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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第九章:世界の命運が握られているようです
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傭兵のお話。

一騎当千など夢ではない

 「交渉とは……また、どういうことだ?」


 『実は、前にお前らの仲間の内の誰かがうちの警備隊長に何か交渉を持ちかけていたらしくてな。今この場にそいつがいるなら交渉を持ち掛けたいと思った所存だ。勿論、敵同士という立場は分かっている』


 「それが分かった上でか。いいだろう、聞くだけ聞こう」


 『助かる』


 「あの、話でしたら俺も参加させてください」


 「ヒビキ、もしかしてお前か?」


 「はい、俺と賢介の二人でやりました。勝手な行動をして申し訳ないです」


 「……本来なら叱るべきだが、まぁ今回は不問に処そう。で、お前らは何を持ちかけていたんだヒビキ?」



 響はあの時のことをその場の皆に説明した。

 クシャナを拉致して色々と話を持ち掛けたことも、クシャナがあの時何か迷っていたことも。

 警備兵は響の話を聞き、クシャナがアザミ政権を裏切ると全警備兵に伝えたと話した。



 『クシャナ隊長はこうも言っていた、お前たちは私に無理に付き合わなくていい、と。俺たちを気遣ってのことだろう』


 「それで?」


 『無論、俺たちも隊長に最後まで付き合うと約束した。今の魔王大陸は、腐りすぎているからな』


 「なるほど。で、結局私たちとの交渉とは一体何なんだ?」


 『俺たちに―――――いや、隊長に力を貸してほしい。あの人は何でもかんでも自分で背負い過ぎちまう癖があるからな、きっと自分の払う犠牲より俺たちの犠牲のことを今でも心配してくれている。俺たちじゃあアザミにはとてもじゃないが勝てない、けれど隊長ならなんとか幹部の奴と渡り合える力はある。だから……ええとだな………』


 「私たちにそのクシャナとやらの援護、及びアザミの打倒をしてもらいたい―――――か?」


 『ああ。そうだ』


 「なら手っ取り早い、交渉成立だ。私たちのも目的もそうだからな。戦力としてあなた方が加わるという考え方でいいのであればこちらとしても大いに助かる。国民はイグニスの言葉で目覚め、あなた方警備兵はそのトップの言葉でこの異常事態に気付いてくれた。なら、共に力を合わせよう」


 『感謝します!』




△▼△▼△▼△




 一方その頃、クシャナとアザミ。

 イグニスの演説を聞きアザミは静かな怒りと闘志を表情に出していた。



 『クシャナ警備隊長。話があると言っていましたね、そちらからどうぞ』


 

 クシャナは冷気にも似たこの空気間に冷や汗をかき生唾を飲み込んだ。

 一言目を発しようとしたが緊張感からかかすれてしまい、一つ咳払いをして声を整えた。

 それから『失礼しました』と言って再度要件を言い直した。



 『アザミ様、率直にお聞きします。此度の戦争、勝てる見込みはあるのですか?』


 「……それは、戦っても負けるから幸福したらどうですかということですか?」


 『…………正直に申しますと、そう捉えていただいて構いません。彼らと私たちでは明らかに戦力差が大きすぎます。いくらアザミ様が女神の一柱とはいえ、向こうには他の種族の女神が付いています! その上、報告では神族とみられる者さえいたと……あの伝説上の種族が敵に回るとしたら、想定外の行動だらけでとてもではありませんが―――――』


 「彼らと渡り合えない、と?」


 『――――っ、はい。今からでも遅くはありません、降伏するというお考えもお持ちいただければ、と』


 「そうですか。では次は私の方から話をします。よく聞きなさい」



 アザミは一呼吸おいて、低く唸るようにクシャナにこう命じた。

 ―――――イグニスと進入者たちを捕らえ、殺せ。と。


 クシャナはその返事を聞いてゾッとした。

 まだアザミは降伏する気は一切ないのだ、それどころかこの状況下でまだ響たちに渡り合おうと思っているどころか勝とうとしている。

 外は一般兵たちに包囲され城の中はグリムたちが侵入済み、それにアザミはまだ知らないが警備部隊の全ては総意によって現在グリムたち側に味方している状態なのである。



 その状態で勝てるものなのだろうか、いや、勝てないだろう。

 それにまだ各大陸には第二部隊が待機している、これ以上の追加戦力と渡り合うのはいくらなんでも自殺行為以外の何物でもない。

 複合魔物だってそう簡単に量産できるような代物ではない、追加戦力など夢のまた夢。



 クシャナはそう考えていた、恐らくクシャナでなくとも誰だってこう考えるだろう。

 しかしアザミはそうは考えていない様子だった。

 アザミはくるりと後ろを振り向いて窓の外を眺めた、後ろに手をやって、周りに警護すら置かないで無防備に。

 


 「クシャナ警備隊長」


 『……はっ』


 「確かに、もう我が兵の残存戦力は心許ない。正直、ここまで彼らが育っているとは……人の身だと少々侮っていました」


 『……』


 「戦争は数、とてもいい考えだと私は思います。事実兵士の数はその軍の戦力を表す、どんなに優秀な兵でも一人で百人や千人を相手取ることは出来ない、出来たとしても無傷では済まないでしょう。それが相手の兵の熟練度にもよれば尚のこと……」


 『何を……おっしゃられたいので?』


 「もし仮に、千人を一人で相手取ることが出来る兵士を育てずに軍に招き入れることが出来るとしたら」


 『は……?』


 「もし仮にそれほどの戦力を持つ者を複数用意できたとしたら、この戦、結果が変わるとは思いませんか?」


 『それは………どういう……………っ!?』



 そこまで言った瞬間、クシャナは凄まじい気配を察知し正体が何なのか分かる前に抜剣し気配のする方へと剣を薙いだ。

 しかしそこには誰もおらずクシャナが一瞬のフリーズをした直後、腹部に強烈な蹴撃が入った。



 内臓が圧迫され、痛みと共に空気が口から漏れ出た。

 瞬間、クシャナは攻撃された方向を目線だけ動かして攻撃した正体を視認した。

 


 『(っ………真横に……………!? いつの間に!?)』



 驚愕と混乱の中吹っ飛ばされて魔王城の廊下に背中から着地して反動で体が浮き、壁に頭をぶつけてクシャナの体はストップした。



 「申し訳ない、クシャナ警備隊長。部下が少々手荒な真似をしました」


 『ごほっ……! ごほっ………!!』


 「呼吸が整い次第、こちらをごらんなさい」


 『はぁ、はぁ………………っつ!!?』



 クシャナの目に映ったもの。

 それは、狐の面を被り空間より現れる十数人の謎の人物たちだった。



 『この魔力の感じ………度の種族とも違う。まさか………まさかあなた!!』


 「ええまあ、そのまさかなんですけどね」



 クシャナが見上げた先では、アザミが愉快そうに口角を上げていた。

 アザミはクシャナの方を向いて、他の者たちよりも一歩前に出て両手を広げた。





 「紹介しましょう。本日より我が軍の傭兵と成り下がった、誇り高き()()の者たちです』

そろそろ新章いきたい(願望)

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