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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第九章:世界の命運が握られているようです
203/221

雷VS氷のお話。

昨日投稿できなかったのが悔やまれり

 響は自分の体をぐるりと一周させるようにライフルを作成し、左回りに撃ちながら回転させていった。

 ミグラントは神族の持つ障壁でそれを防ごうと特に構えたり防御をしたりする様子はなかったが銃弾が当たって思いのほか速いスピードで障壁が壊れ始めたことに危機感を覚えすぐに雷撃の壁を展開して銃弾を防ぐようにした。


 「うーんやっぱり対策速いな。先輩」


 「ほい来た」



 アリアは空中に氷柱を展開してそれをミグラントへと射出したがミグラントは雷撃の壁を残しつつアリアのように雷の矢を響たちへと撃ち出した。

 響は大きく動きながら矢を回避しアリアは防御魔法を展開して防いだ、響は外周を走りながら二丁拳銃で弾丸を放ち障壁にじわじわと負荷を蓄積させていった。

 そのことにミグラントも気づき始めたのか次第に回避運動を取るようになり、アリアと響どちらから片づけるべきか検討し、先にアリアの方へと手を伸ばした。



 恐らくは先に倒せる可能性の高い方を選択したのだろう、中途半端に響を追い詰めても結局は二対一に変わりはなくネプチューンたちが参戦してくる可能性も大いにある、ならば殺しきれる方から確実に数を減らしていくべきだと結論付けたのだろう。



 響の後方支援を警戒しつつ軽い身のこなしでアリアとの接敵距離を詰め、足技を中心とした攻撃でアリアを翻弄した。

 しかしアリアも速い攻撃程度で怯むような人物ではない、彼女もまたそれなりに戦闘経験を積んできた玄人であることに変わりはなく徐々に対処法を見つけ反撃のタイミングを伺っていた。

 相手は神族、そう易々と反撃の隙を見せるはずもなく、それを察した響は遠距離から中~近距離戦へとスタイルを変えて魔法を主体とした攻撃を繰り出すようにした。



 攻撃魔法の合間合間に拘束魔法や空間魔法を飛ばして何とかアリアの攻撃タイミングを作ってあげようと響は思っていたのだが、あまり上手くはいかなかった。



 「(くそ、思ったより先輩とあいつの距離が近いな……)」



 そう、ミグラントとアリアの距離は腕一本分の距離くらいしかない。

 下手に高威力の魔法を撃ってアリアに当たりでもすれば一気にミグラントはアリアを殺しにかかるだろう、かといって接近戦に持ち込んでもハイスピード戦を主としている奴相手では一度リズムを狂わされると共倒れする可能性も無きにしもあらず、殺傷能力では響の方がアリアより上、アリアを殺しかねない。



 だとすればアリアとミグラントとの距離を無理やりにでも開けてこちらの優位な状況に持ち込むか、響がそう考えた時、ネプチューンたちが遠距離から魔法を撃ち始めた。



 ミグラントは雷撃の壁で防ぎ、アリアは意識がそちらへと向いた一瞬の隙に移動ではなく転移によって距離を開けて響の隣へと現れた。



 「無事ですか」


 「正直危なかった、下手にヒビキ君が突っ込んできてくれなくて助かったよ。君のことも考えながら戦うのはちょっと分が悪かった」


 「まぁいずれにせよ。体勢を立て直します、っていっても特に手立てがあるわけでもないですが」


 「相手が雷使いだから、水で感電させようなんて作戦も出来ないし……」



 と、アリアがそこで何かに気が付いた。

 アリアの目線の先にはネプチューンたちが魔法を放って雷撃の壁に阻まれた時に出来た大量の水からなる水溜りがあった。



 「あ……」


 「何か思いつきました?」


 「ああ、ちょっと耳貸せ」



 アリアは響に今しがた思いついた作戦を耳打ちし、響はアリアの作戦を聞いて「あ~……!」と言った声を上げた。

 なるほどその手があったかと言った声を上げてその作戦を了承し、早速その作戦の下準備に取り掛かった。



 「海王様」


 「ぬぅ? 何用だ?」


 「あいつの周りに、水溜りを出来る限りたくさん作っていただきたいのです。攻撃は当たらなくて構いません、むしろ当てないようにしてください」


 「何故だ? 攪乱ということか?」


 「有体に言えば、そうなります。奴を拘束し、無力化させる作戦を考えついた次第です」


 「……よし分かった、協力しよう。ネプチューン、聞いておったな?」


 「ったりめーだ! 何すんのかは知らんが手を貨してやる! フューネ、お前も手伝え!」


 「か、かしこまりました!!」



 海王、ネプチューン、フューネの三人はそれぞれ離れた場所にて魔法の準備を開始し、響とアリアはその時間稼ぎに回った。

 ミグラントは雷撃を鞭のようにしならせて今度はネプチューンたちから狙った、急に統率の取れた動きをしてさらに魔法のチャージを始めているということは何かしらの算段が付いたのだろうとミグラントは推測した。



 ならば作戦の要から潰していく方が良いだろうと一番戦闘能力の低いフューネから殺そうとしたがそうは問屋が卸さず響が完璧に防御役として裏方に徹していた。

 その間アリアがミグラントの気を引き、頃合いを見計らって響がアリアと役割をバトンタッチして入れ替わった。

 響とアリアの攻撃のスタイルはそれぞれ違うためミグラントは次第に攻撃のリズムを狂わされていった、特に響の攻撃は適合能力による銃作成と魔法の混合戦闘方なため銃を知らない者からすれば未知の攻撃方法なため非常に厄介なものとなっていた。



 「お前らぁ! こっちはいいぞ!!」



 ネプチューンが叫び、準備が整った旨を響とアリアに知らせた。

 よし、と二人はアイコンタクトの後に頷いた。



 アリアの合図でネプチューンたちは一斉に大量の水をミグラントに向けて放った。

 それよりも早くに響は転移魔法でミグラントの眼前に転移、組み伏せ、拘束魔法で固め再び転移してその場を離れた。

 ミグラントは身動きの取れない中、自分を囲うように雷撃の壁を展開した。



 「今っ」



 が、響が空間魔法で水流弾の方向にだけ壁に穴を開け、大量の水が雷撃の壁の中に流れ込みあっという間にミグラントは水の中でおぼれた。

 たまらずミグラントは雷撃の壁を解除し、大量の水が辺りに流れ出た。



 ミグラントを中心とした大きな水溜り、その端にアリアは手をつけて魔力を流し込んだ。

 するとどうだろうか、見る見るうちに水が凍り、大量の水溜りは巨大な氷塊へと姿を変え、ミグラントはその氷塊の中へと閉じ込められた。



 近くにいるだけで息が白くなるほどの冷気を放つ氷塊、アリアは更に魔力を込めて温度を下げ、限りなく絶対零度に近い温度にまで凍らせた。




 「よーっし、上手く決まった!」


 「何をしようとしたのかと思ったがこういうことだったのか……つーか寒っ!?」


 「そりゃあ、物体が冷える最大まで冷やしたからね」





 アリアが提案した作戦はこうだ。

 ネプチューンたちが水を主体とする魔法を使用することから水を状態変化させて氷にすることが可能だと考えたアリアは、それを使ってミグラントを凍らせて体の自由を奪うという作戦を提案した。

 ミグラントは雷撃の壁を多用する、それを逆手に取って、壁の展開が行われると同時に響に壁の一部に穴を開けてもらうことで水を直接浴びさせるようにした。



 唯一懸念されていたのは神族の持つ障壁によってミグラント本体が凍らないのではないかという問題だが、意外と着眼点が鋭いミグラントならば真っ先に魔法を貯めているネプチューンたち、しかもその中で最も弱いであろうフューネから狙うことが想定されていた。



 最初に響ではなくアリアを狙ったのも確実に殺せそうな方から狙ったから、そう推測したアリアは同様のことをシチュエーションが変わってもするだろうと予測し、その予測は見事的中した。

 そのおかげでミグラントも気づかぬうちに障壁は損傷し破壊された、元々響の銃撃によってボロボロになっていたため後はほんの少し手を加えてやればよい話だったのだ。



 響は氷漬けになったミグラントを空間魔法で空間ごと捻じ切り、虚数の彼方へと消し去った。

 結局残ったのは頭に穴の開いた姉様と兄様の死骸だけ、この後始末はこちらで片づけるとフューネが申し出てくれたので言葉に甘えて任せることにした。



 「さて、海王。いかがかな」


 「……正直、救われた、助かった。過去の非礼は詫びよう」


 「別に気にしてませんよ。ただどうして味方してくれなかったのか気になるんですが」


 「……イグニスに脅されておったのだ」


 「イグニスに……?」


 「爺の言う通りだ、『オ前タチデハアヤツラノ足手マトイダロウ、大人シクスッコンデイロ』ってな。お前たちの誘いを断ったのはそういう理由だ、海王大陸(ここ)を脅かしかねないって言い残してな」



 ネプチューンの口から語られる、かつての日の真相。

 もしかしたらイグニスは、言い方は悪いが海王族が戦力として響たちの足を引っ張るやも知れないという懸念を、自らが悪になることによってその場に固定させていたのかもしれない。

 そうすると、イグニスもやはり、根っからの悪ではないらしい、彼はただ魔王大陸の繁栄を平和を願ったただの君主に過ぎないということだ。



 「まぁなんだっていい、そういう話は後日談として戦争が終わった後に聞かせてもらうことにして……僕たちは魔王大陸に向かうが、どうします?」


 「行くに決まってんだろ」


 「じゃあ決まりだ。早速だがネプチューン殿、僕たち魔力すっからかんだから僕たちの分の転移分の魔力も肩代わりしてほしーな!」


 「先輩……」



 響は苦笑し、ネプチューンはため息を吐きながら「しゃーねーな!」と快く承諾してくれた。

 フューネと海王は三人の無事を海王大陸から祈っていると四人以外の声が聞こえた。






 「そういうことなら私にお任せくっださいなのですよ!」





 

 無邪気な子供のようなその声、そしてその声と共に響たちの気づかぬうちに現れていたもう一人の正体不明の少女が一人、もとい、幼女が一人。



 「……迷子?」


 「なっ……そこな男! こう見えても私はれっきとした女神です女神!」


 「女神……アキレアやリナリアと同じ……?」


 「そうです! 私の名前は女神カンナ! これでもれっきとした女神だから、女神だから!!」


 「なぜ二回も……?」


 「大事なことだからです!!」



 「ふんす!」と無い胸を最大限に張ってどうにか威厳を保とうとする女神カンナ。



 「それで女神様がなぜ僕たちの元へ?」


 「魔王大陸に行くんでしょう? 向こうにはアキレアたちもいるのよね、気配で分かるわ。私もそっちに向かうからついでにあなたたちも向こうまで転移させてあげようと思って。迷惑だったかしら?」


 「とんでもない、むしろ願ったりだ」




 ありがたいことにカンナが自ら魔王大陸までの特急便役を担ってくれるらしい、響たちにとっては渡りに船、悩む間もなく響とアリアはその提案に乗った。

 



 かくして響とアリアそしてネプチューンと女神カンナの転移が確定し、これでキーマン全員が魔王大陸へと再集結することが決定された。

 彼らが行くは、この世界の未来を決める分水嶺、果たして――――――。

そろそろ新章突入いたします。

次回にするかもう少し後にするかは現在検討中ですが、次回から魔王大陸へと戻ることは確かです。

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