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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
最終章:旅の終わり
219/221

安息のお話。

ただいまとおかえり

 「ははは、まじかこれ」



 家の近くにまでたどり着いた響と梓と影山の三人が目にしたのは我が家に群がる群衆たちだった。

 何とも都合の良いことに三軒隣接しているこの家の住人は三人とも勇者パーティー、誰か一人の帰りを待っていれば自ずと残り二人も見られるというオプション付き。



 響は乾いた声で笑い、梓と影山の二人は顔が引きつっていた。

 群衆たちが響たちに気付いた、すぐに囲まれる三人、この状況で三人が取った行動は―――――



 「うっし」



 ―――――自分の部屋まで転移魔法を使うことだった。



 突如消えた三人に戸惑う市民たちだったが転移で消えたのだと分かった時には流石勇者パーティーだ、とむしろ感嘆の声を上げていた。

 三人が家に入ったのだろうと思った市民たちは三人の生活に配慮してその場で解散し、わずか数分で人混みは綺麗サッパリ無くなっていた。



 「うーん……熱しやすくて冷めやすいとはこのことか」


 「そうじゃのぅ、なんにせよ大事にならなくて良かったじゃないか」


 「やっぱりいたのか椿」


 「やっぱりおるぞ。して、ここがお主の部屋か。中々良いではないか気に入ったぞ」


 

 先ほどの騒動を何とも思っていない様子の椿に少し呆れながらも響は自分の部屋から出てリビングへと向かうことにした。

 そこには当然と言えば当然だがクラリアとエミルがいた、カレンはまだ仕事中なのかいなかったが二人は響を見た後に響のことを「ヒビっ……!」とまで呼んだがその傍らにいる着物の黒髪幼女を見てその後の言葉を発することなく止まった。



 「ただいま母様、父様」


 「お、おう。おかえり……え、その子は?」


 「椿って言って、神族。色々と助けてもらった」


 「初めましてじゃなご両親。妾は椿、以後よろしく頼むぞ!」



 エミルとクラリアの脳内回路は、さながら電波の弱い場所でネットにつなぐが如く処理が遅くなっていた。

 まずそもそも家の周りに人だかりが出来ていたこと、そしてそれがいつの間にか無くなっていたこと、次にいつの間にか響が帰って来ていたこと、ついでに見知らぬ幼女を連れていたこと。

 恐らく人だかりは響がいなくなってからそれと同時に無くなっていったのだろう、知らぬ間に家にいたのはきっと転移したのだろう、そこまでは予想が出来る。



 だが幼女を連れ込んでいるなどとは予想が出来なかった二人。

 しかし二人は響を育て上げた色んな意味での猛者、すぐに状況を無理やり理解し、安心しきった表情でもう一度、今度は椿にも「おかえり」と言った。



 響は久方ぶりの我が家のリビングに座り、長ーいため息を吐いて寝転がって体を伸ばした。

 数年ぶりの我が家の安心感からかもう何もしたくないという倦怠感に襲われ、響は思考とをめてボーっとしていた。

 


 「だらけとるだらけとる。夕方にはパーティーじゃろ? うっかり忘れるんじゃないぞ」


 「ふははは……まぁまぁ、今は休ませてくれ。椿もどうだ」


 「全く、妾を誰と心得る。誇り高き神族じゃぞ妾は。でもまぁそれはそれとしてお主の横に寝転がるのはやぶさかではないのぅ!」


 「娘がいたらこんな感じだったのかなぁ……」


 「あら~、今度頑張っちゃう~? カレンちゃんも一緒に~」


 「あの父様、母様……家族計画は息子のいないところでやってくれませんかね」



 真昼間から家族計画の話を聞かされる息子の微妙な心境など露知らず、エミルとクラリアはもし生まれるとしたら男の子か女の子かどっちが良いなどと話し始め、響が男の子だったから今度は女の子が良いななどと言う結論に至った。



 鳥のさえずりがどこから聞こえてくる、それに交じってガラガラと家の玄関の開く音が聞こえた。

 ただいまーという声の後にカレンがリビングに疲れた顔で入ってきた。

 


 「おかえりなさいカレンさん」


 「おーヒビキー、ただいま。そんでもっておかえり、良く生きててくれたな」


 「そう簡単には死にませんよ」


 「おっじゃましまーす! おおヒビキさん! おかえりなさいっす!」


 「ソフィーさん! ええただいま帰りました」


 「ああそうだ。エミルさんとクラリアさんもパーティーに招待されているっす、これ招待状なんで良かったらどうぞっす!」


 「あらあら~おめかししなきゃ」



 エミルとクラリアは招待状をソフィーから貰い、夫婦そろって何を着ていこうかと今からもう悩んでいた。

 響はそんな両親のやり取りを見ながら人数分のお茶を淹れ、無言で催促する椿から順に湯呑を置いていった。

 エミルは折角みんないるんだからと昼食を振る舞うべく厨房に立ち、しばらくすると食欲をそそる香りが漂ってきた。



 「さ、みんな無事に帰ってきたことだし、お昼ご飯にしましょ~!」


 「そうだな」


 「ソフィー、お前も食べていけ」


 「いいんすか!? ありがとうございます!」


 「椿も食べな」


 「では、ご馳走になるのじゃ」



 響たちは一つのテーブルを全員で囲み、各々食器を並べた。

 エミルが次々と料理が盛られた皿を置いていき、全部の料理が出そろうと響たちは手を合わせた。



 「いただきます~」

 「いただきます!」

 「いただきまーす」

 「いただきます」

 「いっただきます!」

 「いただきますなのじゃ」



 その日の昼食はここ数年で一番賑やかな食事だった。

俺の頭の中で描いている通りにいけば後三話くらい

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