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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第九章:世界の命運が握られているようです
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開戦のお話。

戦じゃああああああああああああ!!

 「兵士諸君!! 朝が来た!! これよりはこのグラキエス・キャロル・フォートレスが指揮を執る!」



 人王大陸、その平原にてマリアの父であり王国騎士団団長のグラキエスが大隊の前で号令をかけていた。

 今グラキエスの眼前に整列している兵の数、約一万五千。

 無論これらは全体の兵の一部に過ぎない、人王大陸の中にはまだこれと同等の数の兵士たちが第二波に備えて待機していた。



 こんなことを言ってしまえば兵に失礼になるが、この平原に集まっている兵士たちはいわば尖兵であり前線の雰囲気を作ったり状況を報告したりすることが主な役目、戦力としては待機している第二陣の方が遥かに大きい。

 だからと言って兵のレベルが低いわけではない、どの大陸の兵も今までの水準を大きく上回るほど全員がレベルアップしていた。



 「諸君、これから起こるは戦争だ。名誉も誇りもないただの血みどろの争いだ、だからこそ、我々は生きなければならない戦わなければならない! 戦うために日々の鍛錬に身を置いてきた我らだからこそ、此度の戦争では勝鬨の狼煙を上げなければならない。それが、我々の役目であることを夢忘れるな!!!!」

 

 「然りっ!! 然りっ!!!」


 「これより我らが目指すは魔王大陸、その頂点に鎮座している女神の名をかたる暴君なり!!! 元は我らが種族を管理する女神ならば、その顔を殴って目を覚まさせるのが我らの責務である!!! 各隊に告ぐ、我が背中に続け!!!!!!!!」


 「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」



△▼△▼△▼△



 「そろそろ出発した頃だろうな」



 ゼノは()()()()にて一人風を浴びながらじっと目を瞑って呟いた。

 魔王大陸から最も近い場所に位置する最前線のこの場所でゼノは聖戦武器の牙―――――拳にはめるようになっているため巨大な鉤爪のようになっている牙を装備して佇んでいた。



 「ゼノ様。第一から第八までの全部隊出撃準備整いました。いつでも戦えます。それと人王大陸より伝令が入りまして、先ほど進軍を開始したそうです」


 「そうか……了解した。他の大陸はどうなっている?」


 「獣王大陸も進軍を開始、妖王大陸は他の隊のバックアップや支援がメインとなっているためまだ進軍を開始してはいませんが出撃準備は整っております。海王大陸も同様に」


 「……わかった、ご苦労。下がっていいぞ」


 「はっ! 失礼します!」



 兵士は駆け足で後ろへと後退していき、総勢一万の群の中へと戻っていった。

 ゼノは少しの思考の後に後ろを振り向き、静かにこう言った。



 「進軍、開始」



 対魔王大陸戦争、その最前線。

 それはたった今ゼノの指示によって静かに回線の火蓋が切り落とされ、竜族の兵たちは一歩一歩確かな足取りで進み始めた。




 道中、魔族の犯罪集団たちと偶然遭遇しその集団は目の前に広がる軍に恐れをなしてその場で固まってしまいへたり込んだ。

 いったい何が起こっているのかわからない様子の犯罪集団たちにゼノは過剰とも思えるほどの魔法を浴びせ、黙々と煙が立った。



 いわば開戦の合図、ほかの種族たちにすでに戦が始まり交戦を開始したことを知らせる合図の役割を犯罪集団の命で行った。

 その直後、音につられて無数の魔物たちがゼノたちの前へと姿を現しさらに魔族の人間がフル武装で一人現れた。




 『ふーん……アザミ様の言うとおりになったかぁ……』


 「貴様は……?」


 『グランのぉ……後釜? みたいな? 能力的に?』


 「……把握した。ならお前は敵だな」




 ゼノは聖戦武器を構えて叫んだ。




 「戦闘、開始!」


 『あはっ、そーこなくっちゃ!!!』


 「総員! ゼノ様に続けぇぇぇぇぇ!!!!」


 「ごあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」




 正真正銘の戦が今始まった。



△▼△▼△▼△



 『アザミ様、フールが戦闘を開始した様子です。相手はあの、ゼノ・シュタインとその兵たちです』


 「ふーん……そう。下がって良いわ」


 『御意』



 魔王城、その玉座に足を組んでアザミは手下からの報告を聞いていた。

 だが彼女の顔に一切の不安なし、時折欠伸すらするほどの余裕を見せていた。

 彼女にとってはこの戦争すら余興にしか過ぎないのだろうか、手下たちですら彼女の本意を理解している者は誰一人としていなかった。



 「思ったよりも遅かったですね。それだけ向こうも準備に手間取ったということでしょうか……」


 『失礼します、アザミ様』


 「クシャナ警備隊長。どうしました?」


 『全軍迎撃準備整いました。後は仰せのままに』


 「ではもうしばらく待機していなさい。しばらくは親衛隊の皆さんに様子見と弱体化をしてもらいます」



 「宜しいですね?」とアザミは側にいる三名の親衛隊メンバーに声をかけ、親衛隊のメンバーは無言で頷きその内の二人がアザミの側を離れてどこかへと向かった。

 クシャナも一度部屋を後にして外へと出た、廊下の曲がり角で誰にも見られていない状況で彼女は廊下の壁にもたれかかってため息を吐いた。



 『……本当に、始まったのか。あいつらの言う通りにした方が…………だが……………』



 クシャナは葛藤していた、あの日あの時あの場所で響と賢介の二人に言われたことが事実になった今、自分たちはどうすればいいのか。

 


 『イグニス様は戻ってくる……だがもし嘘だったら? そんなこと考えてもキリないか………』



 クシャナはまだあの日の事を誰にも伝えてはおらずそっと自分の胸の中に押しとどめたままだった。

 そのままクシャナは壁に背中を当てたままズルズルと下がって行き、座り込んでしまった。

 誰にも見られていなかったのが幸いか、クシャナは一度気分を変えるためその場を後にした。




 △▼△▼△▼△



 「グリム様っ!」


 「どうした?」


 「竜族の軍が魔王軍の幹部と思われる人物と交戦を開始、多数の魔物もいるそうです」


 「分かった。何かあれば随時報告しろ、些細なことでもだ」


 「了解しました!」


 「それとグラキエスに前進せよと伝えろ、なるべく急げともな。以上だ」


 「了解しました、失礼します!!」




 グリムは伝令兵が去った後、アロンダイトと聖戦武器を両腰に携えて鎧がきちんと装備されているか確認した。

 




 「総員、準備は良いな?」



 グリムは背を向けたまま後ろにいる響たちへと声をかけ、響たちはそれぞれ返事をした。

 皆、覚悟は決まっているようだ。

 グリムは振り返って全員の顔を見ると満足そうに一つ頷いた。



 「では出陣と行こう。まずは最前線、ゼノたちと共に魔物どもを蹴散らそうじゃないか」



 そうしてグリムたちは一気に竜王大陸周辺まで転移した。

 戦争が、始まった。

次回戦闘パート(予定)

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