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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第九章:世界の命運が握られているようです
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隠密行動のお話。

ペースが上がらん

 「っ……はぁぁぁ……!」


 グリムは懐から短刀を取り出して正確に使用人たちの喉を切っていった。

 死ぬまでには達さないほどの攻撃、ほんの少しでも手元が狂えば失血死させているだろう急所への攻撃、それをグリムは素早くそしていとも簡単にやっていた。



 玄関付近にいた者たちは皆閃光手榴弾で目がやられ視界が奪われている状況、だが何かが動く音は聞こえる。

 しかしその音の発生源が一体何なのかが全くもってわからない。

 混乱しているその時、急にふわりと風がやって来て、次の瞬間には喉元に激痛が走り声が出なくなった。



 驚天動地とはまさにこのこと、運悪く玄関付近にいた使用人たちや巡回していた警備兵たちはたった一人によって行動不能にさせられた。



 短距離転移を使いながらグリムは右へ左に縦横無尽に動き回り数分足らずで周辺を一人で制圧してしまった。



 「む、三つに分かれてるか……よしじゃあ三手に分かれよう。ヒビキ・ハーメルン・アズサ、私と来い。スラインとナギサとアリアとレイヴンは右の通路を。残りはこのまま真っすぐ進んでくれ、何かあればすぐに連絡を。では行動開始」


 


 いつにも増して興奮状態気味のグリムに一同は戸惑い気味ながらもその理由をなんとなくではあるが察していた。

 普段冷静に戦闘を進めるグリムがあそこまで感情をあらわにして嬉々として武器を振るうことなどまず滅多にない、しかし今回は自分から「暗殺をする」だのと言ったり周りに作戦の概要を伝えようとせずに単身で乗り込むような行動をしたりと、かつて本当にそうしてきたかのようなやり方が目立っていた。



 しかしここでその考えばかりに引っ張られて、先走るやもしれないグリムを見失ってしまうのも良くない。

 全員はグリムの指示通りにそれぞれ三手に分かれて魔王城の中を駆けた。



△▼△▼△▼△



 「さてさてさてさて………気配はないな。ハーメルン、この後の道は?」


 『もうすぐで次の階に行ける、次の角を左でその次にまた左』


 「分かった。では私が先に行くから等間隔に距離を開けて来るように」



 グリムはいつもより早口でそう指示した、響たちはその後に続いて武器を構えながら足音を立てないように細心の注意を払っていた。

 


 「止まれ」



 グリムの号令で響たちはビタッと止まり、廊下の向こうをばれないように覗いた。

 その先にはまだ何も知らない使用人たちや魔族の者たちが巡回をしていて、この人数ではとてもではないがばれずに移動することは困難を極めるだろうという状況だった。



 しかも並びがまばらで二~三人ほどは単独で離れたところにいるためナイフで切りこもうにもその離れている者たちがすぐに応援を呼んでしまうだろう。

 なら複数人で切り抜けるほかあるまい、ハーメルン曰く上へと続くルートはここが一番近いらしく後退しようにも後ろに人がいるかどうかすら判別できていない状況で下がるには使用人たちに見つかる危険性が高すぎる。



 「ヒビキ。バックアップは任せた」

 

 「……了解」



 グリムはナイフを構えて響に小さく言い、響はサプレッサーの付いたハンドガンとコンバットナイフを作成した。

 「ゴー」とグリムが短く告げ響がまずサプレッサー付きのハンドガンで遠くにいる使用人の足を狙い撃ち風穴を一つ強制的にこさえた。

 急にやって来た激痛とバランス感覚という概念の崩壊にその場に倒れ込む罪なき一般使用人A、それに他の者たちの視線が一斉に注がれ何があったのかと一時騒然、ざわめく寸前。

 そして響はわざと使用人Aのところへと転移して注目を一点に浴び、響に気を取られている警備兵や使用人たちを後ろからグリムが急襲し、そちらに驚いて反撃を試みようと響に背を向ければ今度は響が後ろから襲い掛かった。



 かくしてたった一言も叫ばせずにその場を鎮圧した二人は返り血を拭って撃ち漏らしや切り漏らしがないかどうかを確認して梓とハーメルンを呼び、先へと進んだ。



△▼△▼△▼△



 「凄い変わりようだったね、僕たちの勇者様は」


 

 アリアはポツリとそう言った。

 それに対し凪沙が無言でコクリコクリと頷き、スラインとレイヴンは「あぁ」と苦笑交じりに肯定した。

 やはり皆グリムのあまりの変わりように少なからず違和感と疑問を持っていたようだ。



 「私も人の事は言えないが、メイガス嬢のあの姿は初めて見た」


 『急に生き生きしだしてたな……まさか前職が殺し屋とか暗殺家業とかそういうのじゃないだろうな』


 「もしかしたら……あるかもね?」


 「先輩、それフラグです」



 凪沙が冷静に突っ込みながら一同は前進していた、先ほどから気味が悪いほどに人が薄いタイミングを引き続け、あっさりと二階へと続く階段の手前まで来た。

 その時、人の気配を感じて一同は物陰に身を隠し、その気配が通り過ぎるのを待った。

 


 ちらりと恐らくここの使用人か何かだろう。

 凪沙が能力を使い人数を確認したところ二人ほどが近くにおり、シチュエーション的に立ち話でもしているのだろうか。



 「立ち話してるみたいですね……どうします?」


 「少し聞いていきたい気もするけどね、僕は」


 『なら少し聞き耳を立ててみよう』


 「聞こえるのかい?」


 『魔族を舐めるなよ。基本的なスペックは人族よりも遥かに上だ』



 そう言ってレイヴンは目を閉じて集中した。

 レイヴンに使用人二人の会話がやや途切れ途切れではあるが聞こえた。



 『本当なのかな……ニス……が戻られた、って』


 『結構本当っぽいよ』


 『さっきからクシャナ様が落ち着かないのってそのせいなのかな?』


 『かもね。そう言えば私この前聞いちゃったんだけど、クシャナ様なんかぶつぶつ言ってたのよ一人で』


 『どんなこと言ってたの?』


 『イグニス様が戻られたらアザミを―――――みたいな感じの。詳しくは分からないけどさ』


 


 その内の一人が『そろそろ戻らないと』と何か用を思い出して持ち場に戻ったのか二人は別れ、疑問に答えていた方の使用人がレイヴンたちのいる方へと歩き始めた。

 

 レイヴンたちのいる場所を通り過ぎようとした時、突然レイヴンが物陰から身を乗り出してあっという間にその使用人を羽交い絞めにして口に手を当てて声を出させないようにした。



 『!?』


 『私だ、レイヴンだ。落ち着いて、話を聞いてほしい』


 『……! レ、れびヴんばば………?』



 驚きのあまり声も出せずに顔が一瞬で青ざめた使用人だったがレイヴンの声を聞き顔を見てもごもごとした小さい声でレイヴンの名を呼んだ。

 レイヴンは当たりをキョロキョロと見渡し、人が来ないであろうということを予測して耳元でぼそぼそと使用人に対して何かを話し、口に手を当てて拘束した状態のままアリアたちの元へと連れてきた。



 「あまり、無茶なことはしないでもらいたい。レイヴン」


 『すまない。が、有力な情報を持っていそうだったものでな』



 呆気にとられる使用人――――――メイドはレイヴンに促されてゆっくりとその場に座った。

 それからレイヴンは先ほど話していたことを自分たちにも話してほしいと頼んだ、メイドは少々不安そうな顔をしながらも頷き、立ち話の内容を話し始めた。



 『あ、あれは、まず、()()()()()()()()()()()()()という話が流れてきてからの事から、始まります――――――――――』

アイディアが浮かばなくなってきているっ……!

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