表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第一章:魔法学校に入学するようです
19/221

防具と遭遇のお話。

おばちゃんキャラって想像しやすいですよね

※タイトルを「邂逅」から「遭遇」に変えました。

 「こんなもんで大丈夫だろ、後なんかあったっけ?」

 「いいんじゃない? 私たちもいることなんだし」



 任務に出る前に回復薬や包帯それから解毒剤を含む簡易的な携行医療品を一式買い揃えて、これまた買ったばかりの大容量のウエストポーチに詰め込んで一通りの持ち物を準備した。ポーチは思っていたよりも物が入りそうでまだまだ余裕がある。意外なことにアリアも初めて買ったようでランドセルを買ってもらった小学生よろしく、体勢を変えては自分の腰につけられたウエストポーチを何度も見ている。響はともかくとしてアリアが持っていないとは驚いた。てっきりこういうものはすでに買っていたものだとばかり思っていた。



 「そう言えばあなたたち装備はどうしてるの?」

 「任務の難易度が低かったのでいつもこのままで……」

 「ダメね。学生とはいえ冒険者、しかもそれなりの難易度に挑むなら武器はともかくせめて防具くらいはしっかりしたものを装備しないと」

 「ヴィラの言う通りだ。いつまでもそのままって訳にもいかないだろうしな、ついでに防具も見ていくか」



 という二人の意見から現在響達一行は近くの武器店に来ている。そこは響の友人である影山の家が営んでいる店で、お隣さんではあったが利用する機会が一度もなかったため今回が初めてになる。当然影山は今学校にいるのでいないが、変わりに店主である影山のお母さんが出迎えてくれた。



 「いらっしゃいませー。あら! ヒビキ君じゃないの! 聞いたわよー生徒会で頑張ってるんだってねえ! うちのセイヤにも見習って欲しいくらいだわー」



 日本の街中にもこんなおばちゃんいるよな、という風のどこにでもいる普通のおばちゃん店主だ。親戚の集まりとかで一人はいて昔話をつらつらと大声で喋るような、そんな感じのどこにでもいる本当に普通のおばちゃんだ。



 「お久しぶりです、今日は防具を色々見に来たんですけどいいのありますか?」

 「あるわよあるわよ! ちょっと待っててねー」



 そのままパタパタと店の奥へ消えていってしまった影山のお母さんが数分と待たないうち様々な種類の防具を持ってきてくれた。王国騎士団の人が着ていたような全身に身に着けるものから、部分的につけるプロテクターなど色々なものを持ってきてくれた。



 「結構色々あるね……ヒビキ君は普段どんな風に戦ってるんだい?」

 「魔法を中心に中距離戦闘をやっています」

 「うーん、なら機動力を損なうようなものは避けた方がいいかな。こういうのはどう?」



 と言っていつの間にか響のことを名前で呼んでいるレイが取り出したのは両腕に装着するアームプロテクターだった。銀色の表面に太陽の光が反射して目が痛くなるほどに磨かれていて、それぞれに魔方陣が三つ重なって描かれていた。



 「お兄ちゃんいいのに目をつけるね。それはこの前は言ったばっかの最新ものでね、その魔方陣に描かれている術式のおかげで魔法の燃費がグンと良くなるっていう優れものさ」



 魔法というものは使う時に実質的に発動した魔力量よりも幾らか多く出てしまうという性質を持っている、これは魔法を使う際に体に力が入ってしまうが故に起こってしまう現象で魔法学校でも習ったことだ。

 影山母の話によるとこのアームプロテクターはその漏れ出た余分な魔力を抑えてくれて普通に使うよりも効率よく魔法を発動することが出来るというサポート機能が付いているということだ。値段は銀貨二十三枚、日本円に換算すると約二十三万円と中々に高価だが最新式の防具だとこれくらいはするらしい。



 ちなみにこの世界の通貨は白金貨(はっきんか)希金貨(ききんか)、金貨、銀貨、銅貨、青銅貨と分かれていて、白金貨一枚百万円、希金貨一枚十万円、金貨一枚一万円、銀貨一枚千円、銅貨一枚百円、青銅貨一枚十円と割と法則的に増えているため案外覚えやすいのだ。



 「本来ならその値段なんだけど、お隣さんだしちょっとだけ安くしといてあげる。銀貨二十枚でどう?」

 「いいじゃん、買えば? 結構お買い得だと思うよ、任務とかで報酬入ってるでしょ」

 「でも今手持ちがそんなになくて」

 「その感じだとこれからどっか行くんでしょ? 後払いでいいわよ。ヒビキ君ちゃんとしてるもの、おばちゃん信用してるから」



 レイの後押しもあって任務から帰ってきてから支払うという形で響はアームプロテクターを購入し手装備した。一方アリアは「何かあってもゴーレムがあるからね」と言って何も買わなかった。防御用のゴーレムがいるんだろうかと響は疑問に思ったが、よくよく考えたら防御魔法なるものがあるこのご時世そういうゴーレムがあっても不思議じゃないなと自分の中で勝手に完結させた。



 ということで任務に出る前の下準備はこれで完了した。これからは王国から出る馬車に乗って任務地である森林へと向かう。そこは妖王大陸との境目になっていてよく妖族と出会うというという話があるほど密接している場所だ。

 馬車に揺られて荒野を抜けるとそこは、樹木という種族があると錯覚するほどに沢山の木々が生い茂っていて森林というよりは樹海に近かった。代々妖族は自然環境での集団戦闘術を得意としている種族であったためこの近くに国が出来るというのもごくごく自然なことだった。

 懐中時計を作りだして時間を確認する。朝ギルドに来たのが八時ちょっと前でそこから買い物やら色々して馬車に乗ったのが九時半くらい、そして現在十時前なので約三十分ほど馬車に乗っていた計算になる。



 「……それって時計よね? 随分小さいわね」

 「本当だ、こんなちっちゃい時計俺見たことねえぞ」



 時間を確認していると後ろからヴィラとレイが響の作り出した懐中時計を見て驚きの表情をしていた。そう考えてみれば確かにこの世界にある時計は大体が壁掛け時計くらいの大きさのものばかりで、腕時計サイズの物は見たことがなかった。日本にいる頃は見慣れたものだったからただ単に家になかっただけかと思っていたがそういう訳ではなかったようだ。



 二人の疑問にどう答えようか悩んでいると馬車が森林の入り口で止まった。どうやら到着したらしく、隣でスースーと可愛らしい寝息を立てて寝ていたアリアを起こし、馬車を降りて森林へと入る。



 途中で何度か妖族の人たちと遭遇したがそのどれもが手負いの状態であったため何があったか尋ねたところ、すれ違った人たち全員、響たちと同じくスレイプニル種の討伐任務を受注した冒険者たちだった。ほとんどがシルバーの階級で固められており、十人近くのパーティーが組まれていた。



 「あんたらたった四人だけで行こうってのか? やめとけ、無駄に命をすり減らすこたあねえぜ?」

 「あなたたちと一緒にしないでもらいたいわね、その尖った耳に、私たちがスレイプニルに断末魔を上げさせるのを聞かせてあげるわ」



 エルフという種族が実在したのであればまさしくこんな姿なのだろうというほどエルフのイメージにピッタリと一致している妖族という種族。その一人である手負いの冒険者はヴィラの一言に何も言い返せず、軽く鼻を鳴らして去っていった。



 それからスレイプニル種を捜索すること小一時間、ついにその姿をとらえることが出来た。一休みしようとレイが提案して、どこかいい場所はないかと探していると森の中に小さな湖があったためここで休憩を取ることに決めた矢先、奥の茂みからガサガサと何かがこちらの方へ向かっている音が聞こえたため、その場で全員臨戦態勢に入る。

 ただ立っていては的になるだけなので茂みに隠れてその中から様子を伺うことにした。次第に音が大きくなりその正体がついに全貌を現す。



 茂みから現れたのはおよそ三mはあろうかという巨躯を持つ馬だった。スラリとしていてしなやかな足に、赤く充血した目、金色の体毛と白い鱗のような皮膚が芸術品のような美しさをもたらしていた。

 その巨大な馬は湖の端に口をつけ水を啜っている。そこへ日の光が差し込み湖と馬を同時に強調させる。まるでおとぎ話に出てくるような光景に、響は思わず息を飲んだ。



 討伐目標であるスレイプニル種の魔物が今、四人の目の前に現れたのだ。

次回戦闘パート

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ