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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第九章:世界の命運が握られているようです
197/221

スキャニングのお話。

戦闘パートではないです

 場所は変わって妖王大陸、人王大陸と同じように一般街が荒れ果てたこの大陸で二人の少女が平然と瓦礫の上に立っていた。



 「僕としては故郷に飛ばされると思ったんだけどこれは意外だったな」


 「私としては帰れたので良いんですけど……なんですかこの有り様」



 アリアとラフィーリアは妖王大陸の荒れ用に苦笑していた。

 特にラフィーリアに関しては生まれ故郷なためにこの現状から目を背けてしまいたかった、だが彼女は今こそこの現状を目に焼き付けておかねばと顔を上げた。



 ここ確かに人々が暮らし、栄えていたはずの街だった。

 しかし今は瓦礫だらけの廃屋の街と化してしまった、どうにかしたいラフィーリアだがラフィーリアはこんな有り様にした原因は一体何なのかまだ分かっていなかった。

 アリアはラフィーリアに事の経緯を説明し、ラフィーリアは真実を知って驚いていた。



 まぁ、いきなり神族だのなんだのと言われても普通はピンと来ないだろう、ラフィーリアの反応が正直一番正しい。

 だが今は混乱している場合ではない、そのことはラフィーリアが一番よく分かっていた。

 救出作業にも移りたいところだがまずは一刻も早く「僕」と呼ばれる者たちを倒さなければならない、そうしなければ被害が増え続ける一方だ。



 するとラフィーリアは自分に任せてほしいと言って、目を瞑り深く呼吸をした。

 ブツブツと呪文を唱え、かなり集中している様子のラフィーリア。

 しばらくしてラフィーリアが呪文を唱え終わると彼女の体から大量の汗が一気にぶわっと噴き出し、疲弊していた。



 「……大丈夫かい?」


 「このくらい……なんてことないですよ。だって私、天才ですから……!」


 「それは頼もしい限りだね。それで、今のは一体?」


 「()()()()()()()の魔力をスキャンしました……」


 「この大陸すべてって……妖王大陸のことか!?」


 「ええそうです」



 魔法はその威力や規模によって消費する魔力の量が変わってくる。

 仕組みなどが単純だったり低威力だったり規模が小さかったりする魔法の魔力消費量は少ないため連射でき、大規模魔法だったり複雑な仕組みの魔法だったりすると消費する魔力量は多くなってくる。

 響たちが良く使っている転移の類もその距離に比例して消費魔力量は全く違ってくる、そして響が開発した「ニュートンの林檎」も響は平気な顔をして使っているが仕組みが複雑なため実はそれなりの魔力量を消費する魔法なのだ。



 ラフィーリアが今行ったような大陸全土の魔力をスキャンするとなればそれはそれはとてつもない量の魔力を消費することになる。

 並大抵の人どころか下手したら勇者組やそれこそ響たちですら魔力をかなり持っていかれるほどの大魔法なのだ、この手のタイプの魔法は複数人で魔力の上限値を上げて一人当たりの消費魔力を分散させてやるのがセオリーとなっている。




 しかしラフィーリアはそれほどの魔法をたった一人で、魔力の肩代わりをしてくれるようなアイテムもなしにやってのけたのだ。

 時間にしてほんの数秒程度、だがその数秒は彼女にとっては遥かに長い数秒。

 




 「本当に……天才だな君は。自慢じゃないがそれほどの魔法は僕には出来ない」


 「ただ、今ので相当魔力を持っていかれました。なのでメインの戦闘はあなたに任せますアリアさん!」


 「勿論だ、完膚なきまでに叩き潰してやろう。それで場所は?」


 「あの山です。ちょうど、私が初めてあなたと出会って手合わせをしたあの場所付近に身を隠しています」


 「懐かしい思い出だ、覚えていたんだ。僕だけしか覚えていないと思っていたよ」


 「あの日の事を忘れるわけないでしょう! なんたって天才の私が負けた日なんですから!」


 「あーはいはい、天才天才」


 「ちょ、なんですかその扱いは! 居場所見つけただけ褒めてくれたっていいんですよ!」


 「んじゃ撫でてやる」



 アリアはよしよしとラフィーリアの頭を撫で、ラフィーリアは若干不服そうながらも別に嫌というわけでもない複雑な感情に苛まれていた。

 



△▼△▼△▼△




 「ねえ()()。別の私たちが死んだみたいよ」


 「そうみたいだね()()。でも人王大陸は仕方ないや、ガーランド様も倒されちゃったみたいだし」


 「ふん、所詮はガーランド。力と勢いだけではままならんさ」


 「あらだめよイブリシア様、お友達のことをそんなふうに言ってはいけないわ」


 「うるさい」



 そして妖王大陸の山奥、ラフィーリアがスキャンをして敵が潜んでいると言っていた場所。

 そこには三人の人影があった。

 


 その内の二人は、人王大陸で賢介たちが相手取ったあの兄様と姉様。

 残る一人は神族の男性、イブリシア。

 髪を上げてオールバックに近い髪型をしているイブリシアは手ごろな木を手刀で切ってその上に腰かけた。



 「だが、あいつとて神族には変わりない。一体どんな奴にやられたのか興味があるな」


 「人王大陸に行くの?」


 「そうしたいのは山々だが生憎そうも言っていられん、焦ることはないのだからな。着実に地盤を固めることが先決だ。それで、お前らはどうしてさっきからここにいるんだ? 街を破壊して来いといっただろうが」


 「だって飽きちゃったんだもの。ちょっと休憩しなきゃ。それにさっき嫌な気配を感じたの、ねぇ兄様」


 「うん、僕も感じたよ姉様。こう……気配を感知しようとしても躱されちゃうんだ、本当の自分を見せないみたいな」


 「ほう? なら存外楽しめそうな相手なのかもしれないな、そいつは」





 ――――――だってさ、僕たち期待されてるっぽいよ。

 イブリシアの言葉の後にそんな声が聞こえ、二体と一柱はすぐに声の聞こえた方を見た。





 「誰だ、お前ら」


 「アリア・ノーデンス」


 「ラフィーリア・シャルロッテ」



 

 二人は声を揃えてこう言った。

 通りすがりの魔法使いだ、と。

某仮面ライダー風に

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