偽物のお話。
リアルがまた忙しくなってきた。
「家、ボロボロになっちゃったね」
「ま、しゃーないさ。また建てればいい、今度はもっとでっかいやつを」
「ヒビキ~」
「母様………あれ、母様なんかピンピンしてません?」
「そうかしら~?」
ガーランドを撃破し、自宅の惨状を見て感傷的なる響は家族の無事を確認しながらエミルがあまり傷を負っていないことに気付いた。
響がそのことについてエミルに聞くとエミルはそんなことないという空気を出していたがカレンとクラリアは「まぁそうだよな」という感じの響に同調するような空気を出していた。
「え、何かまずいこと聞きました?」
「……私が来た時には、クラリアさんとエミルさんが戦っていたんだ。それでな、そのー、エミルさんが一番善戦していたんだが………」
「家ぶっ壊した比率、エミルの方がでっか―――――ぐふっ!!?」
「あなた~、あまり余計な事言わないでね~?」
「あー……なるほど………」
家が崩壊した衝撃の事実が分かったところで響はこちらへ向かってくる人物に気が付いた、カレンの後輩で王立騎士団の一人、ソフィーだった。
「ソフィー! 無事だったか!」
「モチのロンっす!! この位じゃくたばらないっすよー!」
「ソフィーさん、お久しぶりです」
「おおお!? 何でここにいるんすか!?」
「いやなんでって言われても――――――――」
と、響がふいに視線を外したところでもう一人こちらへと走ってくる人物が見えた、それは決してあり得ない人物であった。
ソフィーがもう一人、いた。
響が誰にも気づかれないくらいで驚いているともう一人のソフィーは響に気付いたのかこちらに口をパクパクさせてなんかを伝えているようだが距離が遠いため聞こえない。
響は目を凝らしてよく見てみて口の動きを頑張って捕らえて見たところ、「に・せ・も・の・っ・す」だった。
「どうしたんすか?」
「え、ああ、いや、なんでも―――――」
もし仮に、遠くにいる方のソフィーが言っていることが本当だとしたら。
一度、響はそう仮定してこちらのソフィーに一つ質問をしてみた。
「ソフィーさん、一ついいですか」
「なんすか?」
「あの約束覚えてます? 王都に戻った時に今度こそ二人で……ってやつ」
「……ああ、あれっすか! 勿論覚えてるっすよー!」
「そうですか、なら良かったです」
それを聞いてにっこりと笑った響は有無を言わさずにこちらのソフィーの頭にリボルバーを突きつけた。
ソフィー含めカレンたちはその場で固まってしまった。
「え………ちょ、なんすか、一体。冗談きついっすよヒビキさん」
「そうだぞヒビキ。何をやっているんだ」
「冗談きついのはこっちだ偽物。カレンさん、こいつはソフィーさんじゃありません」
「な、何言ってんすか!? そんなわけないじゃないっすか!!」
「そんなわけねぇのもこっちだバーカ。そもそもソフィーさんとはそんな約束してねぇんだよ!!」
響の台詞を聞いた瞬間、偽のソフィーは体勢を低くして体を捻って裏拳を響に食らわせようとした。
しかしただの打撃が響に当たるなどあるはずもなく、お馴染「ニュートンの林檎」にて体ごとがっちりホールドされてしまった。
その状態のまま響は偽ソフィーの額に銃口を当て何の躊躇いもなく引き金を引いた。
ガーランドの障壁さえをも貫いた454カスールが偽ソフィーの頭部を吹き飛ばし、偽ソフィーは有無を言わさずに死体となった。
どさりと、おびただしい量の血を流しながら偽ソフィーの死体は地面に倒れ、足先から白装束の細身の人物へと変わっていった。
「なんなんだ、こいつ」
「か、カレン先輩ー!!」
「ソフィー!?」
「カレン先輩! 怪我はないっすか!? 偽の自分になにもされてないっすか!?」
「あ、あぁ、大、丈夫だ。が、これは一体どういうことだ?」
「(この衣装……ガーランドやカグラのと似ている……もしかしてこいつが僕なのか……?)」
「ヒビキさん?」
「ソフィーさん、こいつは何処から来たんですか?」
「えっと、王都で見かけてそのまま追ってきました」
「王都、ですか」
響はすぐさま王都に向かうと言ってその場をソフィーに託した。
恐らくもうこの一帯は大丈夫だと思うがそれでもやはり心配なのが事実、幸いにもソフィーが来てくれたため戦力的には何とかなると思い響は久しぶりに会った家族と早々に別れて王都へと転移した。
「急にやって来たと思ったらまたどっか行っちまったなあいつ」
「それでも生きていただけ良かったわ~!」
「ええ。でも剣の腕が見られなかったのは残念でした。でもきっともう私なんかよりも強いんでしょうね」
「今度帰って来た時にやり合うってのもいいかもな」
響が去った後、アルバレスト一家はもうそんな先の未来の予定を立てていた。
△▼△▼△▼△
時は遡って少し前、響がガーランドと対峙し始めた頃。
王都では賢介たちが不気味な見慣れない外敵と接触していた。
「なんだこいつら」
「見たところ、他の種族でも魔物でもなさそうね」
「それでも、戦わなくちゃいけません、よね」
「おっ? 琴葉なんだかいつもと違うじゃん。かっこよくなってる」
「こういう時凪沙がいてくれりゃあな」
賢介は影山によって連れて行かれた凪沙のことを思い出しながら未知の敵を注視していた。
見たことない衣装、感じたことのない気配、強烈な殺気。
「そんじゃまぁ、一仕事と行きますか」
これ以上書くと投稿さらに遅れるのでこの辺りで一回区切ることにしました」