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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第九章:世界の命運が握られているようです
201/221

凶刃のお話。

もう少しで各大陸の奴が終わりそう

 「なんだなんだぁぞろぞろ増えやがって……カグラの野郎、面倒な仕事押しつけやがって」


 

 神族の男は鎌のような刃の剣を肩にトントンと当てて気だるそうに梓たちを見た。

 途中斬撃を食らっていたのか足に切り傷が出来て足に上手く力が入らない梓にセリアが回復魔法をかけておりそれを守るようにヴィラとレイとマリアが立ちはだかっている。



 「セリア、アズサの傷の回復にはいくらほどかかりそうですか?」

 

 「一見浅いように見えますが結構パックリといっています。五分ほどいただければ完治出来ます」


 「じゃあ、それまで時間を稼げばいいわけね」


 「あわよくば倒しちまっても、だな」


 「あんまり調子に乗らないの、全く」



 ヴィラがレイをなだめ、マリアが腕組みをして琳とした表情を保っていた。

 神族の男は濁点の付いたような「あああああぁぁぁぁぁー……」という声を出して心の底から面倒くさそうにしていた、がすぐに武器を構えなおしてマリアたちにこう言った。



 「お前らが誰だか知らねぇけど、こっちは急にカグラに仕事押しつけられてイライラしてんだ。ちったあ楽しませてくれないと困るぜお前ら」


 「そうですか。ですが生憎(わたくし)たちはそのような考えはありませんのでご了承をば」


 「あっそ、まぁいい」



 神族の男はシミターをクルクルと振り回してマリア目がけて斬りかかってきた、マリアは臆することなく正面から防御魔法で防ぎキッと睨み付けながら地面を杭のように隆起させて当てた。

 男の顎にクリーンヒットしたが少し血を流しているだけで怯んだ様子はなかった、それどころか返って神族の男をキレさせたようだ。

 神族の男はマリアの防御魔法を蹴りで粉砕し、マリアは「うそぉ!?」と声を大にして驚き間一髪でシミターの攻撃をかわしたが髪の毛の先がはらりと切られていた。



 その間にレイとヴィラが左右から攻め立て息の合ったコンビネーション技を見せていき神族の男は舌打ちをしながら防御魔法を使わずに的確に防いでいた。

 レイとヴィラはアイコンタクトでお互いの動きを予測し一切の声や呼び動作も出さないので下手な魔法よりもタチが悪く厄介なのだ。

 しかしそこは元々の戦闘センスなのか男は数発攻撃をもらいながらも魔法を使わずに防御をしながら鋭く反撃をし、レイがいくつかの切り傷を作ることになってしまうがそのくらいでは怯まずレイが傷つけられたことにヴィラが怒り攻撃のスピードが増していった。



 「めんっっっどくせぇなぁ!!!」



 男はそう叫ぶと周囲に対して全方位への範囲攻撃を放った。

 二人は咄嗟に防御魔法を展開することも出来ず派手に吹き飛ばされ、回復しているセリアと梓が丸見えになってしまった。

 すぐにマリアがフォローに入って男の足を払って腹を蹴ったが障壁が邪魔でダメージを入れられず、足を掴まれて後方へと投げ飛ばされた。



 

 いよいよむき出しになった梓とセリアに男は一歩踏み出すとマリアが先ほど立っていた地点から魔方陣が一つとそれを囲むように六つ、計七つの魔方陣が地面に展開され局所的な爆破が起こった。

 煙幕が辺りを包み、梓とセリアは煙に咳き込んで回復の手が少し止まってしまった。




 

 そして煙の中から神族の男が飛び出した。

 男の右足は爆風によって障壁ごと吹き飛ばされておりボタボタととめどなく流れる血液とズキズキと痛む足に顔をしかめながら舌打ちをしていた。


 「上手く引っかかってくれましたわね! アズサ、セリア、無事ですか!?」

 

 「けほっけほっ……無事ですがお嬢様、危うく巻き込まれるところでしたよ!!」


 「マリアちゃんって、時々こういう突飛なことやるよね、昔から」


 「ご迷惑をかけます……」


 「賢いわね、今の」


 「ああ、俺たちじゃ思いつかなかった」



 レイとヴィラが復帰して神族の男へと迫り両腕と左足に杭の形をした魔法を投げ撃ち、刺し、身動きが取れなくなったところにマリアが壊級魔法「聖釘エレナ」を胸の中心に突き刺した。



 「さ、色々と話してもらいますわよ」


 「油断するなよマリア」


 「終わった後が、一番危険なのよね」


 「怪我の治療終わりました。これより向こうの敵の無力化に向かいます」


 「じゃあ私も行くよセリアちゃん。まだ暴れ足りなかったから」



 そう言って二人は残った姉様と兄様の鎮圧に向かい、マリアとレイとヴィラの三人が神族の男を見下ろす形となった。

 


 「あーあー、やられちまったなぁ」


 「とりあえずお名前をお聞かせください。私はマリアです」


 「……ゴルロイスだ。それよりお前ら、このまま俺を生かしておいた方が良いぜ」


 「あら、命乞いにしては少しつまらないんじゃない?」


 「命乞いでもねぇし殺したきゃ勝手に殺せばいい。ただ、俺を殺したらその分、あいつの力が増す」


 「あいつ?」


 「カグラっつーやつがいんだ、そいつは俺たちの力を吸収する能力を持っている。しかも他の親族が死んだら自動的に吸収される、今頃結構な力吸収してんじゃねぇか?」




 衝撃的な言葉に三人は思慮した。

 この話が本当なのであれば、仮に現時点でゴルロイス以外の親族が全員打倒されている場合かなりパワーアップをカグラが果たしているということになる。

 となれば、魔王大陸に残してきた椿たちの安否が怪しくなってくる。




 「ちなみに、神族は他の神族がどこで死んだか分かる。今生き残ってんのは俺と、海王大陸のとこだけだ」


 「じゃあ、もう……」


 「ああ、あいつ、だいぶ力を付けている頃だろうぜ。そんでもってちょいと癪だが――――――――」




 次の瞬間、ゴルロイスは両手いっぱいに力を入れて杭を引き抜き、誰にも反応できない速度で自分で自分の喉を切り裂いた。





 「―――――俺もあいつの力になるとしよう!」




 その一言を残してゴルロイスは死んだ、自決だ。

 マリアは完全にゴルロイスの死を確認すると、大きな声で「セリア!!」と叫んだ。

 セリアは急に呼ばれたことで少々驚きながらマリアの方を向いて返事をした、すでに梓との二人で姉様と兄様の相手はほとんど終わっていたところだった。



 「今すぐ海王大陸に飛びます! 付いてきなさい!」


 「この方たちはいかがしますか」


 「放っておきなさい。その子たちはもう何も出来ません、拘束しておいてください」


 「はい」



 半ば焦りながらマリアはセリアと共に海王大陸へと飛んだ。

 梓もすぐに向かおうとしたがレイとヴィラが、「アリアが妖王大陸に飛んだあと海王大陸に飛び、そこには響がいる」という予想を立てていたことを話し、自分たちは魔王大陸へと飛ぼうと提案した。

 少し悩んで梓も同意し、三人は一足に魔王大陸へと転移し、姉様と兄様は拘束魔法に縛られたままその場に残された。



 「ねえ兄様、どうしましょうか」


 「どうしようか姉様。僕たちも死んじゃおうか?」


 「いいわね。きっとこのまま生きていても拷問されちゃうわ、そんなの嫌よ痛いもの」


 「僕も嫌だよ。じゃあ、僕が姉様を殺すから、姉様は僕を殺してよ」


 「ええ、分かったわ」


 「愛しているよ姉様」


 「愛しているわ兄様」



 短いやり取りの後に姉様と兄様は言葉の通りに互いに互いの心臓を魔法で貫き、ゴルロイスと同じように自ら進んで命を捨てた。

残るは海王大陸のみ

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