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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第九章:世界の命運が握られているようです
202/221

大海のお話。

諸事情により更新活動を行うことが出来ませんでした、申し訳ありません。

 「そこ行くお兄さん、お一人でどこ行くので?」


 「……ちょっとこれから、海の怪物を対峙しに。お姉さんは?」


 「怪物対峙に行く愛しの彼氏のお手伝いに」


 「ふふっ」



 海王大陸と竜王大陸の狭間の海岸、響は後ろから聞こえた声に振り向き、声の主がアリアだと分かるとちょっとノリに乗ってあげようと思い同じようなノリで言葉を返した。

 しかし笑いをこらえきれなかったのか笑ってしまい、アリアもそれにつられて口元に手を当てながら笑った。



 「なんだここにいるんですかアリア先輩」


 「なんとなく、ここに君がいる気がしてね。というか、結局まだ先輩付けなのかい?」


 「なんか、これが一番呼びやすいというか、なんというか。そのうち変えていきます」


 「そう。それで、もしかしてもう終わっちゃったかな?」


 「いいえ、まだ何もしてません。それよりアリア先輩、なんか疲れてます?」


 「あー……バレたか。実は―――――」



 アリアは響にここまでの経緯を知らせた。

 他の大陸へと応援を向かわせた後、神族のであるイブリシアたちと戦ってきたことを嘘偽りなく話した。



 「なら疲れるのも無理ないですね。先輩はここで休んでてください、俺がどうにかしてきます」

 

 「いやいや、なら何のために僕はここに来たんだってことになるだろ。当然僕も行くよ、メインの戦闘はそっちに任せるけど」


 「……分かりました。まぁ、なんかあったら守りますよ。彼氏ですし」


 「嬉しいことを言ってくれるね、じゃあ守ってもらおうか」


 「どれくらい魔力残ってます?」


 「君のオリジナル魔法を自分につけて海に潜って、緋級魔法を十発撃てるかどうかくらい」


 「だいぶ消耗してますね。無茶はしないでくださいよ?」


 「分かってるって」



 響は海に入るために「ニュートンの林檎」を自分とアリアの周りに張って、アリアの準備が出来たと分かると自分が先導して海の中へと入っていき続いてアリアも海の中へと入った。




△▼△▼△▼△




 「ネプチューン!! 族はまだ片付かぬのか!!」


 「黙ってろクソ爺!!! いいから手ぇ貸せ!」


 「今こうして手伝っておるだろうが! くそ、なんなんだこやつらは!」


 

 海王大陸王都、そこでは海王族の勇者ネプチューンと海王族の長である海王の二人が未曽有の危機に立ち向かっていた。

 相手にするは勿論神族と姉様兄様の三体、数で劣るネプチューンたちだが何とか技量で渡り合っているという感じだろうか。



 「ふーん、海王族の奴ってどんなもんかと思ってたが意外と呆気ないのな」


 「おーおー言ってくれるなあんた。フューネ、避難はどのくらい済んだ!」


 「ほぼ完了いたしました! 残っているのは我々だけかと」



 そう答えたのは海王の侍女、フューネはネプチューンたちの元へと駆け寄り戦いに加勢した。

 神族の男は自らの名を「ミグラント」と名乗り、紫の雷撃を体中から迸らせながらその雷撃を利用したスピードと攻撃の正確さを武器にネプチューンと海王を押し込めていた。



 「お前ら、俺が戦っている間にこの大陸を蹂躙して来い。勇者がこの程度なら、この種族の戦士もたかが知れていよう……」



 姉様と兄様はミグラントの命に一つ頷くと駆け足で市民が避難した方面へと走って行った、すぐに後を追おうとするネプチューンだったがその行く手をミグラントが雷の壁を作って阻んだ。

 このままでは折角生き延びる可能性のあった罪のない一般市民たちが虐殺されてしまう、苦悶の表情を浮かべるネプチューンたちに勝ち誇った顔をして魔法の充填をするミグラント。



 




 だがそのすぐ後に「ダァーン…………!」という鈍い破裂音が二発鳴り響き、姉様と兄様は死にはしなかったものの動きを停止した。

 ネプチューンたち、ひいてはミグラントまでもが聞きなれない音のした方向へと振り返った、しかし雷撃の壁が邪魔でよく見えなかった。




 やがて雷撃の壁にバカでかい氷柱が何本も突き刺さって雷撃の壁が耐え切れずに崩壊し、向こうの様子が見えるようになった。

 壁の向こうでは姉様が額から血を流して浅く呼吸を繰り返し、兄様もこめかみのあたりから血を流しておりぐったりとする姉様を抱えて何度も何度も名を呼び、涙をボロボロと流していた。



 「流石にこんなこと目の前で見せられたら心が痛いんですが……」


 「仕方ない、戦いとはこういうものだ」



 そしてそんな二人の横を何事もなかったかのように歩く男女のペアが一組、男の方は拳銃を二丁構え、女の方はポケットに右手を突っ込んで余った左手で男の頬をつついていた。

 


 「姉様っ!! 姉様姉様姉様姉様っっっ!!!!」


 「に………さま………」


 「姉様……!」


 「私、油断しちゃってた、みた……い、ね……兄様は、生きて…………」


 

 姉様は兄様に弱々しく微笑み、腕をゆっくりと上げて兄様の涙を拭い、そのまま死んだ。

 兄様は「あぁぁっ………!!」と情けない声を上げながらするりと頬を落ちていく姉様の手を握りしめながらぎりぎりと歯を噛みしめて明確な殺意を瞳に宿して雄叫びと共に男女のペアへと走って行った。

 まず男の方へと拳に魔力を纏わせて殴りかかろうとしたが突然体がピタリと止まった、だが兄様は神経の一本一本が磔にあったような感覚に蝕まれていながらも自分と姉様を撃った男だけでも殺そうと全身に力を入れて体を前進させようとしていた。



 だがそんな頑張り虚しく、男は兄様の額に銃口をピッタリと密着させ、引き金を引いた。

 兄様の頭に風穴があき、脳漿が飛び出し、目がギョロリと上を向いて兄様は全身の力を脱力させて倒れ、そのまま息を引き取った。



 「あんたら……あん時ハイラインたちと一緒にいた!」


 「おお……!」



 ネプチューンと海王はその男女のペア―――――響とアリアに気が付き、感嘆の声を上げた。

 ミグラントは響たちを冷ややかな目で見つめ、響たちの方へと歩いていき、アリアと響はいつでも攻撃に映れるよう警戒していたがミグラントは二人の横を通り過ぎ兄様の遺体を姉様の遺体の隣へと移動させた。



 「……これでもこいつらは、俺を慕ってくれていた数少ない奴らでな。嫌味を言うこともあったが、退屈しのぎにはもってこいな愉快な奴らだった」



 ミグラントは立ち上がって雷撃の出力を上げて響たちの方を睨んだ。






 「お前らは……先に殺してやる」


 「来るよ」


 「分かってます」





 ミグラントが復讐の雷に震え、響とアリアへ襲い掛かってきた。

このくらい遅れることはもうしばらくはないかと思います

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