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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第九章:世界の命運が握られているようです
180/221

夜廻のお話。

個人的には昼より夜の方が書きやすかったり

 「なぁお前さ。あの人族の勇者ポーティーの中だと誰好み?」


 「そりゃお前………アリアとかって娘だろ……常識的に考えて。あのお姉さん感たまんねぇ……」


 「確かに悪くはないが、俺はアズサって子だなぁ。一緒にいて楽しそうだ」


 「おいおいお前ら、マリア嬢忘れてんじゃねぇよ、あの子絶対将来良妻になるぞ」


 「まぁ、分からんでもないが……」


 『なーんの話?』


 「うわぁ!?」


 『別にそんな驚かなくても』



 夜、何事もなく平和な夜。

 兵士たちは響たちのようにくだらない話をしていた。



 そこへ捕らえられていたはずのフールがひょっこり顔を出した。

 ゼノに貫かれた腹部はすっかり癒えたようでフールは兵たちの集まりのところへしゃがんで話に混ざった。

 フールの性格は簡単に言えばクラスにいる誰にでも話しかけてくるタイプの女子と言った感じだろうか、男子たちを勘違いさせるような、そんな人だ。

 そして今フールがこうして勝手に歩くことを許されているのはゼノが許可したからであって決して彼女が勝手に出歩いているわけではない。

 兵士たちもそのことは分かっているので変に警戒もすることなく話の輪の中にフールを混ぜた。



 普通ならば警戒するところだろうがフール本人がもう自分が敵わないことを自覚している上に兵士たちがゼノの言葉を信用しているというのも大きい。

 第一、男が可愛い女性と話すことを怪訝に思うことなど滅多にない、兵たちは自分たちが話していたことをあらかたフールに話した。



 『……もしかしてさぁ暇なの?』


 「別にそういうことじゃねぇけどよ。折角ゆっくりする時間が出来たんだ、雑談くらい良いだろ? 戦わなきゃいけなくなったらきちんと戦うからよ。全くの私語なしに仕事するのって無理だぜ?」


 『んー……それもそっか。んで結局誰に決まったのさ?』


 「決まるわけないだろ!」


 『うん、なんとなく分かってた。そっかー………私ならやっぱハーメルン様かなぁ!! カッコいいんだよねぇあの人! あ、でもグラン様も捨てがたい……シスコンだけど』


 「そういや他にも魔族いたよな? なんつったっけ……」


 『レイヴンとリナリア様。リナリア様の方は魔族わたしたちの女神だから、どっちかっていうと尊敬に近いけど』




 フールは兵たちと談笑しながら焚き木の火に手をかざしてほぅと息を吐いた。

 魔族周辺は夜になると意外と気温が低くなり、薄着だと肌寒く感じる、汗をかいていればそれが冷えてさらに。

 それに焚き木は体を温める効果だけではなく周囲の状況を知る明かりとしての役割も果たし、さらには心を落ち着かせる効果がある。

 そのため人族や竜族問わず兵たちの心は非常に穏やかだった。




 「っと、そろそろ防壁の交代の時間だな。じゃあなフール、また話そうぜ」


 『いってらー……………』



 大変だねぇ、兵隊ってのは。

 フールは先ほどまで話していた兵たちがどこかへと去っていくのを見ながらそう呟いた、彼女の過去を知るものはあまりいない、そのため何を思ったのかは分からない。

 もしかしたら過去に兵隊関連でトラウマがあるのかもしれないし、ただ単純に大変だなぁと同情しただけなのかもしれない。




 時刻は夜の十時を回った頃、疲れが出たのか寝る者も少なくない。

 起きている者も騒がしくはせずに仲間内で静かに語らう程度、勇者たち四人も睡眠をとることを推奨しているためフールもそろそろ寝ようかと思い竜族の医療班の元へと帰ろうとした。





 だが、




 『―――――っ!?』




 フールは謎の寒気に襲われて背後を振り返った。

 しかしそこには何もいない、だが彼女は何かを感じ取ったのだ。



 フールの能力はざっと言ってしまえばグランの能力と同じ。

 ゼノと戦う際にちらっと言っていた通り、彼女は魔物を操ることが出来る。

 そのためその能力が何かを感じ取ったのかもしれないが今のところ敵襲の知らせもなく防御魔法を張り巡らせている兵たちからの報告もない。

 グリムら勇者や響たちまで何も勘付いていない、しかし、フールは確かに何かの気配を感じ取ったのだ。






 フールは魔力を目に集めて瞬間的に視覚を強化した。

 彼女の目には夜の世界が昼のように明るく、望遠鏡のように遠くを見ることが少しの時間ながらできるようになった。

 その目で彼女は何かを見つけたのか、はたまた見つけられなかったのか。






 正解からフールは確かに何かを見つけたのだ。

 その何かとは、昼間に殲滅したはずの相手であり響を重症にまで追い込み椿によって掃討された存在。

 ()()()()だ。










 『―――――北西より複合魔物が接近中!!! その数十体、距離およそ六キロ!!!!』








 フールが叫び、その声にほとんどの者が反応した。

 寝ている者は起こされ、事の次第を仲間から聞かされて慌てて準備をした。

 接近されてようやく人の目に複合魔物が映った、この暗がりであの黒い体色は気づきにくい。フールが気づかなければ不意打ちを食らってかなりの被害が出たかもしれない。



 複合魔物たちは地面へと降り立ち次々と咆哮を上げ、兵たちは武器を構えた。

 これからまたドンパチが始まり、誰も気づかぬうちに朝になるのだろう。

 皆がそう思っていた矢先、今度は別の気配がした。一般兵でも感じ取れるような強烈な気配。




 そして響たちはその気配に覚えがあった。

 かつて拳を交え、凌ぎを削った相手、その気配だ。

 紛れもない『王』の風格だった。







 『騒ガシイ………ヤハリアノ女ノ造ル物ハ好カナイ』


 






 魔族特有の歪んだ声、そしてただそこにいるだけで放たれる威圧感。

 間違いない、間違えようがない。

 魔王イグニスが戦場に立っていた。







 『ドウレ……躾ケテヤロウ雑種共』

人王大陸居残り組「出番まだー?」

作者「まだ(即答)」

居残り組「(´・ω・`)」

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