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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
最終章:旅の終わり
217/221

残り火のお話。

久しぶりの一人称視点でございます。

 「……っ………んん………」


 「……! 響、こっち来い!」



 あれ、私、何してたんでしたっけ……?

 確か、そうだ、()()()()()を倒そうとして……それから……

 あいつに後ろから心臓貫かれて、死んだはずじゃ……



 「()()()()、分かる?」


 「……()()()()


 「良かった、気が付いた」


 「なぜ私は生きて……痛っ……!」



 胸の辺りに内側から鋭い痛みが走った、カグラに貫かれた箇所と同じところだ。

 恐る恐る見てみると、やや縫合されたような感じの跡があったが傷口は塞がっていた。

 誰かが治療してくれたのだろうか。



 「ああ、あまり動かない方が……」


 「私はあの後どう、なって?」

 

 「こいつらが治療したんだよ、瀕死の状態のお前を付きっきりでな」


 「……リナリア」


 「おかげでヒビキ以外は魔力すっからかんになってぐっすり眠ってるよ。それに……ふわぁ………私らも魔力回したおかげであんま寝れてないんだよ。てことでおやすみ」


 「え、えぇ……おやすみなさい」



 奇妙な違和感を感じた。

 まず、何故この子たちは私の治療を行ったのか。

 次に、何故リナリアたちも私の治療を手伝ったのか。

 そしてそもそも、なぜ私は()()()()()()()()()



 「なんで、私は生きてるのかしら……」


 「なんでって、そりゃ回復魔法で治療したから」


 「そうではなく!! なぜわざわざ私を生かしているのですか!!?」


 「えっ……と……」


 「私はっ……あなたたちを利用していたのですよ!? 初めから私の欲望のためにこの世界に転生させて、あまつさえ殺そうとしたのですよ!!? 自分で言うのもその……なんなのですが、私みたいな存在は早急に殺した方がいいのではないですか?」



 水無月君たちに気を遣ったつもりはないし、自分の本心をそのまま言ったつもりだ。

 もし私が水無月君たちの立場なら治療などせずにすぐに息の根を止める、恐らくは一辺の迷いもなく無慈悲に一撃でとどめをさすことだろう。



 「なんでって言われてもなぁ……」


 「まさか、殺す必要がなかったからと言うんじゃないですよね?」


 「流石に病み上がりですぐバトルするほど馬鹿じゃないでしょ。それに、この面子に勝てると思います?」


 


 改めて、客観的に自分の状況を分析した。

 他の女神が一堂に会し、魔王であるイグニスや水無月君に懐いている神族、それに勇者たち、確かに勝てる見込みは限りなくゼロに近い。

 彼の言うことには一理ある、だがそうだとしても頃さない理由にはならない。

 きっとまだ他に理由が―――――――



 「それに」


 「……それに?」


 「()()殺すほどまだ非道じゃないよ」



 またしても耳を疑う言葉が聞こえた。

 「友達」ですって? 何を馬鹿なことを言っているんでしょうか、この人たちは。

 一度殺意を向けた相手に友達などと………綺麗事も度が過ぎればただの法螺だというのに。



 『ヒビキ、オ前モソロソロ休メ。コノ女ノ話シ相手ナラバ我ガ引キ継ゴウ』


 「……じゃあ、お言葉に甘えて。実は結構やばかった」


 『ナラハヤク行ケ』


 「ま、待ちなさい! まだ話すことが―――――!」


 『話ナラ変ワリニ聞イテヤル、後デ伝エテオコウ』



 この男は……まぁ、いい。

 水無月君も立った時に少しふらついていたからだいぶキテたんでしょう、後でこいつに伝えてもらえればひとまずは……

 って、なんで私は殺そうとした子の心配なんてしてるのよ。



 『何ヲ悩ンデイル』


 「……なんです、藪から棒に」


 『大方、ナゼ殺サナカッタノカナドト聞イタノダロウ? ソシテソノ答エハオ前ガ納得スルヨウナ内容デハナカッタ。違ウカ?』


 「腹立たしいほどに、その通りよ。彼自身、私を生かしている理由を上手く言語化できないでいた。あまつさえ私のことを友達などと―――」


 『不満カ? ソノ理由デハ』


 「不満ではありませんが解せません。水無月君たちは何故友達などと言ったのでしょうか」


 『ソノ、()()()()()()、トイウノハカツテノヒビキノ名前カ?』


 「かつての、ということは彼らの正体は知っているんですね。ええそうよ、水無月響というのが水無月君の本当の名前で――――」


 『ナラ何故未ダニソノ名デ呼ブ?』


 「……え?」



 そうだ、なんで私は、水無月君と呼んでいるのだろう。

 私にとってはどうでもいいことのはず、なのにどうして。

 


 『ソレハオ前モ、ヒビキ達ノコトヲ()()ダト思ッテイルカラジャナイノカ?』


 「そんなはずは……」


 『ナラドウシテアイツヲ殺サナカッタ?』


 「今のこの状況で殺せるはずないでしょう。病み上がりですよ私は」


 『ダガアノ距離カラナラバ如何様ニモ出来タハズダ、コトオ前ホドノ実力者ナラバ尚更。魔法ノ発動ヲ抑制サレテイルワケデモナイカラ攻撃出来ナイナドトイウコトモアルマイ……』


 「……」


 『答エラレナイナラ代ワリニ教エテヤロウ。殺セナカッタンジャナイ、()()()()()()()()()()。心ノ奥底デハ、アイツラノコトヲ完全ニ捨テキレテハイナカッタンダ』


 「そんなことない!!!! 私は……私はっ! 私利私欲のためにあの子たちを利用しただけ!! あなたたちを彼らの世界に送り込んだのだって、それらしい能力を与えたりしたのもただのマッチポンプなだけで……!!!」


 『本当ニソレダケカ!!? 本当ニ、ソレダケダト言エルノカ!!?』



 それだけなはずがないじゃない!!

 最初こそただ単に利用しようと思った、でもいざ殺そうと思うとどうしてか躊躇っている自分がいることに気付いた。

 そして思ってしまった、「もしも私とあの子たちが普通に友人同士だったら」などと思ってしまった。

 考えれば考えるほど殺すことに対して躊躇いが増えて行った、神族を雇ったのは予定通りだったけれど予定より多く雇ってしまった。



 それはきっと、私では水無月君たちを殺すことが出来ないから代わりに殺してくれる人たちを探していたからなのかもしれない。

 結果私は、そのような甘さをカグラに見透かされて裏切られた。

 そして裏切ろうとした相手に助けられた、皮肉な話よね。



 『二時間後』


 「え……?」


 『二時間後ニハ帰投スル予定ダ。ソレマデニ本心ト向キ合ッテオクンダナ』


 「ええ……そうするわ」


 『ソレト、今シガタ早口デベラベラト喋ッテイタコトヲアイツラニモ話シテヤルトイイ』


 「今の……って、もしかして」


 『全部口ニ出テイタ。デハ二時間後』



 不覚、一生の不覚。

 まさか思っていたことがそのまま言語化されてしまうとは……どうかしていましたね。

 二時間後か……ちゃんと、気持ちの整理をすることができるでしょうか。

残り五話くらいですかねぇ……

残りの話数が確定しているわけではありませんが長くても恐らく十話以内でしょうか。

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