内部破壊のお話。
短めです。
王室での戦いは即座に過激差を増した。
至る所に穴が開き、いつ崩れ去ってもおかしくない場所で響たちは戦っている。
そして王室如きの狭いバトルフィールドでこの頂上決戦は収まり切るはずもなく、流れ流されグリムたち各種族の勇者軍が魔物の大群と戦っている大平原へと変わった。
そして響たちがここに現れた途端、全ての軍へと撤退命令が指示された。
魔物たちも一斉に逃げ出したが響たちの戦闘の余波に巻き込まれて軒並み死滅していった。
今のアザミとカグラには魔物たちが死ぬことなど全くもって問題ではない、彼女らの敵は響たち、ただそれだけなのだ。
超高度魔法による地形が変わるほどの争い、今この平原は間違いなく世界で一番危険な区域になっていることだろう。
その元凶である響たちは能力をフル活動させて自分の身を守ることといかに早くアザミとカグラの二柱を倒すことが出来るだろうかと戦いの中で考察していた。
主戦力は椿・リナリア・アキレア・イグニス・カンナたち、そのサポートとして響たちは付いているが響・梓・影山・アリア・ソル・フラン・ネプチューンの七人はほぼ主力として立ち回っておりそれ以外が実質的にサポート役として立ち回っている。
合計十三人のアタッカー、一見多いようにも見えるが響たちの戦法はヒット・アンド・アウェイのそれであるため目まぐるしく攻撃手が代わる代わる入れ変わって攻撃しているためお見合いを起こして途中で攻撃が中断されることはない。
それに響たちは様々な戦場をかけぬけてきた勇者たちに引けを取らぬ一流の戦士だといえる、そんな初歩的なミスは犯しはしないだろう。
だが残念なことにこれだけやっても未だアザミとカグラを地に倒れさせることすら叶っていない。
というのも響たちが来る前に椿たちがだいぶ消耗していることに加えカグラの戦闘能力が他の神族たちを倒したことで飛躍的に上昇しており、障壁の耐久力及び復活スピードが段違いになっているからである。
おまけにカグラの純粋な戦闘力そのものが他の神族たちを遥かに上回っているためごく単純に強い、アザミに関しては響たち転生組に適合能力を与えた張本人であるため宿している魔力量や技量などがずば抜けて高く、互いが互いの力量を把握してコンビネーションを組んできているため厄介極まりないのだ。
「くそ……! 中々難しいな」
「ヒビキ、妾らも「こんびねーしょん」じゃ! 魔力量はまだいけるかの!?」
「なんとかっ!」
響と椿は二人で前へ出てお互いの魔力を融合させ球形にして超電磁砲の如き速度で撃ち出した。
階級にして壊級もしくは冥級クラスの大魔法、常人でなくてもそもそも避けることどころかガードすること自体不可能と思われるほどの魔法。
しかしカグラは全障壁を拳一点に集めてなんと正面から響と椿の合体魔法を打ち砕いた。
衝撃によって障壁が砕け散り辺りにガラスの破片のように粒子が漂い、椿は全員に今が攻め時だと叫び、武闘派のアキレアが先陣をきって突撃し障壁のなくなったカグラへと一撃重いのを浴びせようとした。
が、そうは問屋が卸さずアザミが転移してカグラとアキレアの間に立って防御魔法で踏ん張りながらカグラに触れて魔力を一気に流し込んだ。
その瞬間ほんの二秒ほど前に砕け散ったはずの障壁が完全復活を遂げた。
「カグラ!」
『承知』
アザミがカグラの名を呼び、カグラがそれに応えた。
すると障壁がカグラを中心に収縮し、アキレアはそれに対して物凄く「嫌な予感」がして即座にその場を離れた。
アキレアが飛び退いて退散するのとほぼ同時に収縮した障壁の粒子が一気に拡散・放出された。
その現象は簡潔に言えば高濃度の魔力粒子による広範囲攻撃でありその威力は馬鹿にならなかった。
生命のエネルギーたる魔力を直接相手の体に浴びせているため、食らった相手は外からも内側からも深刻なダメージを受けることとなった。
響たちもその例に漏れず、度し難いほど馬鹿げたダメージを防御魔法の発動すら出来ずに直接受けてしまい、全員が地に伏して呼吸さえままならない状態へと陥った。
どうすれば……意識が朦朧とする中、響たちの頭の中にとある文字が浮かんだ。
―――――聖戦武器。
あれさえ起動することが出来ればもしかしたらこの状況を打開できるやも知れない。
しかし、問題の起動方法が分からない。
『……呆気のない』
「魔力を直接打ち込まれるなんて思っていなかったのでしょう。後は殺して終わりです」
『個人個人やるのは面倒だ。範囲魔法で一緒に終わらせてやろう』
カグラが上空に魔方陣を展開し、一撃で仕留められるように充填し始めた。
そう簡単にはさせないと心で思いながらどうにか立ち上がろうとするも体全体が痺れて鈍くなり上手く力も入らずに数センチ体を持ち上げただけで力尽き、それを繰り返すばかりだった。
『さらば』
カグラの一言の後に魔法が、今、放たれた―――――――――
すまん遅れた