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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第一章:魔法学校に入学するようです
33/221

快進撃のお話。

今回のメインは琴葉

 ヴィラとアリアが医務室でダウンしている間にも次々と試合は進んでいく。セリアと生徒Dの試合はセリアがチェーンバインドなどのからめ手や初級魔法と中級魔法を上手く状況に合わせて使い合わせて善戦するも能力的には中の上くらいだったため敗北してしまった。



 次の第六試合、絵美里と生徒Eの試合は午前の訓練の時と同様、絵美里が「我淀引水(デコレーション)」で自分の魔法を百発百中の性質を付与して攻撃するも「必ず当たるなら魔法がくる場所に防御魔法を張ればいい」という性質を逆手に取った戦法で間合いを詰め近接戦に持ち込みワッペンを奪い勝利した。魔法こそ性質で何とかまかり通るが近接戦闘技術に至っては本人の経験や技術に左右されるため、能力持ちが必ずしも勝てるわけではないのだ。




 第七試合、影山とレイの試合になり両者とも深呼吸をしてから勝負へと赴く。試合が始まりまず影山が能力を開放して一気にスピードを超向上させる、見てから相手を捉えるのは常人ではほぼ不可能に近くもしレイが人族以外の種族であればもしかしたらそのような方法がとれたのかもしれないが種族はどうあがいても変えることはできない。



 だからといって影山の姿が全く見えない訳ではなくただ単に素早いだけであるのでパターンがあればどこに攻撃してくるかの予測は立てられる、影山は「全神全霊アンリミテッドキャパシティ」でスピードだけでなく筋力なども増強させて近接戦に持ち込み一撃を加えたらすぐさま離脱してまた一撃を加えたら離脱するというヒットアンドアウェイ戦法を取っていたためどのタイミングで攻撃を仕掛けてくるかどうかは魔法を織り交ぜた戦法よりずっと分かりやすかった。

 そしていくら身体能力を向上させても影山が行っているのは生身での突進となんら変わらないため防御魔法などでダメージを軽減することはレイにとって容易いことだった。



 「(ヴィラがあんなに頑張ってたんだもんな、俺が頑張らなきゃあとであいつに怒られちまう)」



 自分に防御魔法の結界を張って影山の攻撃を無効化していくレイは防ぐだけでなく回避をして影山の突進のバランスを崩してその隙に回し蹴りを横っ腹に決めて影山を床に転がす、そしてまた暴れられると厄介なのでチェーンバインドを最初に掛けてその上からレストレイトカースを重ね掛けして完全に体の自由を奪っていく。影山もどうにか脱出しようとして能力を使用してもがくもガシャガシャと鎖がうるさくなるだけで一向に外れる気配はない、そればかりかずっと能力を開放していたため体力的な限界が訪れ次第にバテて息を切らしながら動かなくなってしまう。

 



 「悪いね」そう言ってレイは影山の腕からワッペンとともに勝利を手にする。戻ってきた影山が申し訳なさそうに「わりぃ」と言っていた。本人も能力に頼りすぎたために負けたということは自覚していたようですぐさま自己分析を開始していた、途中で賢介と話し合ったりして改善点を見つけていった。



 「じ、じゃあ、行ってきます」

 「頑張って! 琴葉ちゃん!」

 「は、はい!」



 両手をぐっと握ってやる気に満ち溢れた表情で臨む琴葉、なんとなく最近の琴葉は積極的になってきている気がしてこそっと梓にどう思っているか聞くと「うん、私もそう思う」と同調してくれた。その時の梓の顔は何処か喜ばしい感じにも捉えられ、まるでもうすでに琴葉の勝ちを確信しているかのような、そんな表情だった。



 そして琴葉と生徒Fの試合が始まり生徒Fが早速琴葉が苦手とする近接戦で早々に決着をつけようとして手数多めで攻めてあっという間に結界の壁まで追い詰めてしまう。琴葉は防御魔法でガードして自分自身でも攻撃を仕掛けたりしているがあまりダメージにはなっていない様子、だが琴葉はまだ諦めてはおらず何かを狙っているような顔つきだった。生徒Fが至近距離から上級魔法を火球を放って後ろへと下がる、僅か十一歳の小柄な女の子にそこまでえげつない手を使うかと梓やマリアからブーイングが飛び味方である魔導学院の一部からもいくらなんでもやり過ぎだという声が上がる。



 「ごちゃごちゃ言ってんじゃないよ! これは戦いだろ!? 本気にならなくて一体どうするってんだよ!?」



 女性にしては随分と気の強い方である生徒Fの怒号に気圧されて魔法学校側のメンバーは黙り込んでしまう、それでも賢介や魔導学院側からは野次が飛んでいた。



 流石に琴葉さんの気絶負けかと誰もが思ったその時だった、煙の中から円柱状の赤い雷が一本勢いよく飛び出して生徒Fの胸の中心を貫いた、価値を確信していた生徒Fは突如胸に襲ってきた鈍い感触にしばらくその場から動けなかった。両サイドの応援側も一体これが何の魔法なのか分からずピタッとブーイングが止みシーンとしていた。

 だが魔導学院長オーハートと魔導学院生徒会長フランの二人は「ほう……」と何やら含みのある言葉を漏らしていた。

 


 胸の円柱からこれまた赤い雷がほとばしり床に次々と刺さっていく、一本一本はやや細かったため生徒Fはこれなら解けると思ったのだろうがどれだけもがいても動くことはできなかった。否、正確に言えばもがくことすら叶わなかった、それどころか指一本、指の先の関節一つとして微動だにしていなかった。

 やがて煙が晴れると防御魔法が一部決壊していて、火球の熱によって制服が一部焦げていたり足や腕に火傷のようなものも見られる痛々しい状態の琴葉が座り込んだまま右手を突き出して魔方陣を展開させて息を切らしていた。煙が晴れ、気絶しておらず目に光が宿っている琴葉が現れたことで魔法学校側のメンバーがみんな体を前のめりにして歓声を上げていた。みんなのその歓声に答えるように琴葉が力強い声でこう叫んだ。



 「私の痛みを……あなたにもっ……!!」



 琴葉は適合能力「同病操麟(ペインウォーフェア)」でこの試合中に自分に与えられたダメージの全てを与えた張本人である生徒Fに跳ね返す。

 突如として自分を襲った謎の痛みや苦痛、熱さなどのそれらが全て遅れることなくいっぺんに生徒Fの体を包み込んで感覚を支配した。なぜ体が動かないのかと先ほど琴葉の放った魔法に気を取られていたことで琴葉の声も聞こえておらず本当にいきなり襲ってきた苦痛の数々に声を上げる暇もなく生徒Fは白目を剥いてぐったりとして失禁して気絶してしまい、琴葉の勝ちが決定した。



 だが当の琴葉も体力や魔力的な問題で今にも倒れ込みそうになっている。満身創痍のまま辛くも響たちのところへ戻ってきた琴葉はみんなに一言「やりました……私……やりました……!」と言ってフラッと前に倒れ込んでしまいそうになったところを梓が優しく受け止めて涙ぐみながら抱きしめていた。そのまま梓の腕の中でスゥスゥと寝息を立てて眠ってしまった。



 「これは次負けるわけにはいきませんわね、ヒビキさん?」

 「そうプレッシャーかけないでくださいよ」

 「あら? 私たちの中でトップクラスの戦力のあなたが、まさかあっさり負けました~なんて言って帰ってくるなんてこと……あり得ませんわよね?」

 「……上っっっ等ですよ。琴葉にかっこ悪い話聞かせる羽目になったら申し訳ないじゃないですか!」



 そう言い終わって響は立ち上がりバトルフィールドへ赴き相手生徒である生徒Gと対面する。生徒Gと響は午前の部の特別授業の時の魔法技術訓練の時に一度手合わせしており、その時の記憶がフラッシュバックしたのか生徒Gが最初から諦めたような感じでため息を吐く。その姿に対して響は大胆不敵に宣言した。



 「あの魔法は使いません、あまりあれに頼りすぎるのも個人的に良くないんで」

 「お前、名前からしてアルバレスト道場の奴だろ。ったく、ハズレくじ引いちまった……」



 嘆く生徒Gだったが試合が始まるとさっきのため息を掻き消す勢いで響に仕掛けてきた。魔法に持ち込まれては不利になる可能性があると踏んだのか格闘戦で勝負をつけようとするが、響は道場の息子であり日々父親であるクラリアやカレンと稽古しているのだ、しかも剣と剣つまりは対人戦そのものである。



 響からしてみれば生徒Gの攻撃はクラリアやカレンの攻撃に比べれば圧倒的に遅かった、生徒Gの拳を躱してその腕を左手で掴みこちら側へ引き寄せその勢いを利用して右肘をみぞおちの部分へと叩き込みダウンさせる、その隙に素早くワッペンを奪い取り勝利する。



 「マリアちゃん、琴葉ちゃんのことお願いしてもいい?」

 「ええ構いませんわ、頑張ってください」

 「うん! じゃあ行ってくる」



 戻ってきた響とハイタッチして梓は結界の中へと入りフランが来るのを待つ。壁に寄りかかって何やら瞑想している様子のフラン。スッ……と目を開いた彼女はじっと梓を見つめて楽しそうに口角を上げる。



 そしてゆっくりと、魔導学院最高戦力、生徒会長フラン・ヘルヴォールが梓に向かって歩みだす。

次回も戦闘パートです

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