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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第九章:世界の命運が握られているようです
196/221

フレンドリーファイアのお話。

申し訳ない、ここ最近忙し過ぎて時間が取れんかった。


 「一人一体ずつノルマってところか?」


 『二人で一人を追い詰めるってのも中々滾るよね』


 「お二人とも……くぅ……じ、自分も戦わせてくださいっす」


 『ダメだ。そんな状態でまともに戦えるのかい?』


 「それは………」


 「そういうことです。任せてくださいソフィーさん! 響ほどじゃないですが俺ら強いんで!」



 影山はソフィーに二カッと笑いかけてサムズアップしながらそう言った、ハーメルンも影山に同調して『そうそう』などと言っていた。

 ソフィーはそんな二人を見てちょっと安心したような顔をして戦闘の続きを二人に委ねることにして自分は一時避難した。



 「姉様、この人たち急に気配が現れたよ」


 「きっと転移魔法よ兄様。セイヤさんとハーメルンさんでしたわね? 初めまして」


 『これはこれはご丁寧にどうも。兄妹かな? それとも姉弟?』


 「僕たちにそんなのは関係ないよ。僕たちは兄様であり姉様なんだ」


 「……ややこしいな、なんか。別にどっちでもいいだろハーメルン、んなことより」



 影山はファイティングポーズを取って二体と向き合った。

 ハーメルンはそんな影山を見て少し笑い、同じくファイティングポーズをとった。

 二体も二人を一瞥するとちょっと距離を取って魔法を放ってきた。



 影山は能力を使って回避を行いハーメルンは防御魔法でそれを防ぎ、影山は兄様と呼ばれている方へと攻撃を仕掛けた。

 ハーメルンは残った姉様の方に魔法で攻撃し、一対一の形を作ることに成功した。

 二体は互いの距離がどれくらい離れているのかを確認して、合流するのは困難だと判断したのか諦めてそれぞれ構えを取った。



 影山は先手必勝と言わんばかりに初手からかなりの速度で兄様の周りをランダムに飛び回ったり走り回ったりした。

 地面を蹴りながら反射する光のように飛び交う影山は兄様の背後に回り込んでハイキックを入れた。

 完全に不意を突いたつもりだったが、兄様は一切後ろを見ることなく背後からの攻撃を腕でガードして威力を最小限にとどめていた。



 「ふふ、これでも僕たち神族なんだ。あまり舐めないでくれるかな?」


 「てことはやっぱりお前らがカグラってやつが言っていた僕ってやつか……なるほどな、っと!」



 影山は蹴りをガードされた状態から軸足に力を入れてぴょんとジャンプし、体を捻って空中で後ろ回し蹴りを浴びせた。

 兄様は影山の蹴りをしゃがんで躱し、地面に両手をついて下から突き上げるようにして今度は自分が蹴った。

 だが影山も負けじと能力による身体能力の活性化で空中でさらに体を捻って回転し、兄様の蹴りを踏み台にしてサマーソルトのように後方へと一回転して地面へ着地した。



 「ふぅん……体軽いね。凄いや」


 「そりゃどうも。これが俺の十八番だからな、肉弾戦で負けるわけにはいかないんだよ」


 「そうなんだ。でも生憎だね、僕も魔法より直接戦う方が好きなんだ」



 今度は兄様の方が影山に攻撃を仕掛け、さっきとは反対に影山がガードする側になった。

 一瞬でよく見えなかったが、影山の目がおかしくなってなければ兄様は攻撃の際に確かに笑っていた。

 影山が攻撃に回れば兄様がガードに徹し、兄様が攻撃に回れば影山がガードに徹するというループのようなサイクルの中で二人は笑みを浮かべながら拳と拳で語り合っていた。



△▼△▼△▼△




 そんな中、女性陣はというとまだどちらも攻撃らしい攻撃を仕掛けていなかった。

 ハーメルンも姉様もお互いに様子を伺っているままで一向に決定打となる攻撃などはまだどちらも行ってはいなかった。



 「ねえハーメルンさん、もしよろしければ見逃してくれないかしら。あまり戦いとか嫌いなのよ私」


 『奇遇だね、実は私も出来れば争い事は無い方が良いと思っているんだ』


 「ああよかった! じゃあ交渉成立ね! 話の通じる方で本当によかったわ!」


 『何言っているんだ? 誰が見逃すなんて言ったんだいお嬢ちゃん。私たちは君たちを倒すためにここに来ているんだ。見逃すなんてリスキーなことするわけないだろ?』


 「あら残念……」



 しょんぼりとした表情を見せる姉様は約二秒ほど落ち込んだと思うと突然魔法をハーメルン目がけて何の慈悲もなく放ち始めた。

 ハーメルンはその全てを落ち着いて対処し、『まあそうだよね』と分かり切っていたようなことを言った。

 静かに向き合う二人、そしてついにハーメルンが動いた。



 ハーメルンは一気に姉様との距離を詰めて懐に隠し持っていた短刀を逆手にもって迷うことなく姉様の喉元を切り裂こうとした。

 姉様はこれをヒョイと回転しながら軽く躱してその勢いのままに回し蹴りをしたがハーメルンはこれを響から教わった「ニュートンの林檎」を使って蹴りを直前で止め、鳩尾みぞおちに肘を入れて格ゲーのキャラのように鮮やかにコンボを繋いでいった。



 しかし姉様も僕とはいえ神族、タフネスには自信がありハーメルンのコンボをまともに食らっても倒れはしなかった。

 それどころか攻撃を受けながら魔法を使用して逆にカウンターを入れていっている、超至近距離からの魔法にハーメルンもガードが間に合わず幾らかまともに食らってしまった。



 攻撃を中断せざるを得なくなったハーメルンの隙をついて姉様は形勢逆転と言わんばかりに攻撃を激しくした。

 同じくして一進一退の戦いを続けていた影山と兄様の方も兄様の方が徐々に優勢になっていた。

 兄様と姉様はそれぞれ右手と左手に魔力の塊と言っても過言ではないほどの魔力量を持った大きな光球を作りだし、呼吸を荒くしながらしっかりと影山とハーメルンの体を拘束魔法で縛った。



 大きく腕を引いて光球をぶつけようとする兄様と姉様。

 これはやばいと思う影山に対しハーメルンはこれを待っていたかのように鼻で笑った。

 



 瞬間、影山の体は転移によって消え、それと同時に姉様が影山のいた場所に転移された。

 お互いに攻撃を放つ瞬間だったため二体がハッとして状況を理解するよりも先に大魔力による攻撃をお互いに食らってしまった。




 『何とか上手くいった』


 「え、あれ!? 俺、さっきまであそこに……ええ!?」


 『落ち着け、姉様とやらの場所とセイヤの場所を転移魔法で入れ替えただけだ。あの二人、血の気荒そうだし他人をいたぶるの好きそうだしおまけに頭に血が上りやすそうだったからこの方法が一番確実に仕留められると思ったんだ』


 「まぁ、やるのはいいけどよ……びっくりした」


 『ごめんごめん。私もさっき思いついたばかりでね。バレると危ないから。さて………』



 ハーメルンは拘束魔法を影山に手伝ってもらいながら解き、服の汚れをパンパンと払い落しながら影山に手を貨してもらって立ち上がった。

 兄様と姉様は互いに互いの高火力魔法をゼロ距離で食らい、体が焼け焦げてプスプスと音を立てていた。

 


 「―――――――っ!!!」



 しかし、姉様はまだ半身が焼け焦げただけで死んではいなかった。

 姉様は苦痛に顔を歪めて喀血しながらも影山とハーメルンを力強くそして恨みがましく睨みつけていた。

 これ以上の戦闘は恐らくもう無理だろう、ここで二人に挑んでいってもものの数秒で姉様は確実に殺される。



 ならばどうするか、姉様は呼吸を整えてソフィーの方を見た。

 すると姉様の体は見る見るうちにソフィーと全く同じ容姿になっていった。

 カメレオンなどの擬態する動物が周りの風景に溶け込むように、姉様はソフィーの外見をそっくりそのまま、さらには声や口調すらも真似たのだ。



 姉様はそのままソフィーの姿を真似たまま全速力で逃亡した、追いかけようとするハーメルンと影山だったがソフィーは後は自分に任せてほしいと二人に言って姉様を追いかけた。

 それから数分後、ソフィーは響やカレンたちと一緒にいるもう一人の自分を見つけた。





△▼△▼△▼△





 「と、言うことがあった訳っす」


 

 ソフィーはここまでの経緯を響たちに話した。

 響は自分の傍らで死んでいる阪神の焼けた少女を見た。



 「姿を真似る……か。これが他の大陸にもいるとしたら厄介だな」


 「もう他の大陸にもいるよ父様。その厄介な奴らが」


 「すでに待機していた王国騎士団員たちの半分は他の大陸に援軍として向かったっす」


 「じゃあ、俺も行かなくちゃ」


 「もうか、忙しいな」


 「カレンさん、また今度ゆっくり話しましょう。次は久しぶりに手合わせもしたいです」


 「相手になれるかどうか心配だがな」


 「行ってらっしゃいヒビキ。死なないようにね?」


 「お前が次返ってくるときは、もっと立派な家にして待ってるからよ」


 「はい。父様、母様!」



 響はそれだけ言い残して転移した。

 神とその僕の亡骸を残して。

(敵が)フレンドリーファイア

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