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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第九章:世界の命運が握られているようです
195/221

兄姉のお話。

モチベが上がらんのですよ

 敵は二体、どちらも怪しげな面を付けておりその素性は不明なまま。

 未だ言葉すら発さずにただじっと立っているだけ、だが二体からは確かな殺意を感じる。



 「智香、準備を」


 「うん、分かってる」


 「ロックはしてあるからいつでも当てられるよ」


 

 智香が他三人に各属性の精霊をそれぞれ付け、絵美里はいつでも魔法が撃てる準備を完了させていた。

 琴葉の能力はまだ使う機会がないため温存、能力的に使い所が難しいため判断が重要になってくる。

 賢介は眼前に居る二体の行動を能力を発動させながら出方を見ていた。



 賢介たちが対峙してから約二分ほど経った時、賢介の未来予知が二体がこちらに攻撃してくる未来を捉えた。

 それが分かるや否や賢介は絵美里の名を叫び、絵美里は待ってましたかと言わんばかりに()()()()の緋級魔法を()()させて左右三発ずつ計六発放った。



 二体は自分たちが攻撃するタイミングと()()()()タイミングで射出された緋級魔法に驚いてしまった、それが一瞬のスキを突かれて賢介と琴葉の接近を許してしまった。

 しかも魔法はちょうど二体の視界を塞ぐように直前で全魔法弾が()()()()、二体が展開した防御魔法に触れたからではなく、触れる直前にだ。



 二体も、防御魔法に当たって爆発するのならばまだ理解が追い付いた。 

 しかし今回は当たる直前に爆発したため自分たちのペースが一気に狂わされる結果となった、簡単に言えば「猫だまし」の原理と同じだ。

 それによって次のアクションが遅れることになった二体の懐へ抉りこむように賢介と琴葉は潜り込み思いっきり一体ずつぶん殴った。



 響たちが勇者パーティーとして旅立って数々の戦場をかけてきたのと同じように、賢介たちもまた血のにじむような努力をして鍛錬に次ぐ鍛錬を重ねていたのだ。

 数年前とは比べ物にならないほどに強くなっている、今なら一人だけでも魔法学校を制圧できるだろう。



 「智香っ! 追加援護!」


 「了解!」



 二人が吹っ飛ばした二体に智香が精霊による追加攻撃を仕掛けた。

 赤色のレーザーが二体の体を貫き、二体は地面をゴロゴロと転がった。

 賢介と琴葉は一度後退して二体の様子を伺った。

 二体はすぐにむくりと起き上がって再度立ち上がった、どうやらそこまでのダメージは与えられていないようで当分倒れることはないだろう。

 


 「ま、そーだよねー。全部当たったはずなんだけどーちょい凹む」


 「愚痴っても仕方ないっすよー!!!!!」



 と、賢介たちの後方からソフィーが魔法で弾幕を張りながら賢介たちの前に現れた。

 


 「ソフィー中尉!」


 「待たせたっすね。市街地に被害が多数出ているっす、皆さんは避難誘導の方へ行ってください」


 「中尉は?」


 「自分はここであいつら食い止めるっす」


 「ひ、一人で無茶ですよ!! 私たちも一緒に――――」


 「この人数で戦うよりも、この人数で市民たちを避難させた方が多くの人が助かるっす。お気持ちだけ貰っとくっすよコトハさん」



 ソフィーは早く行くように賢介たちに促し、賢介たちはしばし迷って思考しながらも最終的には上官であるソフィーの指示に従うことにした。

 確かに賢介たち全員が戦うよりも賢介たち全員が避難活動に当たる方が効率は遥かに良くなるだろう、しかしそれでもソフィーを一人で戦わせるのは不安が残る。



 そんな一抹の不安を感じながらも賢介たちはその場を後にした。

 残ったのはソフィー一人と謎の外敵二体、しかもその二体に関しては緋級魔法の多段ヒットとレーザーに耐えて涼しい顔をするくらいのタフネスの持ち主だ。



 「どこまでやれるか流石に分からないっすね、これは」

 


 そう呟いて冷や汗を掻きながらもソフィーは構えた。

 依然として二体は戦闘態勢を取ったり魔方陣を展開したりといった素振りは全く見せない、まだまだ様子見程度でいいということの表れだろうか。

 


 不気味な雰囲気の漂う二体に対して若干呼吸を乱されかけるものの、ソフィーは目を瞑って集中力を高めた。

 それから深く深呼吸をしてから数秒後、集中力が極限まで達したソフィーの耳から()()()()()()()()()




 それが合図だと言わんばかりにソフィーは自分自身を魔法による風圧で飛ばして一気に彼我の距離を詰めた。

 ソフィーはまず一体に蹴りを入れガードされるも二撃三撃とサバットのように蹴り続けた、攻撃されていないもう一体はソフィーの横に回って拳を振るうも、竜王大陸の長で転生者であるハヅキから伝授された柔術がある。



 この程度の攻撃、防御するまでもない。



 ソフィーは拳を紙一重でするりと躱した、躱された一体は追撃を入れようとするもソフィーは冷静にかつ軽くその一体を誘導するかのように地面へと叩きつけた。

 まるでソフィーに触れた瞬間に地に叩きつけられたような感覚に陥る外敵其の一、しかしもう一体はそんなことお構いなしにソフィーに攻撃を仕掛けるもあっさりといなされてカウンターを食らう羽目になった。



 柔術と魔法の混合戦術、幾人もいる王立騎士団の中でこの戦い方ができるのはソフィーただ一人。



 しかしどういうわけかいくらカウンターを返してもゼロ距離で魔法を当ててもソフィーには一向にダメージを与えられている気がしていない。

 手ごたえ自体はあるはずなのにいくら殴っても蹴っても二体は決して倒れなかった。



 「(どういうことっすか……確かに手ごたえはあるはずなのに何で倒れないっすか)」



 ソフィーはその違和感が脱ぎきれないまま戦い続けていた。

 ある瞬間、二体のうちの一体がソフィーの腕を掴んでグイッと持ち上げて投げ飛ばした、何とか転がりながら体勢を立て直せたから良いものの全く抵抗が出来なかった。



 「兄様、この人中々しぶといわ。どうしましょう」


 「っ……! 喋れるんすかあんたら!」


 「おかしなことを言っているよ姉様。僕たちも生きているんだから喋れないわけないのに」


 「仕方ないわよ兄様、ずぅっとお話していなかったんですもの。驚いてしまうのも無理ないわ。そんなことよりもそろそろ片づけた方が良いんじゃないかしら? あまり時間をかけるのはよろしくないわ」


 「うん、そうだね姉様。さっさとこの人殺して、この街の人たちも殺さなきゃ」



 先ほどとはまた違うただならぬ二体の雰囲気にソフィーは後ずさりしながらも再び構えなおした。

 二体は不敵に笑うとふっとその場から姿を消した、ソフィーが目を丸くしているとソフィーの背中を二つの衝撃が襲った。



 なんと先ほどの二体がソフィーの後ろに回り込んで飛び蹴りをかましていたのだ。

 ソフィーは何が起こったのか分からぬままゴロゴロと地面を転がって肺から空気を漏らした、前方を見ると二体がとてつもない速度でこちらに走ってきて全く同じタイミングでソフィーの顔面を殴った。

 ソフィーは鼻血が出て唇も切れ、二体のシンクロ攻撃に血も吐いてボロボロになった。



 「ぐっ………ぅ…………!」


 「中々倒れないよ姉様。丈夫な人だね」


 「そうね兄様。さっさと終わらせてしまいたいのだけれど、どうせならこのまま玩具にしてしまおうかしら」


 「いいね姉様。何度も何度も回復させて、何度も何度も可愛がってあげようよ!」


 「じゃあこの人は持って帰りましょうか、女の人だし色んなことに仕えるわ。夜のお相手をさせるのもいいわね。でもガーランド様が許してくれるかしら?」


 「きっと大丈夫だよ姉様。そうだ、ガーランド様のお相手もさせてあげようよ、きっと喜んでくれるよ」


 「あぁそれは素敵だわ! そうと決まればこんな汚い格好じゃいけないわね」



 そう言うと「姉様」と呼ばれていた方がソフィーに歩み寄ってなんと回復させた、底知れぬ恐怖と狂気にソフィーの呼吸は荒くなっていった。

 「姉様」と呼ばれていた方はソフィーの手を掴んで穏やかな声で「行きましょう!」と無邪気な子供のように引っ張った。

 ソフィーはそれに抵抗したが何せ力が強く、上手く力が入らないためずりずりと引きずられるように連れられていた。








 誰か助けてくれ。

 強く激しく心の中で叫んだソフィーだったが今から援軍が来ることなどまずありえない、どこかから()()でもしてこない限り――――――








 「そこまでだ」

 『そこまでだ』




 



 その時だった、二体の後ろから二つの重なった声が聞こえたのだ。

 ソフィーは涙で前が見えずごしごしと擦ってそちらを確認した。



 「何とか間に合ったか」

 

 『やれやれ、しっかりしてくれよ。私は王都をかつて襲った側なんだぞ? 今度は守る側とは、数奇なものだね』


 「……だぁれ、あなたたち」



 二人はにぃっと笑って言い放った。



 「セイヤ・フォルテイン!」

 

 『クラウン・ハーメルン!』





 お前らを倒しに来た、と。

割とエンディングまでまだあったわ

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