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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第九章:世界の命運が握られているようです
174/221

劫火のお話。

リアルが忙しすぎるぅ

 『向こうはやる気らしいぞ』


 『それもそうだろうな。では参ろう』


 「私も久々に腕が鳴る。楽しませてもらおうとするか」


 「それではわたくし殿しんがりを務めましょう。参ります」



 メイド長フィリルは白と黒の日傘らしきものをクルクルと回しながら一歩一歩歩を進めた、カプリオールとアナライズはその様子をただ傍観していた。

 どちらとも何かを仕掛ける様子はない、しかし両者との間には不思議な緊張感が流れ、まるでこの場所だけ違う空間にいるようだった。





 「――――いきます」





 フィリルは指を一つパチンと鳴らした。

 次の瞬間、二人の眼前にまるで瞬間移動したかのようにフィリルが急に現れた。

 フィリルは日傘をブンと横に薙いで攻撃したが寸でのところで二人に躱されてしまった、だが衣服を切り裂くことは出来た。



 「おや、避けられてしまいましたか。やはり事務仕事ばかりしていては体が鈍りますね」


 『……転移か?』


 『いやそれはないだろうアナライズ。魔法を使った気配を感じなかった』


 「おーおー、相変わらずだなフィリル」


 「滅相もございませんハイライン様。まだまだ鍛錬が必要です」




 さて―――――とフィリルは体を横に向けたまま首を回して二人の方を見た。

 カプリオールとアナライズの二人は今度は油断したらやられるとその時に確信した、一瞬で現れたタネは分からないが注視していなければ危ないだろうと判断しての事だ。



 「―――――瞬歩」



 再びフィリルが二人の目の前に現れたが今度はある程度落ち着きを持って躱した、しかし次の瞬きの間にまるで張り付かれているかのような錯覚に陥るほどピッタリと目の前にフィリルが迫っていた。

 日傘をまるで刀のように扱い無慈悲な一撃を次々に繰り出すフィリア、しかも狙いをカプリオール一人に絞っているためカプリオールも何か手を打とうにも中々出来ないでいた。



 アナライズの方もカプリオールの方へと行きたいところではあるが、それは残った二人が逃さなかった。




 『これはこれは……また面倒な』


 「わりぃけど、あっちにゃいかさん。こっちがやられかねん」


 「そーゆーことだ。それに私たちも溜まっている。ストレス発散させてもらうぞアナライズとやら」


 『やれやれ………面倒なことになったものだ。ではこちらも始めようか!』



 アナライズは地面に手をつき魔力を込めた、すると地中からは針のように鋭い土の塊が次々と勢いよく生え始めた。

 それらはまるで自分で意思を持っているかのようにアキレアとハイラインの二人目がけて迫ってきた。



 が、しかし、アキレアはにぃっと口角を上げて笑うと拳を地面に思いきり叩きつけた。

 その衝撃波の影響ですでに出現していた土の針はおろかまだ出現しきっていない地中の生成途中のものも吹き飛ばした、というか木っ端みじんにした。

 これには流石のハイラインも苦笑いを禁じえずアナライズは信じられないものを見るような目で見た、だがこれしきの事が何だと言わんばかりにアナライズは再び魔法を展開し始めた。



 アナライズは水平の光の刃を数発放ち、それらは空中でピタリと止まった。

 さらに斜め、縦など様々な角度から光の刃をまるでトラップのように仕掛けた。



 「ふん、それだけか? 下らん。こんなもの防御魔法でどうとでも」


 『果たしてそうかな? この光の刃は魔力をくらい己が力を増大させていく魔法だ。防御魔法だろうとその構築魔力を吸い尽くしてすぐにでも貴様らを切り裂く』


 「それは………面白い!」



 アキレアは右手をくいくいと手招きするようにしてアナライズを挑発し、アナライズは手を横一線に薙ぐと一斉に光の刃たちが二人目がけて襲い掛かった。

 アナライズはその間にも緋級魔法や壊級魔法クラスの魔法を放ち防御を追いつかせないようにしていた。

 そして光の刃たちはアナライズの言葉通り防御魔法を削り取るように食い込み、魔力を擦ってより大きくより鋭刃へと進化していった。



 気づけばハイラインは無数の光弾の処理に追われていた、まるで弾幕シューティングゲームの一場面のようにおびただしい数の魔法が四方八方を埋め尽くしていた。

 ハイラインはその全てを防御魔法を駆使しながら弾いたり処理したりしていたがこれらの魔法の全てにも光の刃と同じ魔力を削り取る特別仕様が施されているため、段々と被弾率が上がっていた。




 アナライズは光の刃にアキレアが手間取っていると判断し、高火力の魔法のチャージを始めた。

 時間にして十秒近く、通常の戦闘では隙が多すぎて使えない上に壊級の超高難易度魔法。

 しかし当たればその威力は絶大、貫通力に優れ数キロは軽く貫き全てを焦がす。




 『壊級――――――フォトン・レイ!!!』




 放たれたそのレーザー砲はとてつもない速度でアキレア目がけて発射された。

 回避も防御も間に合わない、仮に間に合ったとしても防御魔法の構築が間に合わず中途半端なものになり簡単に破られてしまうことは目に見えているだろう。

 





 そのことをアキレア自身も分かっていた。

 しかし彼女は嗤った。

 大胆不敵に、待っていたかのように、()()()()()()()と問いかけるように。







 「――――――()()()()()()()()







 アキレアがそう呟いた直後、彼女の体は燃え盛る劫火へと包まれた。

 それと同時に彼女の周りで力を増していった光の刃の数々はあっという間に灰になり、蒸発するように消え去った。



 そしてアナライズが放った壊級魔法「フォトン・レイ」はそんな劫火の中へ吸い込まれるように一直線に向かっていった。

 




 「ふん!!!」




 劫火の中から声が聞こえ、炎が粒子の塊を真正面から正拳突きを食らわせた。

 するとレーザー砲は水風船が破裂するように「パァン!!!!」とも「バァン!!!!」とも取れるような破裂音を鳴らして爆散した。




 『………なんだ、それは』


 

 

 炎の中からは高らかに笑う声が聞こえてくる。

 次第に劫火はその勢いを安定させていき、人の形が浮かび上がった。

 紛れもなくその姿は獣族の女神アキレアそのもの、だが先ほどまでとは違う。




 「久方ぶりだ。この姿を人前にさらすのは」


 『アキレア…………女神の力か………』


 「そうだ。私は一時的に女神としての力を()()している。つまり全身全霊百パーセントの力で戦えるというわけだが………後は分かるなアナライズ」


 『………』




 アキレアは右足を後ろに引いて腰を落とし、右手を腰の部分に当てて手の平の方が上になるようにして握りこぶしを作りもう一方の手で掌底の構えを取った。




 






 「かかってこい。私が胸を貨してやろう。言っておくが、死ぬ気で来ないと死ぬぞ?」

次回はフィリルももうちょっと戦う予定

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