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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第九章:世界の命運が握られているようです
178/221

不意打ちのお話。

響たちの方へ戻ります

 「フレイムエヴォルヴ!!」


 「クーゲル・ティオ・ローザ」


 「ブラック……ホール!」


 「す、すげぇ………」


 「あれだけの高等魔法を詠唱破棄で……なんなんだよまじで!」


 「あれが才能か………敵わないな………あれだけは経験ではどうにもならん」



 響たちやグリムらが最前線で魔物たちを打倒しているその光景を人族や竜族の兵士たちは戦うことも忘れてただ感心していた。

 ごくごく普通の兵士業や冒険者、傭兵などをやっていてはまずまずお目にかかれないような魔法から存在すら知らないような魔法、それからありとあらゆる異能の数々。



 初めてのものを見た時の高揚感、あの体験は誰だってあるだろう。

 呆然とそして漠然と目の前の光景の目新しさや凄さはなんとも言葉に言い表せないものだ。

 それが戦時中の今に起こればその心境はまた違った意味で複雑なものとなる。



 「俺たちも負けてられん……みんな、全力で戦うぞ!!!」

 

 

 「おおおおおおおおおおおお!!!!」と士気が上がり、破竹の勢いで魔物を倒していく一般兵たち。

 使用している魔法は上級魔法や緋級魔法が上限であり戦闘能力は響たちには遠く及ばない、しかし此度は戦争である。

 下手な壊級魔法よりも連発のできる上級魔法が重宝される、数で優位に立てるというのはそれだけで僥倖な状況なのだ、今は。



 「ふむ、士気は上々か。いい傾向だ」


 「だがまだ数が多い……グリム、やはりあの大型魔物を倒すことが先決だ。誰を当てる」


 「うちの若いのを当てる。兵たちにも見せておきたい」


 「了解した。タイミングと指示はそちらに任せる、接近するまでの露払いはこちらの軍で行おう」


 「助かる」



 グリムは響と梓の二人に指示を出して複合魔物二対の討伐を命じ、それを聞いたゼノは複合魔物までのルートを確保するために竜族の兵に通る場所の魔物を素早く討伐して道を開けよと命令した。

 そのルートを通って響と梓の二人はそれぞれ複合魔物の正面へと出て響は空中へと飛び立って上空へ、梓はそのまま地面を走って正面突破を試みた。

 


 響は上空で「兵器神速ノア・ウェポン」を発動させて無数の銃火器を複合魔物を囲むようにして展開し一斉射撃をした。

 複合魔物は銃による攻撃という未知の攻撃を受けて怯んだり叫んだりしているが大したダメージにはなっていない。

 けれども出血を確認することは出来た、つまり皮膚を切ったり貫いたりするようなことは出来るということ。



 それならばと響はか弱い火力しか出ないものの複製を止め、火力重視で戦艦の主砲や大陸間弾道ミサイルその他対空砲などを地面に設置、フレシェット弾を魔法で固めて圧縮したものをいくつも作りだして超至近距離に浮遊させて機雷を作った。



 ―――――ォオオオオオオオオオオオオォォォォオオオオオオオオオオオォォォオオオオオオオオオオオオォオオオオオォォォオオオ!!!!!




 複合魔物はとめどない爆炎と超火力に絶叫したじろぎ身動きが取れずにいた、暴れれば暴れるほどに空中に浮かんだフレシェット弾機雷に接触してダーツの矢のような形状の鉄の塊がとんでもない勢いで飛び散り体に突き刺さり肉が一部削れて骨がむき出しになっていた。

 地面からは対空砲が補助してくれてるためなかなかに厄介、響は早々にとどめを刺そうと地面に降り立って魔方陣を七基展開・魔力を充填していた。




 





 一方、梓の方はというと複合魔物が防衛のために生み出した大量の魔物を文字通り指一本触れることなく適合能力「刀剣乱撫ブレイド・ア・ウェイク」で地中や体から剣やレイピアを作成して飛ばし、串刺し公よろしく貫き、梓が通った後の地面は体を剣で貫かれ切り裂かれた魔物の死骸と血肉とで真っ赤に染まっていた。



 そして梓は接敵すると素早く複合魔物を体を上り、右翼へと到達した。

 複合魔物は何か嫌な気配を感じ取ったのか翼をバサバサと大きくはためかせて梓を離れさせようとしたのだろうがその程度では飛ばない。

 梓は一本の短剣を突き刺して力を込める、するとその短剣から別の剣が木の根のように作成され、さらにその剣からまた刀が、その刀からまた別の武器が、といったようにネズミ算式に増えていき、翼の中の肉や血管はまるで生き物のように増えていく刀によってズタズタに切り裂かれ、ついに右翼の皮膚がブチブチと音を立てて千切れた。



 怯み、体勢を崩し、倒れた複合魔物の左翼を同じ要領で切り落として今度は頭部へと登り、頭頂部に両手の手の平を重ねて脳天目がけて貫通力に特化した長刀をゼロ距離で作成し顎まで貫こうと考えた。

 













 ―――――しかし、



 「……なっ!」

 「えっ……?」



 突然、何の前兆も予備動作もなく複合魔物の体が崩れ去った。

 それはまるで水風船が破裂したように、輪ゴムが切れて留めていたものが床に散らばるように突然にそして滑らかに。



 響は魔法のチャージを続けながら、梓は地面に降り立って警戒した。

 一体どういう原理なのかは分からないが複合魔物の体を構成していた物質は崩れ去ると同時に気化して黒い靄になり、それはある一点で集まった。



 次第にその靄が形を成して地面へとゆっくりと着地、この時すでに前線の緊張感はただならぬものとなっていた。




 「あれは………」




 靄は地面に着くとしばらく動かずに不定形を保つだけだった。

 が、突如として一変し、ポツリと呟いた響目がけて凄まじい速度を引っさげながら一切の躊躇も容赦もなくただただ純粋に真っすぐに迷いなく文字通り()()()に響に突進してきた。




 ただの突進、されど侮るなかれ。

 あの響が、恐らくは転生組の中で最高の戦力を誇る彼が。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()




 「―――――――――!!?」



 あまりに一瞬、あまりに突然、あまりに理解不能な出来事で響は頭は一瞬自らが攻撃を受けて吹き飛んでいるという事実に認識が追い付かなかった。

 響はそんな状態の中なんと一キロも吹き飛ばされ、散々一般兵たちにボーリングの球のようにぶつかりながらようやく止まった。



 「いっ……………てぇ……………」


 「これは…………!! すぐに、回復魔法を当てます! 医療班、至急こっちに! 急げ!!」

 

 「いえ……大丈夫、です。これくらいなら自分で何とか………」


 「何を言っているんですか、そんな()()()()!!!!」



 ただ攻撃をモロに食らっただけ、ならば自分で回復させることくらいなんてことはない。

 そう思っていた響だったが兵たちの慌てようを見るに何やら様子がおかしいことに気が付いた、それになんだか腹部の辺りが一部分だけ肌寒い気もしていた。




 恐る恐る響は自分の腹部に目をやった。

 そして驚いた。






 ――――脇腹の辺りの肉が、喰いちぎられたような跡を残して消え去っていたからだ。

 




 響は乾いた笑いを上げ、一言「まじかよ……」と呟くとそのまま意識を失った。

複合魔物をあっさり終わらすのはねぇ……?

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