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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第三章:魔法学校を卒業するようです
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異学校交流のお話。

最高学年って、妙に先生方からプレッシャーかけられますよね

 十回生となってからの日々は目まぐるしく過ぎていった、最高学年ということもあって進路をどうするかと言う根本的な問題に対して向き合うということで各生徒が一人ずつ昼休みの時間に担任の先生と個人面談などをすることすることもあった。

 響たちも飛び級で十回生になったとは言え、最高学年に変わりはない。無論響たちも将来をどうするかなど形式的に聞かれてはいるのだが、そんなものは全く考えていない。


 ウィルレイヤードも「まぁそうだよね」と分かり切っていたようで響たちの個人面談の時だけやけに早く終わり余裕で昼食を食べる時間を確保できた。

 ふと、この前アリアが言っていた飛び級の理由を思い出しこっそり他のクラスを除くと案の定賢介たちが十回生の他の教室で喋っていたり昼食を取ったりしていた。やはりあの時のメンバーは全員この学年にいるらしい。


 勉強の方も、いきなりランクアップしたが七割近くが実戦戦闘の類の授業で度々ギルドに行くこともあったのでそちらの方は何とかカバーできたのだが、座学の方が難しくこればかりは自分の力でどうにかするしかないようだ。幸いにもアリアが身近にいたため響たちは寄ってたかってアリアに授業の分からないところを聞いていた、アリアは「やれやれ、困った同級生たちだ」と愚痴っていたがあからさまに嬉しそうに響たちに勉強を教えていた。本当、なんだかんだで凄く面倒見いいんだよな。



△▼△▼△▼△



 それから幾日が過ぎ日の落ちる時間も早くなってきて肌寒くなってきた頃の生徒会室、いつものように雑務をしていたところでアリアが「あっ!」と何かを思い出して机から紙が数枚重なった冊子を取り出して三人に配った。


 「なんですか? これ」


 「今度この学校で他行との交流があるんだよ、危ない危ない、忘れてた」


 「これいつですか?」


 「再来週の金曜日、一日丸ごと授業ってことでやるっぽい」


 「明日かと思いました」


 「なんでさ」


 「だって先輩いっつも直前に言うじゃないですか」


 「んー……そう言われると反論できないんだよな。あともう先輩じゃないってずっと言ってるだろ?」


 「年上ですし、俺にとってはずっと先輩です」


 などと話しながら響はその冊子に目を通す、至って普通の内容だったため安心半分これから何かあるんじゃないだろうかという不安半分で一通り中身を確認した。

 これによると響たち生徒会の大きな役割はこの交流の準備と運営を滞りなく進めることくらいなもので大体は他の生徒と大して変わりはなかった、確かに他行の生徒会の人たちとの挨拶や一緒に準備をするなどはあることにはあるのだが見たところそれほど多くもない。

 アリアがこの内容に対してなにか疑問はあるかと聞いたが三人とも特に気になるところもなく満場一致で可決された、そうしたところでドアがガチャっと開いて珍しくリナリアがやって来た。ミスズと一緒に行動することが多いリナリアが単独で。


 「やっほー」


 「あれ? 珍しい、ミスズはどしたんです?」


 「アズサちゃんたちと他の転生組の子たちといるよ」


 「そっすか」


 「あ、アリア。紅茶に砂糖入れて頂戴」


 「はいはーい」


 ゆるい居酒屋みたいな感じで入ってきたリナリアは椅子に腰かけてアリアが淹れてくれた砂糖入りの紅茶を飲んで響の異学校交流の資料を奪い取り会議前のサラリーマンのように優雅に読む、面白そうだねとだけ言って響に資料を返す。


 「分かってると思いますけどリナリアさんも出ますからね」


 「…………その日は管理作業で忙しいからなー」


 「嘘つけ今の間はなんだ」


 「大人の事情?」


 「がっつり私用じゃねえか」


 「何をやっているのですか……」


 リナリアと即興漫才を繰り広げているところにマリアが冷静にツッコミを入れ呆れる、その後梓たちも生徒会室に合流して一気に賑やかになった。



△▼△▼△▼△



 時は進んで次の週の金曜日の放課後、今日は来週に控えた異学校交流に向けて交流校の生徒会の人たちと軽く挨拶して打ち合わせということになっている。

 そのため来る前に生徒会室の整理整頓を行っているのだが、普段からこまめに片づけているため特に大変でもない。確かに物を引っ張り出したりすることもあるが全員きちんと使ったものは戻す性格なので作業はすぐ終わり後は各々時間まで自由に過ごしていた。

 響は学校にある図書室から借りてきたぶ厚めの魔導書を片手に緋級魔法を学んでいた、見ていたのは琴葉とフランが使った拘束系統の緋級魔法「ハイマ・グローム」のページ。フォートレス家の一件を終えてそろそろ本格的に緋級魔法に取り掛かろうと思っている響は男の子としての本能なのか、他から見ればさぞ楽しそうにその本を眺めていた。


 「何見てるんですの? 楽しそうですけど」


 身を乗り出して響が何見てるのか本を見ようとするマリア。


 「ん? ああこれこれ」


 マリアに気が付いた響はそのページを見せる。


 「ハイマ・グローム? どこかで聞いたような……」


 「ほら、琴葉とフランさんが使ってた緋級魔法。赤い雷のやつ」


 「ああ! 思い出しましたわ……って、よくやろうとしますわね」


 「楽しいですから」


 率直なその感想に驚き半分納得半分で響の感想を聞くマリア。


 「そうですか……あ、じゃあ今度上級魔法の練習に付き合ってくれます?」


 「俺でよければ」


 「なら私もいいですか、ヒビキ君」


 「良いけど、説明下手だったらごめん」


 「みんなー? 先輩も頼っていいんだよ?」


 和気あいあいと話す三人に若干の疎外感を感じるマリアをよそに会話を続ける三人、次第に諦めがついたのかアリアは会長用の椅子に腰かけて窓の外を眺める、その姿はどことなく寂しげだったことを三人は知らない。

 そうこうしていると時間になり、フルーエンが四人を呼びに来た。制服をきちんとして四人はフルーエンの後について校門で待っている他校の生徒会の人たちの元へ向かう、やがてその姿が見えてくると四人は気を引き締めてびしっとする。


 「初めまして、アクレット魔法学校の皆々様方、ようこそお越しくださいました。生徒会長のアリア・ノーデンスです」


 「ご丁寧にどうも、アクレット魔法学校生徒会長キュリア・ノイ・ロームと言います。本日はお招きいただきありがとうございます」


 形式的な挨拶を済ませた両校の生徒会長同士、二人はお互いに握手を交わした後、アリアが生徒会室へと案内していった。

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