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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第一章:魔法学校に入学するようです
17/221

再集合のお話。

ブックマークがあることがこの小説を読んでくれてる証明であり活力源。

そんなことを思う今日この頃。

 翌朝月曜日、週明けの憂鬱と相まって一層学校へ行く足取りは重くなっていた。

 いつもなら楽しく話をしながら登校する響、梓、影山の三人だったが今日ばかりはそういう訳にはいかなかった、というよりいけなかった。途中で合流したマリアとセリアの二人は三人を見るなり何かを察したようで、軽く挨拶を交わしてすぐに無言になる。

 その原因はと言うと昨日の任務中、完全なイレギュラーだった謎の魔物の大群を一斉に爆破した挙句、あまつさえ王国騎士団の少尉ら、ゴールド級の冒険者二人が駆けつけるという事態にまで発展した。



 重い空気のまま学校に着く。幸いにも事件のことはあまり公にはされておらず詳しい真実を知っているのは今のところ事件の中心にいた三人と、一緒に任務を受けたマリアとセリアそして今回の任務を提案したアリア、それと王国騎士団少尉とゴールド級冒険者二人の計九人だけだ。

 もちろん一般の生徒たちクラスメイトが知っているはずもなく追及されるわけないのだが、そう思っていてもなんとなく億劫になってしまう。もしかしたらフルーエン先生辺りなら知っていそうな気がして。



 「あ、おはよう響……ってどうしたの? なんか元気ないっぽいけど……」



 玄関でばったり会い心配してくれたのは滝本凪沙。現在はナギサ・ブランクバイトとなっている元の世界からの友人の一人である。



 「凪沙か、まあ……色々あってな」


 「そ、そう。何かあったら相談に乗るから遠慮なく言ってよ」



 じゃあね、と手を振って教室へと向かっていく凪沙。自分たちも上靴に履き替え教室に向かう。席に着くや否や「はああー」っと深いため息をつく響と影山を女子三人組が励ます。

 そうこうしているとチャイムがなりフルーエン先生が教室へと入って来ていつも通り朝のホームルームを始める。今日の連絡事項は六時間目に学年全体で作業があるということくらいで、十分の休み時間のあとすぐ一時間目の授業に入る。今日の一時間目は魔法学の授業だ。





 二時間目と三時間目の戦闘技術の授業、四時間目の社会の授業を終えて昼休みの時間になってすぐ、購買で昼飯を買おうとして廊下に出ると校内放送が流れる。



 『えー五回生のヒビキ・アルバレスト君、アズサ・ゼッケンヴァイスさん、セイヤ・フォルテイン君、マリア・フォートレスさん、セリア・サイトさん。お弁当を持って生徒会室に来てください」



 何か言われるのだろうか、響は咄嗟にそう思いすぐさま億劫になる。とりあえず購買で昼食を買って生徒会室に向かい、ドアをノックして入る。



 「失礼します」

 「おお、待っていたよヒビキ君! 適当に座ってくれ、直にみんなも来るだろうしね」



 コンコン……



 「失礼しまーす」

 「来たねアズサ嬢、座りなよ」

 「先輩、そのアズサ嬢って言うのやめて下さいよ。堅苦しいですし」

 「その方がいいならそうするよ」



 続々と呼ばれた面子が生徒会室に集まり、それぞれちゃんと昼食を持参してテーブルに座っていく。

 会長曰く呼んだ理由は「一緒にお昼ご飯を食べたかったから」だそうで、いつも通りの砕けた口調で話しながら昼食を食べ、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴るまでわいわいと楽し気に話していたため、昨日のことを自然と忘れられることが出来た。

 後々になって気が付いたが、もしかしたらこれはアリアなりの気遣いだったのではないかと思うと、途端にアリアが可愛く思えてきてしまった。普段はどこかつかみどころのなくおどけた感じなのに、こういうさりげない気遣いも出来るなんて、やばい惚れそう。



 少しいつもの調子が出てきたところで五時間目の授業はいわゆる国語で、昼飯を食べたばかりで睡魔との戦いになりつつもなんとかやり遂げる。それと言うのも授業中に影山ががっつり寝てしまいフルーエン先生にお灸を据えられた光景を見て一気に眠気が覚めたからである。



 六時間目、五回生の生徒全員が体育館に集められた。入学当初は訓練場が体育館と同じ役割を果たしているものだと思っていたがどうやら違ったらしい。この謎は一回生の学校説明の時に解けたため早々に自分の勘違いに気が付けた。



 学年全員が集まると若干ざわつくのは何処の世界でも共通のことらしく、各担任の先生たちが注意を促すがDクラスの奴らだけは一向に落ち着く気配がなく、ギャーギャーとうるさかった。

 そこへフルーエン先生がふらりと行って何か注意したのかと思うと、今までの騒ぎが嘘のようにピタリと収まった。一体あの人は何をしたんだという思考が響の頭を駆け巡るが、答えがでないという思考にシフトチェンジしたので考えを放棄することにした。

 そのままフルーエン先生は壇上へと上がりこの時間についての説明を始めた。



 先生の話では七月あたりの中頃に魔導学院との合同戦闘授業があるとのことで、その説明と下準備のために集まってもらったという。ちなみに現在は5月頃、つまり2か月後に向けて今から準備するということになる。いささか早い気もするがよくよく考えれば学校祭の係決めとかも結構早い時期からやっていたからそう珍しいことではないのかもしれない。



 ただしその合同授業は班単位で行われるので、今日の作業というのはその班決めをするためにこうして集まったとのことだ。説明ではクラスは関係なく好きな人と自由に組んでよく各班十人までと言われたため、どうしようかと悩んでいたところ影山と梓が一緒に組もうと提案してきたので乗っかることにした。

 マリアとセリアも合流して現在五人班が出来上がった。あとの五人をどう確保しようかと考えていると影山が何か思いついたようで嬉々として語り始める。



 「なあ、折角ならあいつら誘わねえか?」

 「あいつら?」

 「転生組」

 「いいなそれ、面白そうだ」



 響たちを抜いた転生組の残りのメンバーは五人、班の残りのメンバーも五人でちょうどピッタリ合う。早速影山の案の通りに響たちは他の転生組を誘うためBクラスの方へ向かうと、すでに賢介や智香辺りが勧誘されていたため急いで割って入る。



 「賢介、よかったら俺らと組まないか?」

 「ちょうどいい、中々離れられなくて困っててな。助かった」



 その会話を聞いて周りにいた生徒たちが散らばっていき、無事賢介を確保することに成功したため残りの人員は四人。次いで同じく誘われていた佐伯のところへ行く。ここからは響は凪沙を、梓は琴葉を、影山は智香を、賢介は藤島を勧誘する四手に分かれて一人ずつ誘う作戦にした。



 まずは響のターン、何故か女子を中心に賑わっている凪沙の元へ。



 「凪沙、お前もう決まっちゃった?」

 「あ、響。ううんまだ決まってないよ」

 「よかったら俺らのとこ入らないか?梓たちもいるんだけど」

 「入る、入るよ。楽しそうだし」



 周りの女子たちが何やらブツブツ言って去っていきノルマを完了する。心なしか誘われた時の凪沙の目が助けを求めていたような気がしたが、きっと響の思い過ごしだろう。



 次に梓のターン、一人ウロウロして挙動不審になっている琴葉に声をかける。



 「琴葉ちゃん、よかったら私たちのとこ来ない? 響とか影や……聖也君もいるんだけどどうかな」

 「私が入っていいんですか?」

 「もっちろん!」

 「じゃあその、お願いします」



 いきなり声をかけられてびっくりしていたようだが、こちらも快く承諾してくれたことに胸をなで下ろす梓。なで下ろすほど胸が育ってないのは乙女の秘密。



 さらに影山のターン、これまた人気者の智香のところへと足を運ぶ。



 「佐伯……じゃなかった智香、お前もう指名入っちゃったか?」

 「あ、聖也君! ううんまだ決まってないよ」

 「俺らのとこ響とか梓とかあと賢介とかいるんだけどよかったら入らないか?」

 「いいねそれ! 入る入る!」



 周りの人たちに「ごめんね」と言いながらその場を後にする影山と智香の二人。かつてのクラス中心人物組が響たちのところへ戻る。



 最後に賢介のターン、複数の女子ですでにグループになっているところへ乗り込んでいく。



 「絵美里、お前もうそこで決まったのか」

 「そのつもりだけど、あ、もしかして賢介も入りたい?」

 「いや逆だ。こっちのグループに誘おうかと思ったんだけど、そうか、残念だ」

 「ちょ、ちょっと待って! メンバー誰いるの」

 「転生組の連中だ」

 「え、何それチョー面白そうなんだけど。ごめんやっぱ私あっち入るわ」



 と言ってあっさりとグループを乗り換えた藤島に動揺を隠し切れない他の女子に同情しつつ賢介もノルマをクリアした。

 かくして転生組八人とネメシスの貴族二人を加えた十人の班が無事に完成した。久しぶりに懐かしい顔ぶれがそろったことでワクワクが止まらなかったが本番はまだ二カ月ほど先なので気持ちをぐっと抑える響。班が完成して雑談タイムに入ったところで、誰でもいいので先生の一人に報告しに行くようにと全体に指示が下され、智香が報告しに行ってくれた。周りでも続々と班が決まってきたようでグループが点々と出来てきた。



 その後順調に班が決まっていき授業が終わる前に全員分、百人いて各班十人なのでちょうど十班出来上がった。しばらくはこの班のメンバーで毎日六時間目の授業で戦闘訓練を行うとのことなので、みんなの能力をしっかり把握するチャンスだと響は思った。表情を見る限り凪沙と賢介も同じことを思っているだろう。



 こうして楠木高校からやって来た異世界転生組八人が今度は顔合わせのようなではなく、戦闘面での再集結を果たした。そして今後梓と影山以外の五人がどんな風に能力を使っていくのかが楽しみで仕方がない響であった。

いよいよ他の転生組の能力が日の目を浴びる!

どんな風に書こうか楽しみです。

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