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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第九章:世界の命運が握られているようです
193/221

暴力のお話。

VS神族

 「ヒビキ……」


 「お久しぶりです。カレンさん、母様も無事で」


 「あら~、大きくなったのね~!」

 

 

 カレンとエミルは突然に表れた響に少し驚いていたようだったがそれと同様に安堵の表情を浮かべていた。

 クラリアはまだまだ余裕そうな顔を繕っていたがその実ボロボロでもう戦える状態ではないことは誰が見ても明白だった。

 神族の男は空中から落下してきた響を最大限警戒しながら地面を穿った謎の飛来物を見つめていた。



 「(見たこともないものだ……魔法で作られたものではないな。金属か? いやしかし――――)」



 神族の男は無精ひげを撫でながら地面にめり込んでいる銃弾を眺めながら響の方に視線をやって静かに魔法をチャージし直した。

 クラリアやカレンやエミルはそれに気付く様子は全くない、神族の男は全くの気配を発さずに魔力を手の内に蓄積しているのだ。



 そしてチャージが終わった刹那、神族の男は迷いなくそれを響に向けて放った。

 だがそんな程度で響にダメージを与えられると思ったのであればお門違いである。

 響はノールックで拳銃の引き金を引き、魔法と衝突してお互いにはじけ飛んだ。



 「話し中だすっこんでろ」


 「俺の魔法を弾き飛ばす……だと?」


 「なんだ? 魔法をキャンセルされたのは初めてか? となると、あの二人よりも―――――――」



 響の頭の中には椿とカグラの姿が出てきていた、あの二人に比べればこの男は()()と漠然と根拠のないまま感じていた。

 が、あながちそれも間違いではないかもしれない。

 その証拠としてクラリアたちは今生きている、恐らくこの男は格下の相手が弱り足掻き目の前で命の火が消えるのをある種楽しむことをしているはずだと響は推理していた。



 「……人間! 名は!」


 「ヒビキ・アルバレスト。あんたは?」


 「ガーランド」


 

 ガーランドと名乗った神族の男は自分の魔法が見たこともない謎の武器に呆気なく無力されたことに衝撃を隠し切れていないようで額から冷や汗を流していた。

 一方響は先ほどまでカグラと戦っていたばかりで十分に思考能力と体は温まっている上に書く上のカグラを相手取っていたため油断も慢心もない、椿がいないとはいえ十二分に万全の状態と言えるだろう。

 しかし響が気になっているのはカグラが言っていた「僕を連れて行った」というあの言葉、今のところガーランド以外に敵の気配は感じ取れない、それに、影山や梓やアリアたちの気配もだ。



 もしかしたら一斉転移の影響で他の大陸に飛ばされるという不具合が生じているのかもしれない、が、少なくともここには他の転生組である賢介たちが居るはずだ。

 となれば幾分かは大丈夫だろうと響は考え、両手に銃を構えてガーランドと向かい合った。



 「いいぜ……おもしれぇじゃねぇか!! なぁ人間!!」


 「黙ってろ」


 

 響は右手に構えていた()()()()()()()()()()()()()を水平に構えて一回、引き金を引いた。

 発砲音というよりは爆発音に近いけたたましい轟音が街中にて鳴り渡り、ガーランドの周りに展開している神族特有の粒子障壁の一部が「ギャリン!!!」という聞いたこともないような音を出して穴を開け、ガーランドの頬を掠めた。



 「うーん……思ってたより反動やばいな。魔法で強化しているから大丈夫かと思ったけどもう少し反動抑えないとダメかな」


 「なっ………は……?」


 「なんだ、今の。ヒビキ、一体何を」


 「何をって、ただ銃打っただけですよ。小さい頃やって……なかったかっけ、もしかして」



 響が過去の記憶に苛まれている中、ガーランドは自分の身に起こったことに整理が追い付いていなかった。

 なぜ神族である自分の体に人族程度の者の攻撃で傷がついているのか、そもそもなぜ自分は反応すらできなかったのか、色々な思考がぐちゃぐちゃに頭の中で混ざって、それは次第に怨嗟の感情へと繋がっていった。



 「この……人間風情が舐めた真似を……!!!! 赦さんぞ!!!!!」


 「赦さなくて結構、こっちも家族をボコボコにさせられて腹が立ってるんでな。んで、どうだ、俺も初めて試す454カスールの威力は?」


 「死ねええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!」



 クラリアたちと戦っていた時のあの高貴さは一体どこへと消えたのか、そもそもそんなものあの場でこしらえた偽造品だったのかガーランドは感情をむき出しにしてあちらこちらから魔力量や被害などお構いなしに魔法を乱雑に繰り出していた。

 流石は神族の放つ魔法だけあって威力はそれなりのもの、掠りもすればただでは済まされないだろう。



 ガーランドは更に響の地面を歪曲させてへこませ、周りを魔力で作った木々や氷などで覆い固めてその上から蒼色の槍を降らせた。




 が、




 「はははは、足らんなあ神様。うちの嫁たちの方がよっぽど強いぞ」



 ニュートンの林檎の絶対空間防御を自身の体の周りに張っていた響には一切の傷どころか汚れすらついていない。

 響は再びリボルバーを構えて発砲した、今度はガーランドも防御魔法で対処していたが響はそれに構わず左右交互にゆっくりと前進しながら全弾を打ち尽すまで発砲した。

 やがて弾が無くなると今度はリボルバーそのものをガーランドに向けてぶん投げた、ガーランドはそれを避けるまでもないと思い両こぶしで弾いた、が、そのすぐ後ろに手榴弾が二つ、安全ピンを抜かれた状態で投げられていた。



 ガーランドはこれまた見たことない謎の物体に一瞬思考を止めてしまったがために満足な対処が取れずに手榴弾を顔面で受け止めるという愚策に陥ってしまった。

 間一髪防御魔法が間に合っていたものの視界は爆炎と煙によって塞がれていた。



 「ぬうううああああ!!!」



 ガーランドが煙を払うと目の前にはもう一つ、手榴弾が降って来ていた。

 


 「同じ手は通用しねえっつーの!!」



 ガーランドはこの時、自身の視界が遮られていた時に響が自分の後ろに回り込んで魔法もしくは先ほどの摩訶不思議な武器を構えているものだと思っていた。

 それ故にガーランドは手榴弾を掴んで、響が自分の後ろにいるであろうと確信に近い仮定の中、投げた。



 だが手榴弾を掴んで後ろに投げようとした瞬間、自分の視界に映るものは半壊した街の景色だけだった。

 つまり、そこに響はいなかったのだ。

 それでも手榴弾を投げるというプロセスは忠実にこなされてしまいガーランドの手から手榴弾が空中へと投げ出された。

 次の瞬間、手榴弾は突如現れた空間魔法の魔方陣に綺麗に落っこちてしまい、ガーランドの気づかぬうちにガーランドの足の間に展開されていた小さい魔方陣からポップアップし、爆発した。



 ガーランドが手榴弾の行方を知ったのは足元で手榴弾で爆発が起こった時だった、完全な不意打ち、ガーランドの左足の肉が爆発によって持っていかれた。



 「ぐううううううううおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!???」


 「後ろかと思ったか? 残念、思考が浅はかだ。本当に神族か? お前」


 「このっ――――――――――――」



 ガーランドが響の声が聞こえた方へと反撃するために振り変えようとした矢先、ガーランドの体には壊級魔法「聖釘エレナ」とハーメルン撃破時に響が浸かったあの黒い十字架が何本もガーランドの体に突き刺さった。



 「そういや、この黒いのの名前知らんなー。黒エレナとかでいいか」


 「か、体が………動かん………魔法も使えん………これは、壊級クラスの魔法か!? ヒビキっつったかてめぇ、一体どれほどの魔力量を有してやがる!!?」


 「……俺にも分からん」



 響はその上から更に拘束魔法である「チェーンバインド」の上位互換、緋級拘束魔法「チェイン・コネクト」を幾重にも重ねて動きを完全に封じた。

 


 「さて、と。終わりだ」



 響は今度はリボルバーではない普通のハンドガンを一丁作り、銃口をガーランドの心臓部に向けた。

 銃口から数センチ前に銃口と同じサイズの魔方陣が等間隔にガーランドの心臓へ向かって次々と展開し、ガーランドは自分の身に迫る「死」の恐怖から逃れようと一生懸命足掻こうとそしてもがこうとしたが、それは響の魔法によって叶わず、ただ全身に力を入れることさえままならなかった。



 頭では必死にもがいているつもりなのに現実では一切体が動いていない、まるで筋弛緩剤でも投薬されたかのように。




 「じゃあな」




 響は引き金を引き、一発の銃弾が発射された。

 銃弾が魔方陣に当たると魔方陣はガラスのように割れ、瞬間、銃弾の速度が加速した。

 次々と銃弾はいくつもの魔方陣を壊してその威力・速度・貫通力を上げていった。



 そして銃弾がガーランドの心臓部に達したところで銃弾は先端から炸裂し、重ね掛けされた威力上昇によってその状態のまましばらく直線的にガーランドの体内を通過し、背中を貫通しようとしたところで止まった。



 ガーランドの体は背中から血の花が咲いたようなダメージを負い、一切声を上げることなく、がっくりとうなだれた。




 ホローポイント弾。

 体内で花が咲くようにして炸裂し、人体に大きなダメージを負わせることからついた異名は「死の花」。

 響が今、撃った弾だ。




 その異名の通りに、ガーランドの体内で弾丸が炸裂した瞬間、ガーランドの背からは花が咲き、文字通り死を呼んだ。

 たった一発の銃弾、たった一つの発砲音、その全てが此度の戦いに幕を下ろした。



 「………ふぅ」



 響は物言わぬ死体となったガーランドに背を向けてクラリアたちの方を向いた。



 「……終わりましたよ、父様」


 「はは……強くなり過ぎだっつーの」



 そう言ったクラリアの顔は、嬉しいようなちょっと響が恐ろしいような、そんな複雑な顔だった。

さくっと殺していこう。

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