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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
序章:現実世界に異変が起こったようです
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生まれ変わった後のお話。

明けましておめでとうございます。まだ始まったばかりですが今後ともよろしくお願いします。

 「はいアーン!」

 「やっぱりわが子はかわいいなあ!」



 言われるがままに口を開けて離乳食を食べている赤ちゃんがいる。

 そう、響だ。



 中身十七歳の赤ちゃんである響だ。

 某高校生探偵も真っ青な光景だろう、まさか響もこの年になって離乳食を食べさせられる日が来るとは思ってなかった。見た目は生まれて間もない赤ん坊で中身は高校生というのはなんというか複雑である。



 響はこの世界「ネメシス」救うためにこの異世界に転生させられた、目的は魔王討伐、そのためにはまずこのネメシスで赤ん坊から人生をやり直せということになった。響もそのことには承諾した。

しかし承諾したとはいえ色々と精神的にキツイ目に会っている現状、もうリタイアしてしまいたいとさえ思っている。

 十七にもなって離乳食はキッツイ。仕方がないことは分かっているんだがなんていうんだろう、こう……分かれ。



△▼△▼△▼△



 さてじゃあここまでの流れを思い出してみよう。

 数カ月前。響がこの世界に転生した日に遡る。

 アザミの魔法によって体がまばゆい光に包まれ、一旦意識が途切れた。その後目を覚ますと目の前に見知らぬ女性の姿があった声を出そうにも「アー」とか、そんな泣き声に近い声が出た。響はそれを自分で聞いた時、本当に転生してしまったのだと実感した。



 「元気な男の子ですよ。奥様」

 「よくやったぞエミル。ありがとう……!」



 直後にそんな会話が聞こえてくる、どうやら響は生まれたばかりの状態のようだった。

 そしてこの時は気が付かなかったが、生まれた直後から意識と記憶はすでにはっきりしているらしかった。今思い返すと若干ゾッとする。

 会話の流れからするに、響を生んでくれた母親の名前はエミルというらしい。

 そしてここがどこかは分からないが恐らくは分娩室的などこか、もしくは自宅とかそんなところだと思われる。

 オギャーオギャーと産声をあげる響、赤ちゃんの本能は思ったより強く、泣くことを止められない。

 だが不思議と嫌だとは思わなかった、仮に泣かなかったとしたらそれはそれで不気味だし反って心配されていただろうから結果的には良かったのだったろう。




 泣きじゃくった後、響は急激な睡魔に襲われた。まだ体力が十分にないので疲れてしまったのだ。まどろみの中、響を生んでくれた両親の楽しそうな会話が聞こえていたが、何と言っていたのかまでは思い出せそうにない。

 次に響が目を覚ましたのはまた別な場所だった。そこは生まれた時とは違う場所で、ベビーベッドのようなものに寝かされていた。



 あたりを見渡してみると本棚が幾つかあった、しかもかなり大きいものが。

 その全てにぎっしりと本が収納されており恐らく数百冊はあるであろうその大量の本の中には見たことのない装飾が施されたものがあったり、胎児の状態である響の体を優に超えると思われる大きさの本があった。

 転生前に授かった「異世界言語」のおかげなのだろうか本のタイトルは把握できた、そのどれもが恐らく魔法関連のものなのだろうがいかんせんどれもこれも堅いタイトルばかりで見てるだけで疲れそうになってくる。



 その場から動かず首と目だけで部屋を見渡していると、ガチャリとドアが開いた。



 「あら、ヒビキったらもう起きてたの~? いつ見てもかわいい子ね~、誰の子かしら~」



 入ってくるなりおっとりとした口調で話しかけてくる女性、母親のエミルだった。



 「お、なんだなんだ! ヒビキ起きたのか? ほーらヒビ、。パパでちゅよー!」



 エミルが入ってきたのとほぼ同時に恐らく響の父親であろう人物が入ってきて響に頬ずりした。

 おっさんに頬ずりされるのは中々精神的に来るものがあるなと響は痛烈に感じていた。



 「んも~あなたったら~、ヒビキが困っちゃうでしょ~?」

 「おおそうだな。しかし親バカながらうちの子はかわいいなぁ!」



 本当、とんだ親バカだ。

 古今東西、親というものは大体こんなものだが、いくらなんでも中身十七歳で味わうには鬱陶しい。

 若干困りながらも父親の愛情を存分にもらっていると、またしても誰か来たようだ。



 「師範! ここにいらしたのですか。生徒の皆が待っています。お子さんがかわいいのはよく分かりますが、稽古を投げ出されてはこちらも困ります故、どうかお戻りになられてください」

「もうちょっとだけ、もうちょっとだけわが子をこの目に焼き付けてかr痛だだだだだだ! ちょ、カレン! 引っ張んないで! これでも俺師範なんだけど!? ねえちょっと聞いてる!?」



 響を母親に預けてカレンと呼んだ女性に引っ張られてどこかに連れていかれる父親、はっきり言って滑稽である。

 このおっとりした奥さんじゃなければきっと尻に敷かれていたんだろうなぁ……なんて思いながら耳を掴まれて強引に連れていかれる父の姿を響は哀れみの感情と共に見ていた。



 「困ったお父さんですね~」



 エミルさんが笑いながらそう言ってくる。

 先ほどのカレンという女性、道着に袴で青髪のポニテといういかにもな剣士キャラだった。

 父親のことを師範と呼んでいたことから彼女は門下生、そしてこの家は何かの道場をやっていることが推測された。父親が道場の師範代なら、いずれ戦う力を身に着ける為に習うことになるだろう。そう考えると若干楽しみにもなってくる。



  前の世界では喧嘩すらしたことないのだがな。



 「さてと。ヒビキはそろそろご飯にしようね~」



 そう言ってエミルさんが響の口元に哺乳瓶らしきものをあてた。

 少々の躊躇はあったものの飲まないのも変なので大人しく飲むことにした、味はちょっと薄めの牛乳のような感じで意外と飲みやすい。まさかこの世界にも哺乳瓶があるとは思わなかったが、そっちの方がよかったと思う。もしここで母乳を飲まされることになれば恐らく響は拒んでいたことだろう、背徳感的な何かで。



 「(なんか悲しくなってきた。)」



 このことを声に出せないのが何より残念がる響。

 まぁ喋る赤ちゃんもどうかと思うがそれよりもこの虚しさをどうにかしたかった、半分くらいまで飲んだところでもういいと口から哺乳瓶を離した。その後背中を優しく叩かれて小さなゲップを出し、ベビーベッドに寝かされた。



 「は~い、よく出来ました~。お母さんちょっとやることあるから大人しくしててね~?」



 そういってパタパタとどこかへ去っていくエミル。

 バタンとドアが閉まり、再び一人の空間となった。



 「(さて、今のうちになんか行動起こすかな)」



 まず確認したのは、この状態で体がどこまで動かせるか。

 とりあえず手足をバタバタさせてどんなものか確認した、このくらいは負担なしで簡単に出来るようだ。

 腕を頭のあたりまで上げることもできた、次に体を起こしてみたがこれは流石に難しかった。壁に背中を押し付けてやればいけるのかもしれないが、あいにくとベッドは壁から離れており、とても出来そうにない。それから色々な動きを試した。ハイハイしたりベッドを叩いてみたりなど色々。




 最後に一か八かで適合能力が使えるかどうかを試してみた。いきなり最初から大きなものを作るわけにもいかないし作れないだろうからまずは小さいものから試すことにした。

 何を作ろうか、正確にはコピーだが、あまり不自然なものでもいけないだろう。

 そこでふっと先ほどのカレンの姿が思い浮かんだ、響の予想が合っていればここは剣術道場のはず。

 となればまだ近接武器とかの方が違和感はないだろう。



 「(どうやりゃいいんだろ……念じればいけるか……?)」



 手の平を広げて武器が出てくるのをイメージしてみる。

 するとまるで最初からそこにあったかのように、突然ダガーナイフが出現した。感覚としては不思議なものだったが、自分の中から出てきたというわけでもないので変な感じはしなかった。見たところ粗悪品というわけでもないだろうから十分に使えるだろう。



 「(この調子ならまだ色々出来そうだな……疲労もまだ感じられないし)」



 なんかテンション上がってきた、響の中の男の子としての本能がうずきだしている。

 「なにこれ超すげえ! 漫画みてえ!」と。



 響のボルテージは上がりに上がっていた、念のためにもう一本先ほどと同じくダガーがあるということをイメージして複製してみた。

 すると先ほどと同様にまるでそこにあったかのようにベッドにポスンとダガーナイフが出現した。試しにベッドをかこっている木製の柵を悪戯にダガーで叩くように切り付けてみた、木製の柵にはしっかりと何かで切られたような跡が付いていた。

 


 と、そこでふと部屋にあった大きな立てかけるタイプの鏡が目に入った、ちょうどそれは響の姿が屈折して映っていた。

 やはり生まれたばかりの赤ん坊の響の姿がそこにあった、しかし驚くことに目が青かったのだ。

 確かアザミは容姿とかは引き継がれると言っていたはずなのだが、これは一体どういうことあろうか。

 まぁ何かしらのエラーが発生したとしてもおかしくはないし、気にしてもしょうがないのでこのことは一先ず先送りにした。今は能力が問題なく動作したことを素直に喜ぼうではないか、響しかいないけど。



 この能力はかなり使い道が多い。分かっていたことだが汎用性がかなり高い。ここでもう一つ試すべきことがある。それは今作ったものを削除できるのかどうか、ということだ。もし消すことができるならそれはそれでかなり使い道が増える。物は試しと思いダガーを手にとり、作る時とは逆に物が消えるイメージをした。すると案の定、ダガーが最初から存在しなかったかのようにして消えた。握っていた手に消えるときの感覚はなく、違和感を覚える間もなかった。



 「(まじか、こんなすんなり消えるものなのか……凄いぞ適合能力、予想以上だ)」



 疲労感もないし、このまま作業を続けてもいいのだがそろそろ誰か来そうなので一度ここで中断することにした。

 体を伸ばして天井を見上げる、先ほどは大量の本に気を取られていたがよくよく見ると天井はやや高いし部屋も少しばかし広めだ。それに響のベッドの隣に多めのダブルベッドもある。このことからこの部屋は両親の寝室とかだと思われる、まあ時間が経てば分かるだろう。



 時間と言えば、今は何時なのだろう?

 窓から日の光が入ってきているからまだ遅い時間ではないことは分かるが正確な時間が知りたい、運よくこの部屋にはアンティークっぽい壁掛け時計があった、それを見るに時間は午前十時頃だった。

 何かまだやろうかと響は思ったがこの体で出来ることも限られている上に、色々と試したことによって思いのほか体力を消耗して疲れてしまった。



 その後すやすやと寝息を立てた響は父親にご飯だと言われて起こされ、この日二度目の食事をした。飲み終えてゲップをした後、先ほどのカレンという女性と一緒に数人の門下生らしき人たちがこぞって響の顔を除くいた。

 口々に感想を言っていくその後ろで両親が誇らしげに見守っていた。



 夜になり、食事をして、両親と一緒に同じ部屋で寝る。やはりここは両親の寝室でもあったようだ。

 二人はそれぞれ響の額におやすみのキスをした後、ダブルベッドに入って寝てしまった。



△▼△▼△▼△



 その後、母の名前がエミル・アルバレスト。父の名前がクラリア・アルバレストということや、ここが街で有名な、剣術の道場ということが分かった。

 ただ、体をまだ自由に動かせないため特に大きな変化もなく数カ月が過ぎ、今に至る。

 そしてさらに数カ月が経ち、能力の使用にも慣れてきた頃、響の年齢は1歳ちょっとになっていた。この頃にはある程度体を動かしたり、歩いたり出来るようになってきた。こうなると、自分の活動範囲を広げて、色んなことを知りたいと思うようになってくる。




 そこで響はそろそろ魔法について触れてみようかと考えた。

 床にも本が数冊置いてあるし、せっかく異世界に生まれ直したのであればちょっと早めの勉強をしておいても損はなかろう。

 若干おぼつかない歩き方で、重ねて置いてあった本の中から一番上の本を手に取り、表紙を開く。

 本のタイトルは「魔法学:基礎編」というものだ。




 この本によると、魔力というのは個人差はあるが生まれた時から持っているものであり、成長とともに増幅するものでありうんぬんかんぬん。



 そんな感じでページをめくっていくと、「初級魔法」という見出しで書かれた部分があった。そこには魔方陣や詠唱、威力や射程距離などの情報が書かれてある。

 いよいよ魔法というものを学ぶ時が来たようで響はワクワクしていた。

自分の文章が拙すぎる件について。読みにくくてすみません。

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