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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第八章:再び歩み始めるようです
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思い出話のお話。

回想的な

 五日後の明朝、人王大陸の王城。

 その一室で久しぶりに転生者()()は集まっていた。

 日本から転生してきた八人、響たちにとっては切っても切れない腐れ縁で結ばれた八人でだ。



 「なんかこうして集まるのも久しぶりだね」と智香が嬉しそうに言った。

 それに凪沙が反応して「確かにそうだね、響たち忙しかったし」と言い、絵美里が「それにさ、三人ばっかり美味しいとこもってき過ぎ。ちょっとは分けてよ」と不満を言ったがその表情はどこか嬉しそうで誇らしげだった。



 思えばこいつも中々に変わったなぁと響は感じた、転生する前はあんなに自分勝手だったのに今となっては一人前の大人の女性として成長していたのだ。

 今も賢介との仲は衰えておらずもうすでに結婚まで見据えているらしい、そんなことを響が言うものだからすかさず琴葉が突っ込んだ。



 「二人は、いつ結婚するの?」

 「え、私たち?」

 「それについては俺も気になっていたんだ。俺と絵美里もだいぶ付き合いは長いがお前らの方が一緒にいる歴は長いんだろ?」

 「そりゃそうだけど……そうだな、そういうのもきちんと考えないといけないな」



 響は真面目に考え始め、周囲から別に今じゃなくていいだろという意見が飛んできて途端に恥ずかしくなってきた。

 


 「いいよなお前らは! 俺なんてまだ独り身だぞこんちくしょうめ!」

 「影山君、荒れてる」

 「分かるよその気持ち……僕も独り身だったし……」

 「そうか分かってくれるか……ってちょっとまて、凪沙、お前今過去形じゃなかったか……?」

 「あ、うん、実は冒険者の人と付き合ってて……」

 「いつからだ!?」

 「えっと、一年くらい前」

 「ちくしょおおおおおおおおおおおお!!!」

 「影山君、落ち着いて……」



 影山は荒れた、唯一の同類だろうと信じていた凪沙までもが恋愛道に走り出してしまったことに対して絶望の色が濃くなっていってしまったのだ。

 それを智香と琴葉の二人が慰めていたがその優しさが逆に心に痛い、ちなみに二人は今フリーらしい。



 「でもさ、私たちもなんだかんだで付き合い長いよね、みんな」

 「そうだねー、まさかこんなことになるとは思ってなかったし」

 「思ったんだけど琴葉ちゃん明るくなったよね!」

 「そ、そうかな? あまり変わってないと思うんだけど」

 「変わったよ、口数も増えたし」

 「ありがと、梓ちゃん」



 そこへミスズがやって来て転生者がもう一人増えた。

 ミスズも思い出話に花を咲かせ、話題は初めてミスズと会った時の話になった。



 「あの時は正直やり過ぎたと思ってます、はい………」とミスズは顔を赤らめて半ば黒歴史を語るかのように言い、智香が「まだ水無月君のこと好きなの?」と聞くとミスズは「まぁね」と照れ臭そうに言った。

 その瞬間全員の視線が響へと注がれ、右隣の梓は響を肘でつつき、左隣の影山は貫手で明らかなダメージを与えた。



 「モテモテだな水無月」

 「おうこら賢介その顔やめろ、煽るな。つーか痛い! 聖也……影山ぁ!」

 「わりぃわりぃ、つい私怨が」



 なんて具合にほのぼのとして和気藹々としてごくごくありふれた友人たちの会話のように聞こえるが今は戦争前なのだ。

 国内の兵士たち、それどころか各国の戦士たちは皆緊張感に包まれ、いつ死ぬかもどうなるかもわからない不安感にも苛まれているというのに、この一室だけこの緊張感のなさは帰って異常でもあった。

 本人たちもなんとなくそういうことは理解していたがやめようとは思わなかった、こうすることで自分たちでも気づけていないような緊張感を無意識にほぐしていたからだ。



 そんな時、コンコンとドアをノックする音が聞こえ、グリムとアリアとフランが入ってきた。

 それに遅れてハーメルンとリナリアそしてグランも。



 『全く……戦前だというのに……こんなのに負けたのだな私たちは。ねぇハーメルン』


 『同意見だ。だがまぁ、こういうのもいいと思わないか?』


 「やれやれ、とんでもない後輩と彼氏を持った物だと今になって思うよ僕は」


 「でもいいんじゃない? 変に気分が沈んでいるよりはよっぽど」


 「あぁ、そうだな。勇者としても鼻が高いよ、私の仲間は死に怯えるような者たちで無いとな」



 結局いつもの顔ぶれになり、グリムも隊の伝令の息抜きにもう少しいるようだ。

 それからやや談笑した後に何かが足りないなと響たちは思った、しかしその原因が思い出せなかった。

 うーんうーんと悩んでいるともう三人、部屋の中へと入ってきた。



 「おっすお前ら!! 久しぶり!!」

 

 「久しぶりね、みんな。元気にしてた?」


 「あはは、どうもお久しぶりです」


 「「「「「「あぁー…………!」」」」」」



 響たち八人とミスズとグランとハーメルンは声を揃えてそう言い、三人はとてつもなく困惑していた。

 レイ、ヴィラ、そしてキュリアの三人が入ってきたことで一気にこれだと雰囲気が固まり、その後影山がそう言えばマリアの付き人であるセリアがいないなと言ったところでタイミングよくセリアも入室してきた。



 「何やら楽しそうな声が聞こえましたので来てみれば、懐かしい顔ぶれが揃ってますね」


 

 セリアは懐かしげな表情で、それでいて安心しきってる表情でみんなの輪の中へと入っていった。

 これで全員が揃い、本当にただただお喋りをしていた。

 何度も言うようであるが今は開戦前であと数時間後には戦争が始まってしまうのだ。



 この戦は宣戦布告などない一方的な虐殺になる可能性の高い戦いになるだろう。

 あの時以降イグニスは姿を見せない、だが彼が戻れば今の独裁体制よりは幾分かましになるだろうと、他種族である響たちが勝手に考えていた。



 恐らく各国の王たちも迷ったはずだ、先に偵察隊を送らせるべきではないのかと。

 そしてその懸念がこの開戦数時間前になって急に怖くなってきたのだろう、グリムが一度呼び出されて戻ってくると響たち全員に通達事項が発表された。



 その通達事項というものは戦争の二日間の実行延期とそれと同日数の魔王大陸への偵察・内情視察期間を設けて派遣させることを決定させた。

 これに対して恐らく各国からブーイングが飛ぶことは容易に想像できた、何故戦争をすると決める時に可決しなかったのか、それが一番多くなるだろう。

 



 全員は立ち上がって準備をし、清々しい表情で行こうとした矢先、ドアの向こうから何やら走ってくるような足音が聞こえてきた。

 どこか焦っているようなその足音は段々とこちらへと近づいてきてついには目の前までやって来たと思ったら今度はドアが勢いよく開いた。




 「わ、私のこと! お忘れではないかしらぁぁ!?」


 


 ぜーぜーと息を切らして部屋のドアを開けたのはマリアだった。

 そしてマリアを見た瞬間に全員が口を揃えて言った、勇者のグリムも女神のリナリアも響たちと同じ言葉を口にした。



 




 あぁ、忘れてた、と。







 「何を忘れていたのかなんとなく想像は付きますわ………怒って良いですわよねぇ………これは私怒っても大丈夫な奴ですわよねぇぇぇ!!!?」




 


 怒号は城中に響き、その後使用人たちと数人の兵士や冒険者たちがやって来たのは言うまでもない。

流石にこのまま戦争という流れになると色々とまずいので少し伸ばします。

恐らく開戦してから新章に切り替わると思います。

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