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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第九章:世界の命運が握られているようです
175/221

柔と剛のお話。

戦闘パート。

 『……いいだろう。相手にとって不足はないっ!』



 アナライズはアキレアと同じ構えを取って互いの間合いを見計らった。

 アナライズはじりじりとその距離を徐々に徐々に詰めていくとアキレアは「早く来い」と言わんばかりに再び挑発した。



 それがトリガーとなり、アナライズは地を蹴り力強くアキレアへと向かった。

 掌底、それをアキレアは同じ掌底で相殺、続く二撃三撃も同じ要領で軽々と相殺していった。

 いなすのではなく真っ向から打ち滅ぼす、簡単そうに見えて力のバランスやタイミングそして正確性が求められる技、それは両者が強者であればあるほど複雑性を増し、より高度な技術となっていく。



 アナライズは拳を抜き手の形にしてアキレアの肩を穿つように放った、それだけで大抵の魔法の速度を軽々と超えているだろうし生身で受ければ間違いなく穴が開くだろう。

 しかしアキレア、今度はそれを防ごうともいなそうとも相殺しようともせずにあえて()()()

 


 『ぐぅ………っ!』



 アナライズの指先はアキレアの肩にぶつかった瞬間、紛ってはいけない方へとひしゃげ、アナライズは激痛に苦悶の表情を浮かべた。

 一方、アキレアは何もされていないような涼しい表情、無論、傷などついてはいない。

 そればかりかアナライズのひしゃげた指先は黒く焼け焦げ、感覚を失いかけていた。



 「どうした? 指先だ潰れただけだぞ?」


 『ふっ………ならば』



 アナライズは回復魔法で無理やり指先を成型・復活させ魔力を腕に纏わせて腕ごと一本の武器にした。

 端的に言えば高周波ブレードやレーザーブレードといった表現が正しいだろうその腕でアキレアに切りかかった。

 だがアキレア、尚も笑う。


 

 「中々面白い。だが攻撃が全て単調的だ。この程度の攻撃ならば……………ソルっ!!!」


 「はっ!」



 アキレアがソルの名を叫び、背後からソルが飛び出して二人の間に割って入りアナライズの軸足を払って喉の辺りを蹴って吹き飛ばした。

 土埃を上げて転がり、大木にぶつかって吐血するアナライズ。

 だがその闘志はまだ消えておらず、黒色の稲妻を両の手からほとばしらせ、それはアキレアとソルの四方を囲むようにして降り注ぎ二人は稲妻の檻に閉じ込められた。

 さらにアナライズは巨大な土の壁でさらに追いつくし、さらにさらにその上から氷結させ、木の根を張りめぐさせてその上から更に氷結させ、最後には空間魔法でドームのように蓋をして二人を閉じ込めてしまった。



 ここまで全て緋級や壊級レベルの魔法のオンパレード、流石に魔力の消耗も激しくなってきておりアナライズを汗をダラダラと流しながら荒くなった呼吸を整えていた。



 『………これで、すぐには動けまいよ』



 アナライズはフィリルと戦闘中であろうカプリオールの元へ向かうために立ちあがった。

 だが相手は獣族の女神とその相棒、そんな生易しい相手などでは断じてない。















 「―――――――()()()()()()()








 リィィィィン―――――――――――――――!







 それは風鈴が風に揺られ音を鳴らすように心地よく、繊細で、一本の糸のように何か他の音でプツリと途切れてしまいそうなか弱い音。

 しかしそれは断罪の音。

 開かずの扉をこじ開けるように強引で、それでいて扉に傷はつけないほど鮮やかに、全ての事象を、自らが断ちたいと思ったものだけを捕らえ一切の矛盾なく切り裂く音。





 ほんのわずかで微かに聞こえるその音にアナライズは自らの動きを全て止め、その全神経を使って閉じ込めていたはずの二人の方へと向き直った。




 『馬鹿………な…………』





 そこには先ほどの稲妻も土の檻も氷漬けの大樹も何もなく、あるのは槍を構えて綺麗に立っているソルの姿と、魔法の残骸の上にあぐらをかいて頬杖をついているアキレアの姿だった。




 

 「どうした? えらく驚いているじゃないか」


 『……どうやってあれから抜け出せた、いや、なぜ破壊出来た』


 「そりゃー、ソルが頑張ってくれたからに決まってるだろう?」


 

 驚愕するアナライズ、当然だという顔をするアキレア、そして黙って佇むソル。

 三者三様異なった反応を示しているも唯一同じなのはこの戦場で異彩を放っていることくらいか。

 アナライズは直感的に感じた、『このままではまずい』と。



 一旦ここは引いて合流した方が良い、そう判断したアナライズは早急にカプリオールと合流することを考えてすぐさま行動に移そうとした。

 だが直後背後に鋭い気配を感じ予定とは全く違う方向へとステップを取って回避行動をとった。



 「あら、逃げられましたか。残念です」


 

 視線の先にはカプリオールと戦闘していたはずのフィリルだった。

 アナライズはまさかと思いフィリルのそのさらに背後を見た。







 そこには無残にも血まみれで倒れているカプリオールの姿があった。






 『カプリオールっっっ!!!!!! お前………一介のメイド風情が、どうやって………!!』


 「いえ、ただ向かってきたのを倒しただけですので。ご了承くださいませ」


 

 自分たちは魔族の中でもかなり上位の地位に位置するいわばエリート。

 戦闘能力もセンスも経験も他の魔族よりは桁が違う、そう、アナライズは自負していたし何よりもアザミにそれを見出されてこうしてこの戦場にいる。

 だがその片割れが、自分の相方が、たかがメイド風情にああして地に伏して戦闘不能状態に陥ってしまっている。





 その事実はアナライズにまともな思考を許すだけの冷静さを失わせるに足る十分な出来事だった。





 「どういたしました? 呼吸が荒いですよ?」


 『――――――!!』



 自分でも気づかないほどの冷や汗を流しながらアナライズは過呼吸気味に笑った。

 否、笑うことしか出来なかった。

 いつの間にか怯えていたのだ、自身の魔法が一切聞かぬ相手に出会い、相方が知らぬ間に倒され、気が付けば追い込まれているこの状況に、アナライズは無意識のうちに怯えていたのだ。



 アナライズは頭の中が真っ白になったのかフィリルに向かって攻撃を仕掛けた。

 しかしその攻撃は素人化と思うほどの単純なもの、フィリルにとってはお遊びも同然だった。

 殺意を込めて何度も何度もフィリルに向かって拳を振るうアナライズだがその全てをフィリルは必要最低限の回避運動だけでひょいひょいと躱し、隙だらけの胴体に日傘で突いた。



 後ろへ数m滑りながらアナライズは再度攻撃を仕掛け、今度は近距離で魔法を放ちながらのものだったがフィリルは日傘を開いて全てをガードして打ち消した。

 そしてアナライズ目がけてフィリルは右足を伸ばして蹴りつけたが間一髪アナライズこれをキャッチ、すぐさま投げ飛ばしたがフィリルは空中で両足を大きく開いて一回転して地面へと静かに着地、反撃に向かい、振りぬかれたアナライズの伸びきった腕を掴み、鉄棒の逆上がりのように体を上って、クルクルとダンスをするように回り、左手を掴んで天高く後方へと軽々投げ飛ばした。




 圧勝、実に圧勝。

 アナライズは空から落ちて背中を地面に打ち付けられ、とてつもない衝撃に白目を剥いて気絶した。




 「アキレア様、フィリル様、お怪我はございませんか?」


 「見りゃ分かるだろ。つーか、一介のメイドの範疇に収まってないな色々と」


 「いえいえ、私なんてまだまだでございます。して………いかがいたしましょうか? 汚れ仕事ならば喜んでお受けいたしますが」


 「いや……ほっといて良いだろう。別に殺しが目的じゃない。そうだろハイライン?」


 「ま、そういうことで。てか俺の出番なかったな」


 「その分次の戦闘ではこき使うさ。ソルもよくやった、褒めてやる」


 「光栄です」



 アナライズとカプリオールの二人を拘束して複数人で見張りながら移動し、ハイラインたちは次の戦場へと駆け抜けた。

次回は……どうすっかなー流れで言えば妖族辺りなんだけどなー

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