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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第九章:世界の命運が握られているようです
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神速のお話。

なんやかんやで二百話目!!

 次は獣王大陸、ソルの部隊。

 豪傑の獅子たちが姉様と兄様の二人を引きつけ、ソルが神族を相手取るという形で戦っているという状況下で神族が口を開いた。



 「ぁっは! ぃいいぃねえその槍!! 可愛いなああ!」


 「……気色の悪い男だ。しかも女々しいときた」


 「んん~、まぁボクってば可愛いし! いいなーその槍、気に入っちゃった。君を殺して奪いたいけど君も可愛いからなー。どう、その槍ごとボクの物にならない?」


 「断る! この槍はアキレア様から頂いた大切な槍。お前のような奴に触れさせるには勿体なさ過ぎる。無論私もお前の物にはならない」


 「そっ……かー!」



 ニコニコと気味の悪い笑みを浮かべる凪沙のように体の線が細く女々しい神族の男はソルに誘いを断られるとすぐに戦闘モードへと移行し確実に殺すつもりでソルに襲い掛かった。

 ソルは冷静に対処し、防御魔法を展開させながらステップを踏んで素早く後方に回り神族の足を狙った。

 しかし後ろに目でもついているかのように完璧なタイミングでソルの攻撃を回避してアクロバティックに動き回ってつま先でターンした。



 「自己紹介してなかったね! ボクはフェリン、君は?」


 「ソル・リーハウンナ」


 「ソルちゃん。お互いに自己紹介したし、じゃあ殺し合おうか」



 フェリンは狂気じみた笑顔で全ての指に魔力を纏わせそれを細く長く鋭利な鉤爪状に変形させて初速からトップスピードで間合いを詰めてきた。

 ソルは一度槍の持ち手を地面に叩きつけて「コン」と鳴らして構えなおし、迫りくるフェリンを迎えた。

 ソルは槍を巧みに使いフェリンの鉤爪を防ぎ守り隙を見つけては反撃をしたが神族の持つ障壁に阻まれてしまい直接的なダメージを与えることは出来ず障壁に防がれると今度はそこがフェリンに攻撃を許す場面となってしまいまたガードしては反撃して障壁に阻まれてガード、それの繰り返し。



 「便利だよねぇこのバリア! おかげでこっちは相手の攻撃を気にせずにずっと攻め続けられるんだもの!」

 

 「だが、無限の耐久力というわけではない。その障壁が割られる時、それがあなたの最期です」


 「んっふふふ。そういう強がり大好きだよボク、やっぱり君ごと手に入れてもいいよねぇ!!!?」



 フェリンは更に攻撃の速度を上げ尚且つ地面やゼロ距離から魔法を放つなどして攻撃の密度も上げた。

 ソルは槍を器用に扱って鉤爪を凌ぎながら常時防御魔法を展開して壊されてはまた展開し直すことを繰り返していた。

 フェリンの魔法はいずれもが緋級魔法以上の高火力魔法そして莫大な魔力、対してソルは戦闘能力こそずば抜けているが魔力量は一般のそれよりも少し多い程度、持久戦に持ち込まれればじり貧になるのは火を見るより明らかだった。



 もちろんソルもそのことは分かっている、何とかしなければならないということも分かっているが如何せん人員が足りない。

 豪傑の獅子たちが姉様と兄様の二体を抑え込んでくれてはいるが向こうも恐らく時間の問題だろう。

 せめて、せめてこの障壁さえどうにかなれば……。



 


 「困っているようですねいつぞやクエストを共にした方!」





 ソルの願いを答えるかのようにフランが突如どこからともなく現れフェリンとソルの間に立ちはだかってフェリンを切りつけた。

 一歩間違えば自分が斬撃の雨に見舞われることになるかもしれない危険極まる行為だがフランはそれを一切の迷いなくそして一切の恐れなくやり遂げた。

 フランがフェリンに斬撃を咥えているその途中にキュリアがソルをグイッと後ろの方に引っ張って距離を取りその隙に回復魔法をかけた。



 「無事ですか?」

 「はい……あなたは存じませんがあちらの方は確か、フラン・ヘルヴォールさんでしたか」

 「ご存知でしたか」

 「ええ、数年前に一度任務を共にしまして。それであなたは?」

 「私はキュリア・ノイ・ロームと申します。フランさんの後輩です」

 「ということは、アリアさんの友人で?」

 「はい」



 初対面のソルとキュリア、ソルは軽傷の数々を癒されると立ち上がってキュリアに礼を言った。 

 


 「おっ、治療は終わったみたいだね。じゃあちょっと助けてくれないかな思ってたより速い」

 

 「誰~!?」


 「フラン・ヘルヴォール。敵だ」


 


 フランは鉤爪と黒剣をわざとぶつけてギャリィンという音を鳴らしながらぶつかった反動を利用して後ずさりしながらソルとキュリアの元へ移動した。

 フェリンは一度鉤爪を解除して衣服に乱れを直し表情こそニコニコしていたがその前は全くと言っていいほど笑っておらず鉤爪を解除したとはいえ今にも襲い掛かってきそうな雰囲気は健在しているままだ。



 「久しぶりだねソルさん。マーナガルム種の時以来ですね、こうして一緒に戦うのは」

 

 「えぇ。またあなたと戦えるとは。あの時のメンバーは元気ですか?」


 「それはもう、とっても」


 「それは良かった。ヒビキという少年の噂はよく聞くので分かってはいましたが、そうですか」


 「それで戦ってて何か策とか思い浮かんだ?」


 「推測ですがあいつは単純な戦闘狂(ウォーモンガー)です。真正面から打ち砕くのが手っ取り早いかと」


 「それで?」


 「五分ほど時間を稼いでもらっていいですか? 一撃で沈めます」


 「分かった。キュリア、連係プレイでいくよ」


 「はい。お任せを!」



 キュリアとフランは互いに目を合わせて一回頷くと左右からフェリンへと走った。

 フェリンは再び鉤爪を展開させて応戦し、フェリンの攻撃が大振りなのに気づいたキュリアは連続攻撃の途中に拘束魔法をフェリンが大きく広げた腕に絡みつけて拘束魔法の先端を地面に突き刺してグイッと引っ張り、ほんの少しだけ動きを止めた。



 「フランさん!」とキュリアは叫び、フランはその拘束時間の間に空間魔法を応用した壊級クラスの魔法を連撃で繰り出し、障壁を壊すのではなく障壁を空間ごと消し去った。

 そうしてくり抜いた障壁の穴に魔法弾を撃ち込んだが防御魔法で威力を軽減され、拘束魔法を解かれてフランは至近距離で攻撃を受けてしまった。



 すかさずフェリンは鉤爪でフランを殺そうとするもフランはフェリンと同じように鉤爪とまではいかないまでも魔力を纏わせて手を握るようにして抑え込んでいた。

 だがフェリンの細い体のどこにこんな力があるのか分からないくらいの大きな力でぐぐぐと押し込まれ咄嗟に纏わせただけで防御面が心許なかったのか、手が鉤爪で切れて出血していた。



 そんなフランの元へキュリアが応援に駆け付け横から攻撃しようとしたが防御魔法で阻まれ今度は逆に自分が拘束魔法で捕らえられてしまった。

 万事休すか、その時ソルが二人に対して呼びかけた。




 「フランさん! どうにかしてその場を離れてください!」



 その言葉を聞いたフランは残る力の全てを込めて腕を上げ、足をぎりぎり折りたためるくらいの隙間が出来ると足をかがめて足の裏をフェリンの腹へ着けて思いっきり蹴り上げた。

 これによってフェリンの手はフランの手から離れその一瞬の隙を逃さずにその場を離れ、キュリアも拘束ごと転移して離れた。



 


 直後、体勢を立て直したフェリンの眼前に一点の曇りも迷いもなく槍を真っすぐに持って槍と同化したように突進してきたソルがいた。

 その速度は音を置き去りにするほどのもので影山の能力の速度さえも上回るほどのスピードだった、予測及び視覚可能及び()()()()の槍は直前で回復したフェリンの障壁をいとも簡単に穿ち一切の衰えなくフェリンを貫いた。





 刺さったことすら知覚できないほどの攻撃。

 ソルの神速の一撃にフェリンが体を貫かれたと気づいたのは自分の口から血が流れ貫かれた腹部を見た時、つまりは絶命するほんの数秒前。

 もしフェリンが腹部を見なければもうしばらくフェリンは生きていただろう、それほどまでに強烈で痛烈で鮮やかな槍撃だった。





 「ふーっ…………はぁー………」


 


 深く長いため息を漏らし全身から滝のような汗を流すソル、かなりの集中と体力を使ったのだろう。

 神族さえ葬る文字通り一撃必殺の槍。

 アキレアから賜った神槍とはいえ、ここまでこの槍を使いこなせるのは世界広しといえどソルただ一人だけだろう。



 「凄い……あんなの見たことない」


 「全く、感服するね」


 「ありがとう、ございます。かなりの体、力を、消耗するのが、はぁ、難点ですが」


 「後は私たちに任せてくれ。向こうの敵を片づけてすぐ戻ってくる」


 「はぁ……はぁ、頼み、ました」




 後のことはフランとキュリアに任せ、二人は姉様と兄様を倒すため豪傑の獅子の援護に入った。

 数分後、豪傑の獅子たちとの戦いですでにかなり消耗していた姉様と兄様はフランとキュリアの攻撃の前になすすべなく敗れ、フランとキュリアは二人の瞼を閉ざしてソルの体力回復を手伝った。



 かくして獣王大陸での神族戦が終わり、残すは竜王大陸と海王大陸。

 二人はソルにアリアが援軍を向かわせたことを話し、体力の回復が終わり次第再び魔王大陸へと赴くことに決めた。

 あとは残された者たちがうまくやってくれるのを祈るだけ、三人は一度緊張の糸を途切れさせ風の吹く平野で寝そべりつかれた体を癒すべく、眠った。

振り返るとだいぶ書いてるんだなーと、しみじみ思います。

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