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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第八章:再び歩み始めるようです
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捕縛のお話。

少し間空いてしまいました。

 響はその時、至って冷静だった。

 椿が自分の中に戻ってきたことによって心に余裕が出来たし、なにより相手は確認できているだけだが一人だけ、落ち着いて対処出来れば恐れることはないだろう。



 響は防御魔法を常に発動させながら迫る褐色の魔族に注意を凝らした。

 それに応じて梓たちも出撃して魔族との距離を詰めた。



 『どけぇえええええええええええ!!』


 

 褐色の魔族はやたらめったらに魔法を放ちながら突進してくるがそんじゃそこらの魔法は響たちには効かない。

 最初に魔族の奴と接触したのは梓だった。

 梓は魔力を纏わせて強度を増した刀をまるで一振り一振りが自立しているように自分で扱ったり地中や体から飛ばしたりとしていた。



 仮に、もしも梓の攻撃がすり抜けて響へと標的が移ったとしても圧倒的な物量の前には為す術がないだろう、それなのに褐色の魔族は一切恐れていなかった。

 梓の刀が掠っても常に口角をこれでもかと上げて攻撃の手を緩めることはなかった。

 それはまるで、攻撃どころか死ぬことすらをも恐れていないようだった。



 「梓、大丈夫か?」

 

 「大丈夫だから! 響は魔物の方を!」


 「任せろ」



 響は冷静に今の梓の状況を見て本人に大丈夫かどうかを問い、心配いらないことが分かると魔物の軍団に狙いを定めた。

 先ほどと同じく空中に浮かべた銃火器を一斉射、魔物はあっという間にミンチになっていった。




 

 だが驚くべきは次の瞬間。

 数秒前まで魔物だった血濡れの肉塊がひとりでにもぞもぞと蠢き、近くに合った肉塊と融合・合体して全く別の生物へと成った。



 「……なんだ、こいつ」


 『驚いたかぁ!!? これこそが私がアザミ様から承った力っ!!! 私の力は、生物に一定時間の不死性を付与させる能力だ』


 「不死性……か」



 梓の方を響はちらりと見た、アリアが戦闘に加わっていた。

 響の方にはフランが隣に立っていた。

 生物に不死性を付与する――――恐らくそれは他の生物だけではなく自分自身にも付与できるといった言い方だと響は推測し、すぐさまスキル「意思疎通」で梓や別動隊として離れている影山に伝えた。



 それに帰ってきた返答は影山が驚き、そして梓は同意だった。

 一番近くで戦っていた梓曰くいくら切っても切っても手ごたえがないらしい、厳密には肉や骨を切った感覚はあるのだがそれによって相手を殺せるような勝利感が得られないとのこと。

 影山はグリムたちにそのことを伝えると言っていたため対処法や伝達が主要人に行き渡るのは時間の問題だろう。



 しかし問題は「一定時間」というワードがどれくらいの効力を持っているのかどうかだ。

 一定時間と言いながら数時間、数日、もしかすると数週間にも昇るのかもしれない。

 いわばターン制バトルのようなものだ。



 



 「フランさん、拘束魔法の用意をしておいてください」


 「分かった! 合図はそっちに任せるから、いつでも言って」



 フランに拘束魔法の準備を促し、さらに梓にも同様のことを指示してそれをアリアに伝えるように「意思疎通」で伝えた。



 「(梓、よく聞いてくれ。一定時間の不死性なら時間が経てば消えるはずだ、その時間まであいつを拘束する。アリア先輩にもそう伝えてくれ)」


 「(おっけー! 攻撃力は高くないしね、いけるよ!)」



 梓は褐色の魔族を弾き飛ばして強引に距離を作ってその間にアリアに響のアイディアを伝え、アリアもそれを了承した。

 褐色の魔族は軽い身のこなしですぐさま体勢を立て直し、再び響たちへと襲い掛かろうとしたが妙に落ち着いている響たちや先ほどまで対峙していた梓とアリアを見て警戒し始めた。

 


 褐色の魔族は流石に分が悪いと思ったのか徐々に後ろに後退していった、不死性があるにもかかわらずだ。

 合成魔物もその動きに連動するように徐々に後ろに下がっていった。



 そこで響たちは迷った、追うべきか否かを迷った。

 ここで深追いしてしまえばもしかしたら罠にはまるかもしれない、だが現状はこちらの方が有利で不死性を一定時間の効果が切れるまで無効化させられるだけの手段を持ち合わせている、負ける要素はほとんどないだろう。

 だがここで逃がしてしまえばアザミのことに何か聞きだせるチャンスを失ってしまうかも知れない、現在の魔王大陸についての情報を得られないかもしれない、深追いするデメリットと情報を聞きだせるメリットを天秤にかけた結果、響は転移魔法を使って褐色の魔族の背後に回り込んでいた。



 『しまっ………!』


 「フランさん! そちらは任せました! 梓、アリア先輩! フランさんの手助けを!」



 響はそう指示しながら拘束魔法で褐色の魔族を拘束して「ニュートンの林檎」でガッチガチに固めた、梓たちも素早い行動で合成魔物を拘束・無力化を果たしていた。

 そこへ今まで傍観していたリナリアが褐色の魔族の方へと歩み寄った。

 そしてリナリアの姿を見た褐色の魔族は目を見開いて硬直し、響が拘束を少し緩めるとそのまま地に跪いた。



 『…………あな、たは……もしかして』


 「覚えていたか………懐かしいな、レイヴン」


 「リナリア、知り合いなのか?」


 「………今、そんなことはいい。そいつを連れて行くんだろ? なら早いとこ済ませよう」


 「あ、あぁ……」


 

 リナリアは褐色の魔族を「レイヴン」と呼び、何やら物悲し気な表情を浮かべ響とレイヴンに背を向けた。

 一方、レイヴンと呼ばれた褐色の魔族はがっくりとうなだれ、小さな声で独り言を呟いていた。

 レイヴンが完全に戦意を喪失したのがきっかけになったのか、フランたちに拘束されていた合成魔物は苦しそうな呻き声を上げてボロボロと崩れ去って、今度は肉塊ではなく塵になって今度は復活しなかった。



△▼△▼△▼△



 「おう、帰ったか! って、誰だそれ?」


 「……首謀者……かな? リナリアと知り合いっぽいんだがどうにもな」


 「……? なんかあったのか? まぁいいや、グリムさんたちには話し通してるからこのまま良いってよ」


 


 影山は響たちを出迎え、レイヴンがいて人数が増えていることに驚いていた。

 響たちはレイヴンを連れたまま竜王城の中へと入っていき、その中の一室、「尋問室」と名の作られた地下牢へとレイヴンを閉じ込めた。

 完全和式の竜王城にまさかこんな地下があるとはと響たちは驚いていたが、それよりも気になるのはリナリアの事だ。



 「少しこいつと二人で話がしたい」



 そう言ってリナリアは他のメンバーの退出を望み、響たちや竜王城の地下牢にいた戦士たちもぞろぞろと去っていった。

 無論リナリアは女神であるからもし実力行使をされようものなら簡単に返り討ちに出来るだろう、自分がわざと負けない限りは。












 「出てったか………よぉ、いつまでうなだれてんだよレイヴン」


 『リナリア……本当に、本当にリナリアだよな?』


 「私以外にいるはずないだろ」


 『その口調……変わらない』


 「お前は変わったな、変わり果てたよ。私も人の子とは言えんが………な」


















 キィ…………バタン!



 「なんや、随分と早かったんやなぁ。もう少し駄弁ってるかと思ったわ」


 「ハヅキ・タカオミか。盗み聞きでもしていたのか? わざわざ地下牢の入り口まで城主様自らが出向いて」


 「いやいや、ただの気紛れや、気にせんときぃ。んじゃ、あては部屋に戻っとるさかい、ヒビキたちならいつもの部屋やからな」


 「………あぁ」



 リナリアは地下牢の入り口でハヅキと少しだけ話し、ハヅキは一人先に自室へと戻っていった。

 リナリアは地下牢の入り口の壁にもたれかかりながら一つため息を吐いた。






 「―――――――――――――――!!!!」






 その時リナリアが言った嘆きや慟哭にも近い言葉を聞いていたものはリナリア自身と、こっそり曲がり角に身を潜めていたハヅキ以外、誰も聞いていなかった。

若干中途半端になった感じがしましたがこれ以上続けると余計に中途半端になりそうだったのでこの辺で。

次回はレイヴンとリナリアの事についての予定。

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