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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第一章:魔法学校に入学するようです
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転校生のお話。

転校生に憧れた時期が私にもありました。

 笠原がリナリアと名乗る女神に抱えられて帰った後、しばらくその場の人間は呆然と空を眺めているだけで誰一人動こうとはしなかった。その拮抗状態を最初に破ったのは魔導学院学院長オーハートだった。



彼はゆっくりと歩き始め辺りに散乱した窓ガラスの破片を一つ一つ拾い上げ手の平の中に落としていく。それを見て続々と片づけ作業に着手する一同、幸いにも窓ガラスの破損以外には特に目立った被害もなく無事に済んだと言っていいのかは分からないがこれにてひとまず笠原事件は一旦幕を下ろした。



 ただ一つ全員が気になっていることが一つ、それはリナリアという女神が管理している種族が「魔族」であったということだ。アザミが「人族の管理をしている」と言っていたため転生組の面々は他の種族の管理を担っている女神がいるんだろうということは予想できていた、問題なのは同じ日本からの転生者の可能性がある笠原が魔族の管理をしている女神と帰ったことそしてリナリアが「うちのミスズが」と言っていたこと、それから導き出されるのは【笠原美鈴は魔族である】という推測だ。




 結局脅迫文騒動は本人登場からの特殊エンディングルートで解決したのか解決していないのかよく分からなくなってしまったが一応収集ついたと言っていいだろう、もしこれでまた手紙が送られてくるようなことがあれば本格的な問題になるが恐らくもう送られてくることはないだろう。

 


 オーハートは後日改めてまた尋ねると言って一人先に帰っていき響たちも今日のところは早めに帰るようにと魔法学校学校長ウィルレイヤードに促され全員生徒会室から退室した後、いつもより多い十一人での集団下校となった。アリアが率先して話題を振って場をなんとか楽しい方向へもっていこうとし、それを感じ取った琴葉がそれに相槌を打ったり話題を誰かに振ったりと気を使ってくれたのだ。それがみんなにも伝わったのか次第に話が盛り上がっていきいつもとなんら変わらない楽しい登下校にチェンジしていた。途中で賢介と絵美里が方向が違うので一行と別れ智香が別れ凪沙が別れていき最終的に響と梓と影山の三軒が並んでいるところで響たちが別れた後マリアとセリア、琴葉そしてアリアの順番でそれぞれの家路に帰り着き家族の輪の中へと戻っていく。



△▼△▼△▼△



 翌朝教室にて響はいつもと同じく梓たちと話をしているとフルーエン先生がいつもより早く教室に入ってきてみんなを席に着かせ始めた。何かあるのだろうかと教室中が少しだけざわついたがすぐさまフルーエンの注意によって静かにされた、ホームルームをいつもの時間よりも五分ほど早く始め連絡事項を伝え始めたためただ単に早く来たから早くやっただけなのかな……とクラス中がそう思い始め次第に気にも留めていなくなったころひとしきり連絡事項を伝え終えホームルームが終わろうとした時、フルーエンが一つ咳ばらいをしてもう一つの重要事項を伝える。



 「これで連絡事項は終わります。それでですね、今日は皆さんに嬉しいお知らせがあります」



 嬉しいお知らせも連絡事項なのではないのかと思うのは野暮だろうか、内心そう思った響だがフルーエン先生がわざわざ嬉しいお知らせなどと本来の連絡事項と別に言うほどということで正直気になっていた。すると隣の席のマリアが響の方に顔を寄せてちょいちょいと手招きをしてきたため響も顔を寄せる。



 「私がこの後のどうなるかを当ててみましょうか?」

 「いきなり何を言ってるんですか……」

 「ズバリ! 転校生ですわ! こういう時はそういう展開がお約束なのです」

 「いやまあ確かにそうかも知れませんけど」



 ひそひそとほぼ回収されるであろうフラグを立ててこれが模範解答であろうドヤ顔を誇らしげにしかも堂々と響に見せつけるマリア、この時響は思った「前々から何となく分かってたけど、この人アホの子なのかな」と、それとこの世界にももしかしたらテンプレ王道展開の漫画とかがの娯楽用品があるのかなとも思った。周りがフルーエンの言葉で再びざわざわする中、響だけこのフラグは回収されるのだろうかという別の意味で心中ざわざわしていた。



 「はいはい、お話はそのあたりにしてください。実はこのAクラスにですね、新しいクラスメイトが加わることになりました」

 「ほらヒビキさんどうですか? この私の予知能力! 賢介さんにも引けを取りませんわ!」

 「時々あなたがお嬢様なのかどうか疑いますよほんと」

 「それほどまでに凄いということですのね!?」

 「すみません俺の言い方が足りませんでした」

 「みなさん静かにしてください。ではどうぞ、入ってきていいですよ」



 ドアがガラガラと開き嬉しい報告の正体がその姿を現す。入ってきたのは二人で、一人は鮮やかな紫の髪をサイドテールでまとめた暗い紫色の瞳を持つ小柄で華奢な少女、もう一人は少し背が高く同じ鮮やかな紫色の髪で黄金の瞳を持つショートカットの少女だった。クラス中が騒然とする中、響をはじめとした先日の笠原事件の時にいたメンバーが絶句してただその二人の少女を見ていた。何故ならその二人の人物こそ先日の事件を引き起こした張本人とその張本人を迎えに来た人物、笠原美鈴と魔族管理担当女神リナリアだったからだ。



 「じゃあ二人とも、順番に自己紹介をしてください」

 『ミスズ・ゼナ・キリナ・ローゼンです、特技は情報収集です』

 「リナリア・ファルスだ。よろしく」



 パチパチとクラスメイトが拍手をして新しい友達の登場を喜ぶ一方で響たち五人は拍手をしながらも目の前で何が起こっているのかすんなりと飲みこめなかった。



 昨日の今日でインパクト十分な登場をしておきながらある意味それ以上のインパクトのある再登場があると思うだろうか、いいや思わない。響はこの時思った、「俺は今夢でも見ているのだろうか……?」と。それはマリアも同じだったようで「ヒビキさん、私は今夢でも見ているのでしょうか?」と聞いてきたため自分もそうだと伝えたところ口を半開きにして教室の一番前にいる二人に視線を戻すが、その目は黒板を貫いてその先の何かを見ようとしているかのように二人にピントがまるで合っていなかった。

 



 フルーエンに自分の席に着くように言われて移動する笠原とリナリア、机と机の間の通路を通って自分の席に二人が座ったところでホームルームは終わり、授業までの間しばしの休息が訪れる。例え異世界でも転校生が来たら質問攻めにするという謎文化は変わらないようで、日本にいた頃に転校してきたアザミよろしく色々と聞かれていた。質問集団とは別に響たちで困惑集団が結成され各々が自分の思ったことを口にし始める。



 「何あれどういうこと?」と梓

 「あの二人って昨日の二人だろ?」と影山

 「私、あそこまでは予想できませんでしたわ」とマリア

 「ショートカットの人、確か女神と名乗っていましたよね」とセリア

 「もうやだ帰りたい」と響



 それぞれが不安と疑問を抱く中、一時間目の授業の始まりを告げるチャイムが鳴り休み時間が終わる。放課後まで笠原とリナリアの二人はどこかかしらでAクラスだけに留まらず他のクラスの人からも注目されていた。二人が転校してきたことを知った賢介たち他の転生組の面々も一回の説明では飲み込めず、何を言われたのか分からないといった表情だった。そして放課後になり響は生徒会室でアリアにも今朝のことを報告したところ、「ああごめんフルーエン先生からもう聞いてたんだ、僕」という言葉と「残念だったね」と言わんばかりの誇らしげな表情とともに返されたことに対して、響は一つだけ、「なぜ早く言わなかった!」というやり場のない憤りをぐっと飲み込みその日を過ごすことになった。

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