体のマーナガルム種がその三人に向けて移動し始めたのだ、フランとアリアもこれはまずいと思ったのかその場から離れる。マリアとセリアも三人にとりあえず付いていき違う岩場に隠れて様子を伺っていた。


 マーナガルム種がこちらに向かっているのに気が付いたのか獣族の三人がそちらへ向き直り余裕を見せながら軽い戦闘態勢を作る。そのまま何も考えていないのか見たところ中級魔法程度の魔法を普通に撃ちだした。


 響はその時、明らかに嫌な予感がして、咄嗟にマリアをギルドの時とは逆に自分の胸の方に埋めさせた。


 「んむぅ!? ヒビキ!? せ、積極的なのは嬉しいのですがこの状況では流石に恥ずかしいと言いますか……」


 「何言ってるかよく分かんないけどそのまま顔を上げるな、絶対にだ」


 「どうしたのですか……?」


 「マリアには、まだ早い」


 その時だった、三人組のいる方向から悲鳴が聞こえたのは。


見るとチャラ男の一人が上半身を吹き飛ばされて下半身が地に伏して、もう一人の男は腹部を食い千切られて即死状態になっていた。


響は手にしていた手榴弾を消してスタングレネードを作りその方向目掛けて投げ飛ばした。


「目ぇつぶれえぇ!」


響のその叫びに気付いたのか褐色肌の女性がぎゅっと目を瞑って全身に力を入れる、マーナガルム種もその声に気付き響たちの方を見るのだが少し遅かった。


スタングレネードが女性とマーナガルム種との間に落ちて閃光をほとばしらせる。そのあまりの光量に上級魔物のマーナガルム種が揃って怯み、視界がはっきりしていないのかキョロキョロと挙動不審になっている。


そしてその絶好のチャンスを見逃すフランではない。


「アリア! あの女性の保護を! マリアちゃんとセリアちゃんも一緒に行って! ヒビキ君は私とあいつら仕留めるよ!」


「「「「了解!!!!」」」」


迅速に指示を下したフランの合図で響たちが一斉に行動を開始した、アリアたちがまだ目を瞑っている女性冒険者を保護して響とフランが魔法で畳み掛ける。


「パイルオープニング!」

「セレーネプロクス!」


響はスレイプニル種との戦いの時に使った巨大な杭を放つ上級魔法「パイルオープニング」を多重発動させてマーナガルム種目掛けて発射、フランは三日月の形をした炎のカッターを放つ緋級魔法「セレーネプロクス」を発動させる。


マーナガルム種との戦いが轟音のゴングを合図に始まった。

次回、VSマーナガルム種

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