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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第九章:世界の命運が握られているようです
185/221

王のお話。

王、故に、KY

 「なぁやっぱりこれダメだろ」


 『ナニガダ?』


 「……同意する。これはいけない」


 『ドウシタ。何カオカシナコトデモアルカ?』


 「あるな。そうだろリナリア?」


 「ああ。私の管理する種族のかつての王がこれほど馬鹿だとは思っていなかった」



 ぼろくそに言われるイグニス、しかし本人は一体何のことやらと本当によく分かっていない様子だった

 だがイグニスが非難されるもっともな理由はある。

 それは、グリムから隠密行動をするように言われたのに一切隠れることなく堂々と城の廊下を歩いているからだ。



 無論見つからないはずもなく、城の住人達にすでに見つかっていた。

 だが使用人や警備兵たちはまさかイグニスが現れるとは夢にも思っていないためその全てがその場で立ち止まって口を大きく開けて呆然と棒立ちしていた。



 そしてその全てにイグニスは決まってこう答えていた。 

 ――――――タダイマ、と。



 「イグニス。これ以上注目を集めるのはよろしくない。止めない私たちもそうだが、少しは自重しないか」

 そう、リナリアに注意された時にもイグニスはこう返していた。




 ―――――何故自分ノ城ヲ歩クノニワザワザ盗賊ノヨウニ隠レナケレバナラヌノダ?

 と。




 それっきり全員は呆れかえってぼやきが止まらない始末。

 まだ騒がれていないということはそれほど公には広まっていないとみなしていいだろう、しかし噂は流れ流れてもしかしたらもうアザミの耳に入っているかもしれない。

 


 しかしながらアザミにばれているかどうかはアザミ本人に直接聞かねばわからないというシュレディンガーの猫状態。

 そんな不安定でどう転ぶか分からない状況下の中イグニスたちは魔王城内を闊歩し、どのグループよりも早く次の階へと上がっていった。




 魔王城は全十三階で構成されており、その最上階に魔王の位を持つ者が住む王室がある。

 現在その王室にはアザミとその護衛が数人いるとイグニスは予想しており、当たり前だが階を上がっていくにつれて警備レベルもどんどん高くなっている。 



 階が上がるにつれて警備レベルが上がるのは他の種族でも同じ、竜王大陸に関しては城の作りが屋敷に近いので例外的ではあるがそれでもその国の長の住まう部屋に近くなるにつれて警備体制が強まるのは変わらない。



 そんなことは全員が承知しているし、そう考えた上で行動している。

 ただ一人イグニスだけが意に介していないだけで。



 「(おい響、梓、凪沙。聞こえてっか?)」



 影山はスキル「意思疎通」で響と梓と凪沙の三人の脳へと直接語りかけた。



 「(どうした?)」


 「(あー、いや、なんつーか、今こっちのグループ隠密行動全くしてないんだわ)」


 「(は……?)」




△▼△▼△▼△




 「あの、緊急で、一つ」



 場所は変わってスラインたち。

 メイドさんに話を聞いている途中、凪沙がおずおずと手を挙げて気まずそうな表情をしていた。

 


 「どうした? 誰か来たか?」


 「あ、いやそういうのじゃなくて………今、影……聖也君からテレパシー? 送られてきてその……イグニスが堂々と城の中を歩いているそうです………はい」


 「…………僕また頭痛くなってきたよ」


 「私は眩暈がしますね」



△▼△▼△▼△



 「―――――――まじかぁ」



 また場所は変わって響たち。

 響はため息を吐きながら頭を抱えていた。



 これまたどうしたのかとハーメルンが尋ね、響は影山と同じく「イグニスが堂々と城の中を歩いている」とハーメルンたちに伝え、全員は絶句した。

 時と場所を同じくして二つの班どころか尋問されていたメイドさんまでもが頭を抱え何かしらの症状を訴え思考を放棄仕掛けるという異常事態にまで発展したイグニスのこの行動。



 何の意味があるのかと誰も突っ込まなかった。

 何故か。

 そんな気力さえ残っていなかったから、その一言に尽きる。



△▼△▼△▼△



 













 『貴様……それは、本当か…………?』



 再び場所は変わり、魔王城のとある一角。

 警備隊長であるクシャナ・ベル・リオーズは一人の兵士の胸ぐらを鎧の上から掴んで持ち上げて半ば脅迫に近い形で問いかけていた。



 『ほ、本当です………! 使用人や他の兵たちが皆口を揃えて言っておりました!!』






 ――――イグニス様が戻られたと!




 

 その言葉を聞いた瞬間クシャナは兵士から手を離してしばらくわなわなと拳を握りしめて震えていた。

 そして壁に向かって手を何度も何度も打ち付けて最期に頭突きをして動きが止まったかと思うと次第に笑い始めた。



 その行動に兵士は一体どうしたのかと怖くなりたじろいだ。

 クシャナは言った。




 『()()()()の言う通りになったか』と。


 


 『あ、あいつら、とは』と兵士は聞いたがクシャナは答えなかった。

 その代わりに準備をすると言って兵士の手を引き、起き上がらせた。



 『準備とは……?』


 『お前、アザミは好きか?』


 『は……?』


 『いいから答えろ』


 『……正直言って、嫌いです。イグニス様が本当に戻られたのであればもう一度王として魔族を率いて欲しいと思っております』


 『なら決まりだ。では参ろうか』




 ――――――()()()()()()()

 クシャナは力強くその兵士の腕を引っ張り、全兵士たちを招集するべく移動した。

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