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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第九章:世界の命運が握られているようです
198/221

縁のお話。

大変遅れました。

申し訳ございません。

 イブリシアは木に腰かけながらじぃっと二人の事を下から上までを見た。

 姉様と兄様はイブリシアの座っている木の根元で門番のように立ち、アリアとラフィーリアは周囲の状態と三人を確認した。



 「人間、何しに来た」


 「何しにって言われても……ねえ」

 

 「あなたたちを倒しに来ました!」


 

 アリアはニヒルに笑みを浮かべラフィーリアは腰に手を当てて「むふーっ!」といった感じの「言ってやったぜ」といった顔をしていた。

 その言葉を聞いたイブリシアは二人を鼻で笑い、姉様と兄様はクスクスと笑い始めた。

 イブリシアは姉様と兄様に「聞いたか?」と半笑いで尋ねその問いに二体はクスクスと笑いながら頷いた。



 「なんで笑われてるんでしょうね。分かりますかアリア」


 「残念ながら僕にもさっぱりだラフィー。至って本気なのにね」


 「ガーランド……人王大陸に送り込んだ神族の一柱が倒された。そのことに関しては遺憾ではあるが、あのカグラが手こずったやつが人王大陸に飛ばされたと聞いた。ならば倒されるのにも納得するが今回は違うだろう?」


 「私たちだけならまだしも、イブリシア様もいるんだもの勝てるわけないわ」



 確かにこの状況、三対二のこの状況下ではアリアとラフィーリアの勝ち目は絶望的だろう。

 これが同じくらいの実力を持っている者同士ならばまだ勝機はあるのだろうが相手は神族とその僕たち、さらには実力も未知数、正直どうなるか一切予想できない。

 無論アリアもラフィーリアもそのことは分かっている、まともにこのまま戦えば勝てはすれども相討ちになるだろう。

 これが戦闘中に発覚したのであれば絶望的だが、こうなることがあらかじめ分かっているならアリアが何の対策もしないわけがない。









 「えっと……場所はこの辺りのはずなんだけど。アリアももう少し詳しく言ってくれればいいのに」

 

 「あの子はそういう性格だから、昔っからほんとに変わらないよ。彼氏君出来て大人しくなるかと思ったんだけど」


 「えっ!? あの人お付き合いしている人いたんですか!?」


 「うん。ほら、ヒビキ君」


 

 などと言った話し声が森の別の方角から聞こえ、葉がその声の発生源に当たったのかガサガサと揺れて音が鳴り、イブリシアたちやラフィーリアがそちらを向いて怪訝な顔をした。

 だがその中でも一人だけ、アリアだけは平然としていた。



 「遅いぞ、もう始まるところだった」


 「急に呼び出してちゃんと来たんだからそれは褒めて欲しいんだけども」


 「そうですよ! 久しぶりに連絡をよこしたと思ったら!」


 「また……騒がしいのが増えたな。誰だ今度は?」



 イブリシアはため息を吐きながら気だるげに尋ね、二人は答えた。

 一人は自分の名を()()()()()()()()()()()と。

 そしてもう一人は()()()()()()()()()()と名乗った。



 キュリア・ノイ・ローム。

 かつて響たちの通っていたラピストリア魔法学校と学校交流をした際の学校の元生徒会長、現在は魔法学校を卒業して実力派の冒険者として名を馳せている。



 フラン・ヘルヴォール。

 人王大陸魔導学院の元生徒会長、「神童」の二つ名を有しており魔法戦・白兵戦・近距離戦・中遠距離戦全ての状況で高水準の戦闘を行うことが出来るオールラウンダーでありスペシャリスト。

 四年前の時点で緋級魔法を軽々と初級魔法同然に使いこなし、現在は自分の戦闘の幅や魔法学を高めるべく自由気ままに旅をしている。




 二人とも四年前と比べて断然見違えるように大人になり、立ち居振る舞いからも気品と強さを感じられるまでに育っていた。

 二人の登場に先ほどまでクスクスとアリアとラフィーリアを嘲笑していた姉様と兄様だったが途端に笑うのをやめて顔つきが戦闘をするときのそれになっていた。

 イブリシアも何処かそわそわと落ち着かない様子で先ほどから足を組み直しては戻すを繰り返していた。



 「というか、僕に彼氏がいるのがそんなに意外かいキュリア?」


 「ちょっと意外。でもアリア女の子らしいところもあるもんね」


 「僕だって一応女の子だからな。それと笑わないでくださいフランさん」


 「照れてる……あはっ……!! あのアリアがちょっと照れてるっ……!!! あは、あははははははははははははははははははは!!!」


 「フラン・ヘルヴォールって……あの()()の!?」


 「知っているのかラフィー」


 「当然ですよ! 一度は戦ってみたい相手の一人でしたから」


 

 ゲラゲラと大爆笑するフラン、それにつられて吹きだすキュリア、ちょっと照れるアリア、実物の神童に驚愕するラフィーリア。

 




 その全てがイブリシアの機嫌を損ねた。

 神族、それ即ち神。

 神である自分とその眷属の前で平然とガールズトークを始めている四人に対してイブリシアは非常に腹立たしかった。



 先に交戦の火蓋を切って落としたのは言わずもがなイブリシアだった、彼は手刀で空を切りその衝撃波はアリアたちへと飛んでいった。

 ただその程度のものは攻撃の内に入るはずもなく、フランは大笑いしながら防御魔法を見えないはずの衝撃波とドンピシャのタイミングで当てて無効化した。

 次に姉様と兄様がアリアたちへ向かって加速した、それに合わせてラフィーリアとキュリアが突進を防いだ。

 


 「戦ってもいないうちに増援とは、手回しが早い女だ」


 「まぁ流石に僕とラフィーの二人だけで完全勝利を収められるとは思っていない。だからこうして増援を呼んだ。他の増援もそろそろ到着する頃じゃないかな」


 「なんだまだいるのか? いいだろう、まとめて俺が相手をして―――――」


 「いやいや、()()にじゃない」


 「なに?」





△▼△▼△▼△





 場所は変わって獣王大陸、そこではソルが一人で戦っていた。

 相対するはフードを顔が隠れるくらいに被り、発射機構が五つ着いた特殊な弓矢を持つ神族の男。

 そして言わずもがな僕である姉様と兄様、どうやらこの二人のデザインは同じようで僕の形は全てこれらしい。



 「久しい……これほどまでに歯ごたえのある者は中々いなかった」


 

 ソルは魔王軍幹部のカプリオールとアナライズと戦っていた時に使用していた神槍なるものをメインに戦っていた。

 彼女もまた、この世界での最強格の一角に数えられるであろうくらいの実力者。

 なのだが神族とその僕、合計三対の敵を同時に相手取るのは厳しい様子でまだ攻めるタイミングを伺って中々防御よりの立ち回りから抜け出せていなかった。



 鈴の音に酷似した音を鳴らしながら神槍を振り回すが一体を狙うとどうしても他の二体にそれを防がれてしまう。

 せめてあともう一人か二人、共に戦える相手がいたならば。

 そう思った矢先、一種類ではない様々な魔法がソルの背後から放物線を描いて飛んできて神族たちの真上から豪雨のように降り注いだ。













 「おいおいおいおいおいおいおいおいおい!!! 俺たち以外にこの国を荒らすなんざ不届きな野郎どもじゃねぇかあ!!? なあお前ら!!!」


 「へいボス!!」


 「なら俺たちのやることは一ぉぉっつ!!! この阿呆完膚なきまでにコテンパンにぶちのめしてやろうや!!!! 俺たちがボコボコになるのは、()()()んときだけで十分だからよぉ!!!」


 「……あなたたちは」


 「俺たちか? 俺たちはこの国一番のならず者集団、豪傑の獅子だ。ちょいとばかし頼まれて嬢ちゃんの助っ人に来たぜ」


 「頼まれごと、とは」


 「ああ、()()()っつー嬢ちゃんにお前の手助けしてやってくれってな。あいつの彼氏にゃあ煮え湯飲まされたからどうしようかと思ったんだが………まぁ、知らない相手じゃねぇし、あんな風に頭下げられちゃあな」



 豪傑の獅子、そのリーダー「ハルク・モーグラン」

 獣王大陸のならず者集団がソルの窮地に駆けつけた、しかもアリアからの頼みだと言って。

 



 まだアリアとラフィーリアがイブリシアの元へ訪れる前、ラフィーリアの魔力回復を待っている間に戦力となるだろう知り合いたちの元へと転移してその大陸で戦っている者たちを手助けやってほしいと自ら頭を下げて頼んでいたのだ。




△▼△▼△▼△



 それは獣王大陸・妖王大陸だけではなく竜王大陸にまで。

 そこでは梓が孤独に戦っており、さらには一般市民たちを守ることも同時に行っていた。



 「けはははっははははっははっぁっ!! どうしたぁ? もっと攻め立てて来いよぉ!?」



 梓と戦っている神族の男は狂気にも似た声と笑みを浮かべて梓と同じく斬撃メインの攻撃を繰り返していた。

 型にはまらずぶんぶんと自由に振り回すデタラメ殺法ではあるが、だがそれは裏を返せば次の一手を予想できないということに直結するためそれが梓を苦しめていた。



 「んーん? なんだこんなもんかぁ!? 楽しくねぇなあ!?」


 「ああもう! 人が足りない!」



 梓がそう嘆いた時、全く別の声が()()聞こえてきた。



 「人手が足りないなら!」


 「私たちが手を貸すわ」



 その二つの声の主は息の合ったコンビネーションで姉様と兄様を殴り飛ばし、急に来た謎の敵の出現に神族の男は「なにっ……!」と驚いていた。

 その隙に梓がその神族の男に攻撃し、神族の男は距離を取った。



 「や、久しぶり。生きててよかった」


 「本当……大きくなったわね。あの時が嘘みたい、立派になったわ」


 「れ、()()さん!! それに()()()さんも!? なんでここに!?」



 梓のピンチに駆けつけたのは響たちがまだ駆け出し冒険者だった頃にお世話になっていた先輩冒険者のレイ・ノフェクデッドとヴィラ・ラズナだった。



 「アリアに頼まれたのよ、ここで戦っている奴の助っ人に行ってくれって」


 「アリア先輩が……」


 「それに俺たちだけじゃないぜ? ほら」



 レイがそう言って上空を指差すとそこには竜の背に乗った二人の少女の姿があった。

 二人は竜の背中から飛び降りて着地する直前に「ニュートンの林檎」を発動させてふわりと降り立った。



 「手こずってるようですわね!! アズサ!!」


 「マリアちゃん!!! セリアちゃんも!!!!」


 「お久しぶりです。丁度この近くを飛んでいたもので、アリアさんに頼みごとをされるにはタイミングが良かったです」




 マリア・キャロル・フォートレス。

 梓たちの友人でありかけがえのない仲間、名門貴族フォートレス家の出身で努力家。

 人一倍責任感を持ち、凛と咲く花のように今では民を導くポジションにいるお嬢様。



 セリア・ロット・サイト。

 マリアの付き人でマリアの一番の親友、幼い頃から一緒にいるためお互いのことは本人よりも詳しいほどの付き合い。

 付き人としても親友としてもマリアを一番よく知る人物、度々目上の立場であるはずのマリアに対して説教をすることもあり、芯が強くしっかりしている。




 







 こうして、海王大陸をのぞく全ての大陸にそれぞれ援軍が到着した。

 しかし神族の魔の手は海王大陸にも迫っている。

 なら一体誰が向かうのか。



 「うーっし、やるかー」


 

 かつて全員で海王大陸に入っていったあの場所に響は立っていた。

 海の中はまだどうなっているのか、それは再びは行ってみなければ分からない。




 かくしてすでに戦闘が終わった人王大陸と頂上決戦が行われている魔王大陸を除く全ての大陸に神族殲滅のための援軍が送り込まれた。

久しぶりに五千字近く書いた気がする。

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