トーナメント戦のお話。
チーム分けとかは完全に思い付きでメンバー決めてます
完全に響たちの独壇場となっている攻防戦、結果は一勝一敗の引き分けに終わり第三試合に入るかと思われたが両組とも疲労困憊になっていたため引き分けという形で収まった。
しばし休憩を挟んだ後、早めの昼休みを取ってからトーナメント戦を行うことに生徒会メンバーたちで決め、拡声石で乱れた息のノイズを入れながらキュリアが通達した。何故かその時のキュリアの息遣いでアクレット魔法学校の何人かが鼻血を垂らしていたり、男子生徒の何人かが「エロい」と口々に言っていたのは気のせいだと思いたい。
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昼休み、今日は全員弁当持参ということになっている。一応食堂があることはあるのだが九回生までの一般生徒に加えてアクレット魔法学校の生徒たちを入れることになれば間違いなく食堂がパンクする、という理由で体育館でお弁当を食べることにした。
「およ? 響のお弁当なんかいつもと違くない?」
「カレンさんが作ってくれた」
「じゃあもう本当のお母さんみたいだね」
「どっちかって言うと年上の姉が出来た気分だよ」
響のお弁当箱には朝早くからカレンが頑張って作ってくれたおかずやご飯が敷き詰められていた。まだ料理勉強中のカレンが作ったものであるため多少形は不格好だがそれでも味は美味しかった、何より折角カレンが一生懸命作ってくれたお弁当が例えダークマターだったとしても響に残す気はない。
みんなの弁当もそれほど変わったものでない至って普通のものだった、それでもマリアとセリアに梓や賢介と絵美里のいいとこの育ちの貴族組は重箱で豪華だったのだが。
体育館にはちらほらとラピストリアの生徒たちとアクレットの生徒たちが入り混じって楽しく昼食を取っている姿が見られた、こうしてみると今のところレクリエーション本来の目的は達成されていると言っていいと思われる。
「お邪魔するよ」
「すいません、お邪魔します」
そこへアリアとキュリアも参加し大所帯での食事となった。その食事自体は楽しかったのだが飯を食っている途中でトーナメント戦に向けて生徒会長同士が殺気立つのは勘弁してほしい、なぜアリアといいキュリアといいフランといいこの世界の思春期の女の子は揃いも揃って戦闘民族みたいなところがあるのか。
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昼食も食べ終わりそのままばらけた状態で次の指示を待つ、この後トーナメント戦が行われることは生徒会メンバーしか知らないため一般生徒たちはこれから何をやるのか知らされていない。サプライズというやつだ。そんな中アリアとキュリアがすっくと立ちあがって壇上に登り拡声石でトーナメント戦を行うことを告げる、すると予想通り生徒たちがざわつきいまいちよく分かっていない様子だった。
アリアがトーナメント戦の概要を簡潔に伝えると何故か響たちの周りから人がいなくなっていった、アリアがトーナメント戦は各学校から五人を選出すると言った瞬間にこれだ、つまるところ、そんな大役背負いたくないしこいつらには敵わないからさっさと行ってきてくれというラピストリア魔法学校十回生たちの総意の表れなのだと思う。
『では各校選出メンバーを決めてください、決まり次第前に出るように』
そう言い終えるとアリアとキュリアは壇上から降りてそれぞれの生徒たちを呼び選抜メンバーを決めることになったのだが、すでにラピストリアの方は決まったも同然だった。
「なんか孤立してないかい?」
戻ってきたアリアが半笑いでそう言う。一応念のため立候補者を募って見たが誰一人手を挙げない、逆に推薦する人は居るかと尋ねたら揃って響たちのグループを指さしたということで必然的にこの中から決めるはめになった。どうやって決めようかという話になり生徒会長のアリアと最大戦力の一角である響と梓は確定となった。では残りはどうするかと言うと。
「手っ取り早くじゃんけんでいんじゃない?」
と言う絵美里の意見を即採用した結果、凪沙・絵美里・セリアの三人が選出された。メンバーが決まったので前に出てアクレット校が決まるのを待っていると「え? 早っ!」といった声が聞こえてきた、半数以上をじゃんけんで決めましたとは言えない。
それから二分ほど待っているとあちらも決まったようで早速誰が誰と当たるかをくじ引きで決めた、トーナメント戦は二組の枠が二つ、二組とシードの枠が一つ、普通のシード枠が二つといった構成で二組枠から進んでいく。
第一試合から出ることになった響は、相手の女子生徒は血の気が失せたような顔をしていたのをはっきりと見た、原因はクイズ大会の時のあれだろうと確信する。
「ヒビキ君ー、セクハラしちゃダメだよー?」
「分かってますよ!?」
フィールドはアリアが作ったゴーレムたちが四つ角で防御魔法を展開してくれているため他の生徒に被害がでることはない。響の懸念はそこではなく女の子相手にどう戦うかだ、梓のような長い付き合いの奴ならそこまで気にすることでもないのかも知れないが生憎初対面でしかも自分より年上で思春期真っただ中の女子生徒相手となればどうやって戦ったものか困る。
そうこうしている内に試合開始の合図が告げられた、相手の女子生徒は初っ端から中級魔法を色々と売ってくるが響は上級防御魔法「プロテクト・ツィオーネ」でその場から一歩も動かずに全てレジスト。魔法が効かないと分かった女子生徒は格闘戦に切り替えて突っ込んでくるのだが、上級魔物スレイプニル種との戦いや魔導学院での戦闘を経験した響にとってはっきり言って相手の女子生徒は弱すぎた、殴りかかる女子生徒の攻撃を軽く躱して足払いをしそのまま刑事ドラマとかで見るような感じで拘束して終了。時間にして僅か一分以内のことで試合が始まる前まで歓声で盛り上がっていた体育館が静まり返った。
「なぁんか、やっちまったのか? これ?」
拘束しながら響は観戦している一般生徒たちのあまりにも急激な温度の変化に不安になる。次第に拍手と歓声が再び体育館を包み込んでそれはそれでびっくりした。
「お疲れ響、っていってもそんな疲れてないっしょ」
「うん、気づいたら終わってた」
「向こうも同じこと思ってるんじゃないかな……?」
ハハハと少し笑いながら凪沙が的確に指摘する。
その後もトーナメント戦は順調に進み、キュリア以外のアクレット魔法学校の女子生徒たちが次々と敗れ去っていった。まあ当然と言えば当然なのだが、そのおかげで両学校の生徒たちに畏怖の念とともに響たちの存在を記憶に刻み付けることになってしまった。
結論から言えば準決勝辺りでただの身内バトルになってしまいキュリアは梓と当たって竹刀でぼっこぼこにされた。女同士の戦いは怖いものだと相場が決まっているが梓が容赦なさ過ぎて響は「こんなやつが幼馴染ってよく考えたら凄いよな」と独り言を呟いたところ絵美里から「いやあんたも大概でしょ」とごもっともなことを言われてしまった。
このトーナメント戦、結論から言えば最後は響と梓の一騎打ちになりお互い手加減なしのガチンコバトルに発展し響がもはや相棒格の魔法「ニュートンの林檎」で梓を抑えつけるものの梓がそれに抵抗しゆっくりと前進していたところを響が腹に掌底を叩き込み怯んだところをチェーンバインドを五重にかけてやっと勝敗が決定した。三重にかけただけでは刀身に魔力を纏わせた梓によって切られたので腕を拘束するために増やしたのだ。
キュリアも健闘した方で第四位に入ったのだが他がほとんど響たちで固められていたので素直に喜べなかったという。かくして今回のアクレット魔法学校との異学校交流は一応大成功ということで幕を閉じた。最後の挨拶の時もみんなどこか清々しいような顔をしており、帰り際には一緒に喋りながら帰る生徒たちが何組か見られた。
そして今回、生徒会メンバーとして運営活動やトーナメント戦の優勝など割と頑張った響はと言うと。
「ねぇねぇ! クイズの時のやつ凄かったね! どうやってるの?」
「飛び級したって聞いてさ、凄いね」
「アルバレスト君って道場やってるよね? やっぱ強いもん!」
「今度一緒に任務行かない? もっとよく近くで戦ってるところ見てみたいんだ」
「ははは……ええと……」
アクレット魔法学校の女子生徒たちから転校してきた時のアザミよろしく質問攻め、もとい、熱烈なアプローチをかけられていた。
その光景をアリアやマリアがニヨニヨしながら眺めていたのは言うまでもなく、梓に至っては何故か殺気を放ちながら響を睨んでいた。
「これはこれは随分モテてるねえヒビキ君」
「全く、ヒビキも隅に置けませんわね」
「…………」
「誰でもいいから早く助けて! てかなんで梓はそんな殺気立ってんの!? 何かした!?」
ある意味、今日の交流会で一番親睦を深められたのは響なのかも知れない。
戦闘描写を全部書こうかと思ってたけどよく考えたら文字数がえげつなくなりそうだから止めました




