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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
最終章:旅の終わり
206/221

一時撤退のお話。

ネタがっ!思いつかんっ!

 ああ、しくじった。



 魔法が放たれる直前、響の脳裏によぎった言葉はそれだった。

 せっかくここまで異世界での人生を歩み、最後の敵であるアザミとの戦闘までこぎつけた。

 なのに最後は想定外の内部破壊攻撃によって幕を下ろすとは、なんとも情けないものだと響は思った。



 今のこの体では避けることも出来ず、魔法を使えたとしてもカグラの魔法を防ぐほどの強度をもつ防御魔法を展開することは恐らくできないだろう。




 ――――詰んだ。




 全員がこうして地に伏せている状態ではまともな支援があるとも考えられない。

 響たちは静かに目を閉じて最期の時を待った。




△▼△▼△▼△



 















 おかしい。

 いくら待っても痛みを感じない、それどころか何も起こっていないような気がする。

 



 「なんとか間に合ったな」





 聞き覚えのある声が聞こえ、響はハッと目を開けて声の聞こえた方を向いた。

 そこには五人の人物が立っており、カグラの魔法がたった一枚の防御魔法によって遮られていた。



 「ぐっ……ううう………!!」


 「賢……介………? それに、琴葉……?」


 「おうそうだ。時間がない、すぐにここから離れるぞ」


 「離れるっつっても……な、なんだ!?」



 すると、響の体が浮いた。

 まるで見えない何かに持ち上げられているかのように。



 「ヒビキ君。着地は自分で頑張って」


 「その声、ミスズっ!?」



 直後響はぶん投げられた、恐らく魔法を使って投げたのだろう。

 彼方へと投げられた響の目に映ったのは巨大な岩のバリケードだった、その中には大勢の騎士団員ら戦闘員たちがいた。



 「来たぞ! 受け止めろ!」



 落下する響を騎士団員たちが受け止め、すぐさま傷の手当てが開始された。

 それから続々と梓や影山、アリアなどが響と同じように投げ込まれては手当てをされていた。




△▼△▼△▼△




 「賢介っ! もう持たない!」


 「こっちの精霊もそろそろキツイ!」


 「凪沙、最短ルートの再確認!」


 「とっくに確認済みっ!」


 「よし琴葉、ぶっ放せ!」


 「ペイン…………ウォーフェアっ!!!」




 その叫びの直後、カグラは破裂するんじゃないかと思わせるほど「ビクン!!!」と体をのけぞらせて気を失ってその場に倒れた。

 賢介はそれを確認するや否や地面へ直接魔法を撃ちこんで地面の土や岩ごと土埃を巻き上げて煙幕代わりに使った。




 「……逃げたか」



 煙が晴れる頃にはアザミたちの前から賢介たちは消えていた。




△▼△▼△▼△




 塹壕の中、響たちは体の不調を回復させながら突風のような出来事を頭の中で整理しているとそこへ賢介たちが転移してやって来た。



 「よ。随分とやられてたじゃねぇか」


 「賢介、お前らどうしてここに」


 「わりぃかよ。嫌な予感がしたもんでな、かっ飛ばしてきた」


 

 冗談かと思う響だったが話を聞いていくとどうやら本当に偶々タイミングが重なったらしく、遠方から響たちがやられそうになっていたところを発見してあの時に至るらしい。



 カグラの魔法を防ぐことが出来たのは、絵美里の適合能力によって防御魔法に「どんな魔法でも防ぐ」という属性と「衝撃と感覚だけを琴葉に送る」という二つの属性を付与していたものらしく、響たちが飛ばされたあと琴葉は智香の適合能力によって作られた精霊たちに痛覚を和らげてもらいながら彼女もまた適合能力でダメージをそのままカグラに反射していた。



 琴葉の能力は与えられた肉体的ダメージや苦痛をそのままそっくり相手に返すカウンター技、そのため琴葉が感じた痛みや苦しみがそのままカグラへと送られ、カグラはキャパシティを超えた苦痛を味わうこととなりその場に倒れた。



 そしてカグラが倒れた隙に賢介が土煙を上げて姿を隠し転移、今に至る。

 以上のことと響たちを投げ飛ばしたのが透明化したミスズであることを聞かされた響たちは心の底から運が良かったと安堵した。



 「とにかく、今は休め。琴葉の奴も休ませないといけない。色々と言いたいことはあるだろうが、お前ら全員休憩が必要だ」


 「だがっ……」


 「そんな魔力すっからかんの状態でまともに戦えるかよ。いいから休め、向こうも手駒を一個失ってる、深追いはしない」



 個人的には今すぐにでも再出発してしまいたい響だったが賢介に説得されて大人しくこの場で休息を取ることにした。

 冷静に考えてみれば椿やアキレアたちだってかなりの疲労とダメージが蓄積しているはず、かなりの戦力である彼女らが使えないとなれば戦力は大幅に減少するだろう。



 アザミが戦闘の余波で自ら魔物を殲滅してくれたおかげで、魔物にここが襲われる心配もない。

 束の間の休息、これがいつまで続くかは分からない、だが折角賢介たちから与えられたこの時間くらいは気を抜いてもいいだろう。



 響は安心したせいか瞼が重くなり、しばしの間眠った。

前書きと後書きは意地

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