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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
最終章:旅の終わり
204/221

最終決戦のお話。

今回より最終章開幕です。

もうしばらく、お付き合いください。

 「グリム様っ! 残存勢力、残り約半数と思われます!!」


 「よしいいぞ!! このまま攻め立てろ、ただし油断だけはするな。不用意に攻め込みすぎるな!!」


 「了解!!!!」



 魔王大陸と竜王大陸の狭間の大平原、この場所で正真正銘、五種族と魔物たちが真正面からぶつかり合っていた。

 何も遮るものがない場所だからこその正面対決、それは彼らが経験したことのないほどの熾烈な戦場となっていた。

 辺りを見渡せどそこにいるのは多種多様な魔物の数々、小型のものから大型のもの、見れど視れど数多の化物がひしめき合い呻き合い血みどろの戦いに身を委ねて殺戮と残虐の快楽に溺れながら人をただの食料としか思っていない魔物たちは己が心の赴くままに人を殺している。



 一方人は人で必死に殺されないように目の前の魔物という外敵をひたすらに殺し殺し殺しつくしている、五種族と魔物たちの間に違いがあるとすれば、それは「死にたくないから戦う」ことと「ただ殺すことしか知らない」くらいだろう。






 殺るか殺られるか、食うか食われるか、そして生きるか死ぬか。

 純粋な命のやり取りがここでは行われていた。



 



 そんな殺伐とした戦場から少し離れ、魔王大陸を象徴する君主が住まう魔王城にて、それを凌ぐほどの戦いが行われていた。

 相対するのはどちらの陣営も正真正銘の()、故に人の到達しえない高次元の戦争が魔王城の王室で繰り広げられていた。

 たった一室の攻防ではあるが、その密度は外の戦いの比にならないほど濃密。




 この戦場に、言葉は交わされていなかった。

 本来なら連携などを損なうためあった方が良い身内同士の言葉の交わし合い、しかしここにはそれがほとんど見受けられなかった。

 別に一切ないわけではなく互いの名を呼び合ったり相手の魔法がどういったものなのかなどの分析などについての会話は行われていたがそれ以外はなく、合理性の身を突き詰めた会話をしながらも両陣営は抜群の連携を取っていた。



 

 そんな激戦の最中、偶然にもカグラの放った魔法が床を吹き飛ばし、その衝撃で出た破片の一部がリナリアの目の近くを掠めてリナリアはほんの一瞬怯んだ。

 時間にして一秒にも満たないその隙をアザミとカグラは見逃さず、リナリアとの距離を詰めてリナリアを集中的に攻めた。

 リナリアのフォローに回ろうとした椿をアザミが範囲攻撃魔法で近寄らせず、一気に二人分攻撃が手薄になったことでそれまで拮抗していた状況が一変、アザミとカグラの二人が優位に立った。



 そしてリナリアの手に魔の手が迫ったその時、魔王城の天井がけたたましい音を立てて崩壊し、瓦礫の上には二人の人影があった。

 その人影たちは一斉にアザミとカグラを二手に分かれて襲撃し、どさくさに紛れて椿がリナリアを救出、何とか体勢を立て直すことに成功しさらにはアザミたちとリナリアたちとの間に物理的な距離が開いた。



 『申し訳ありませんイグニス様。遅くなりました』


 『クク………待チクタビレタガ一番乗リトハナ、良ク戻ッテキタ、ハーメルン』



 やって来たのはハーメルン・影山ペア。

 二人は人王大陸で姉様と兄様を撃退した後すぐにこの魔王大陸に飛んできた、どこよりも決着が早く着きどこよりも早くに移動を開始したため一番乗りで到着した。



 それからすぐにリナリアたちのいる方からはまた別の方向から三つの魔法弾がアザミとカグラ目がけて飛来し二人はそれをガードしつつ反撃、しかし何かで切られたかのような音が聞こえ直撃するには至らなかった。

 ハーメルンたちに続いてやって来たのはソル・フラン・キュリアの三人だった、三人とも体力や魔力は万全とはいえないが戦えないわけではない。

 それから転移されてきたのは梓とレイとヴィラ、続いて響とアリアそしてネプチューン、最後にマリアとセリアが転移してきたがなにやら言いたそうな顔をしていた。



 「ヒビキ、それからアリア先輩」


 「な、なんだ?」


 「海王大陸の敵やっつけるの早すぎませんこと!? 増援に向かったら「もう終わりましたよ」ってフューネって方に言われてびっくりしましたわよ!!?」


 「別に……僕たち悪くないよね、これ」


 「カンナ、お前来たのか!?」


 「悪いアキレア? たまには本気で戦う機会だってほしいのよ私だって!」


 

 敵前で謎の怒りをぶつけられながら響とアリアは苦笑いをし、アキレアはカンナが来たことに少々驚いていた様子だった。

 というよりは、まさか響たちが女神と共に来るとは思っていなかったという方が正しいか。

 転移したメンバーが全員返ってきて援軍が加わったことによって響たちの軍勢の数は強化された、だがリナリアたち残留組を見るとかなりボロボロで疲弊していた、そうとう苛烈な戦いが行われていたのだろう。

 アザミたちの方を見ると表情には出していないが出血や打撲痕などが見られ両者いい具合にダメージを追っている状態だと見受けられた。



 『役者ハ揃ッタ、カ』


 「この力の増幅具合、まさか全員が破れるとはな……少々侮っていたらしい」


 「さっさと終わらせて、また管理業に戻らねばな。今回ばかりは骨が折れそうだが」


 


 舞台は整い、役者は揃った。

 恐らくもうアザミ側に神族をけしかける余裕も、そもそも今から付き従うような神族もいやしないだろう。

 敵は二柱、大してこちらは手負いと言えど五柱の神が戦力に加わっている、そして何より響たちが戻ってきた。

 起動していないとはいえグリムたちは聖戦武器も持っている、勝つチャンスは今しかない。




 正真正銘、ラストダンスの始まりだ―――――。

今回は最終章の導入も兼ねて若干短め、展開少なめでお送りしました。

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