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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第九章:世界の命運が握られているようです
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トラップのお話。

すまん、遅れた。

 「急ぐぞ! もたもたしていられん! ったくあの馬鹿魔王め……」



 ぶつくさと文句を言いながらグリムを先頭にして響たちは魔王城の中をどんどん進んでいく。

 ナイフの煌めきが激しさを増してより一層苛烈になり、なぜ気づかれないのかが分からないほど積極的にグリムたちは攻め立てていた。



 階をどんどん上り七階に到達した時、グリムがビタっと急ブレーキをかけて止まった。

 それに合わせて響たちも急ブレーキをかけて体を低くして周囲を警戒しながらグリムに何があったのかを聞こうとした―――――が、グリムが止まった理由は響たちにもすぐに分かった。




 明らかに空気が違ったのだ。

 



 見てみれば警備兵たちの装備も先ほどまでとは明らかに違う、耐久力に優れていて殺すことに特化している武器だ。

 刀の形状も一般的なそれではなくもっと鋭利で、装飾のようなものも一部施されているものがあった。

 だが芸術品のような華美なものではなく戦闘に支障をきたさない程度のもので、ゴシックな感じのものであった。



 武器だけではなく勿論防具も今までの階の警備兵たちのものよりもかなりランクの高いものだと見られ、所々に魔方陣が描かれている。



 「あれは……なんだ? 見たことない防具だ」


 『私もない。となると、アザミが作ったのか、作らせたのか』


 「いずれにせよアザミの能力がアシストしている可能性は十分にある、か。効果がどんなものか分からない以上慎重に行動すべきだな」



 そう言ってグリムが一歩、物陰から廊下に足を一歩踏み出して様子を伺ったその瞬間、事件は起こった。













 ―――――――――ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!











 と、けたたましいアラート音が鳴り響いた。

 しまったと思うグリムだったが時すでに遅し、一斉に警備兵や使用人たちが響たちの方を勢いよく直視し剣を鞘から抜き、使用人たちは叫んだ。



 「侵入者だ!!!」と。



 嘆く響たちだったが警備兵たちは待ってはくれない、すぐに戦闘態勢を響たちはとった。

 やがてアラート音が五月蠅く鳴り響く第七階層は混戦状態へともつれ込んだ。




△▼△▼△▼△




 「っ。なんだ、何の音だ」


 『アラート音です』


 「アラート音?」


 『七階より上の階の床には、魔族以外の魔力を感知するとその瞬間にこうして音が鳴るようになっているんです。それが鳴ると、すぐに他の階にも情報が行くようになってます……!』



 スラインたちは突如として鳴り響いた甲高いアラート音に驚き、その正体をメイドさんが説明した。

 レイヴンは一度話を中断させ、メイドさんに一緒に来てほしいとあくまでも頼んだ。

 メイドさんは少々戸惑い気味になりながらもレイヴンに手を引かれてスラインたちと行動を共にすることとなった、目標はグリムたちと同じ第七階層への到達。



 


 スラインたちが上階を目指しだしたのとほぼ同時にハイラインたちも走り出した。

 だがただ一人、イグニスだけは立ち止まり、思考し、嘲笑した。



 『獣族ノ勇者』


 「あぁ!? なんだ!?」


 『人族ノ勇者ニ一ツ言伝ヲ頼ミタイ』


 「言伝だぁ……?」


 『アア。勝手ニ仕込ミヲ使ワセテモラウ、ト伝エロ』


 「仕込み……そういや、姉御なんか言ってたなあん時」



 ハイラインは魔王城に突入する際、グリムが響に対して「すでに仕込みはしてある」と謎の発言をしていたのを思い出した。

 結局、あれが何なのかは明かされぬままこうして城の中に潜入し、見事に計画は失敗しようとしている。

 


 『大方、アザミト対峙シタ時ニ音声ヲ魔王大陸全土ニ流シテ味方ヲ失クソウトデモ思ッタノダロウヨ。ダガ甘イ、甘スギル。元ヨリアザミニハ味方ナドオラヌ上、欲シテモオラン。ヤッテモ無駄ダロウヨ、ナラヨリ有効活用シテヤロウト思ッテナ』



 イグニスはそれから『先ニ行ッテクレ』と言い残してハイラインたちと別れた。

 ハイラインたちは若干の戸惑いを見せたがすぐにグリムたちの元へ加勢するために向かった。




△▼△▼△▼△




 『………ソロソロ、頃合イカ』



 イグニスは相も変わらずに堂々と城の中を歩きながらどこから持ってきたのか拡声石をポーンポーンとお手玉よろしく扱って鼻歌を歌っていた。



 そして歩きながら城全体に魔力を流し込むと城の外壁の至る所で魔方陣が浮き上がった。

 恐らくはこれがグリムの仕掛けた「仕込み」とやらなのだろう。














 『アー、聞コエルカネ諸君』






 イグニスは拡声石に口を近づけ、声を発した。

 その声は外壁の魔方陣から大音量で流れ、国民たちは勿論のこと城内にいたグリムたちや警備兵たちそしてアザミにもはっきりと聞こえていた。



 やがてイグニスがバルコニーに姿を現すと国民たちは騒然とした。

 いなくなったはずのかつての魔王イグニスが、何の前触れも兆候もなく自分たち前に姿を現したのだ。



 しかしそんな国民の心境を気にすることなく、イグニスは言葉を繋げた。

 ただ一言、『タダイマ』と。

さて、ここからどうつなげていくべきか

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